2019年のアートシーンをプレイバック!(1月〜6月編)

様々なトピックスがあった2019年のアートシーン。美術手帖で取り上げたニュースのなかから、とくに振り返っておきたい出来事を2回に分けてお届けする。今回は1月〜6月編。

フィンセント・ヴァン・ゴッホ ひまわり 1888 キャンバスに油彩 92.1x73cm (C) The National Gallery, London

1月

「国立工芸館」移転後の完成イメージ

・東京国立近代美術館の分館として1977年にオープンし、2016年8月に石川県金沢市への移転が発表された東京国立近代美術館工芸館。同館が通称を「国立工芸館」とし、2020年の東京オリンピック・パラリンピック前のオープンを目指すことが明らかになった。
>>東京国立近代美術館工芸館が金沢へ移転。通称は「国立工芸館」に

・13~20世紀の名品約2300点を所蔵するロンドン・ナショナル・ギャラリー。その世界初となるイギリス国外での展覧会「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が、国立西洋美術館(2020年3月3日~6月14日)と国立国際美術館(7月7日~10月18日)で開催されることが決定した。本展には、ゴッホ《ひまわり》(1888)をはじめ、すべて初来日となる61作品が集結する。
>>世界初!「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が2020年に国立西洋美術館と国立国際美術館で開催決定。ゴッホの《ひまわり》も初来日
>>世界初の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が来年開催へ。フェルメール、ゴッホら61作品が初来日

2月

1981年のメアリー・ブーン(メアリー・ブーンのInstagramより)

・かつてニューヨークの「アートシーンの女王」と称されたギャラリストのメアリー・ブーンが、虚偽の納税申告書を提出し約3億円以上を脱税したため、2年6ヶ月の懲役刑を宣告された。ブーンは1951年生まれ。77年に「メアリー・ブーン・ギャラリー」を設立し、ジェフ・クーンズ、ジャン=ミシェル・バスキア、アイ・ウェイウェイといったアーティストを紹介してきた。
>>「アートシーンの女王」メアリー・ブーンに実刑判決。約3億円以上の脱税で2年半の懲役へ

・京都造形芸術大学東京外苑キャンパスの「藝術学舎」で、2018年4月から6月にかけて行われた公開講座「人はなぜヌードを描くのか、見たいのか。」を受講した女性が、アーティスト・会田誠や写真家・鷹野隆大らの講義で精神的苦痛を受けたとして、同大学の運営母体である学校法人瓜生山学園を提訴した。
>>公開講座で精神的苦痛。女性受講生が京都造形芸術大学を提訴
 

3月

クリスティーズにて約93億円で落札されたクロード・モネ《睡蓮》(1914-17) © CHRISTIE'S IMAGES LTD. 2019

・オークション大手のクリスティーズが、2018年度の売上高が70億ドル(約7613億円)となったことを発表。これは同社創業以来の最高額であり、プライベート・コレクションとしての過去最高額を達成した「ペギー&デイヴィッド・ロックフェラー・コレクション」セールなどが数字を牽引した。
>>クリスティーズ、2018年度の総売上は約7613億円に。創業以来の最高額を記録

・アーティストの佐藤雅晴が3月9日に逝去。享年45。佐藤は日常風景の一部をアニメーション化し、現実と非現実が交錯するような映像作品で高い評価を得た。2018年9月に余命宣告を受けてからは癌との闘病生活のなかで制作を続け、森美術館「六本木クロッシング2019展」などに参加するなかでの逝去となった。
>>佐藤雅晴が45歳で逝去。現実と非現実を交錯させた映像作品を残す

・ジャーナリスト・津田大介が芸術監督を務め、「情の時代」をテーマとする「あいちトリエンナーレ2019」で、参加作家の男女比が半々になることが発表され、話題を呼んだ。
>>あいちトリエンナーレ2019、参加アーティストの男女比は半々に。今津景、エキソニモ、サカナクションなど新たなラインアップを発表
>>「ジェンダー平等は美術界の国際的潮流になる」。津田大介が語るあいちトリエンナーレ2019のジェンダー平等

・大規模改修工事のための休館を経て、東京・清澄白河の東京都現代美術館がリニューアル・オープン。美術図書室の什器デザインやレイアウト、カフェやレストランも一新された。記念展は「百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-」「MOTコレクション ただいま/はじめまして」。
>>東京都現代美術館がついにリニューアルオープン。3年間の休館を経て2つの展覧会が開幕
 

4月

鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムの外観

・2020年3月21日にリニューアル・オープンを控える京都市京セラ美術館(京都市美術館)。その新館長に、西澤徹夫設計共同体とともに同館の基本設計を手がけた建築家・青木淳が就任したことが発表された。
>>新館長は建築家の青木淳。京都市京セラ美術館(京都市美術館)は2020年3月21日にリニューアル・オープン

・フランス・パリの世界文化遺産「ノートルダム大聖堂」で4月15日に起こった火災により、尖塔の焼失など大規模な被害が発生。この火災を受け、ラグジュアリー・グループの「ケリング」「LVMH」が再建のためにそれぞれ1億ユーロ、2億ユーロを拠出すると発表した。
>>世界遺産「ノートルダム大聖堂」で火災。ルーヴル美術館らが結束を表明

・旧神奈川県立近代美術館 鎌倉を改修・再利用した文化施設「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」のグランドオープンに先立ち、4月20日から「新しい時代のはじまり」展でその建築が公開された。旧館は坂倉準三の設計によるもので、神奈川県の重要文化財にも指定。今回の改修では歴史的建築の意匠を保ったまま、ユニバーサル対応や耐震補強が行われた。
>>坂倉準三の名建築、ふたたび。「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」の建築が公開

・1月に「ゆりかもめ」日の出駅付近の防潮堤で発見された、バンクシーが描いた可能性の高いネズミの絵が、4月25日から「バンクシー作品らしきネズミの絵」として東京都庁第一本庁舎2階のロビーで一般公開された。
>>「バンクシー作品らしきネズミの絵」、東京都庁で一般公開がスタート
 

5月

ジェフ・クーンズ Rabbit 1986 © Christie’s Images Limited 2019

・「もの派」を代表するアーティスト・関根伸夫が、ロサンゼルス郊外の病院で5月13日に逝去した。享年76。代表作に《位相ー大地》(1968)などがある。
>>「もの派」を代表する作家・関根伸夫が76歳で逝去

・5月15日にクリスティーズ・ニューヨークで開催された戦後・現代美術セールで、ジェフ・クーンズの彫刻作品《ラビット》(1986)が、現存アーティストのオークションにおける過去最高額となる9107万5000ドル(約100億円)で落札された。これによりデイヴィッド・ホックニー《芸術家の肖像画―プールと2人の人物―》の落札額、9031万2500ドル(2018年11月)という記録が更新された。
>>現存アーティストの過去最高額を更新。ジェフ・クーンズの《ラビット》が約100億円で落札

・その高い依存性から、アメリカ国内で多くの犠牲者を出している鎮痛剤「オピオイド」。この元凶をつくった製薬会社を経営するサックラー・ファミリーから数十年にわたって寄付を受けていたメトロポリタン美術館が、様々な美術館の後に続くかたちで、今後の寄付の受付を見合わせることを発表した。
>>さらばサックラー・ファミリー。メトロポリタン美術館の決断
>>蜜月の終わり。世界各国の美術館が関係解消を急ぐ「サックラー・ファミリー」とオピオイド中毒問題
 

6月

伊藤若冲 鳥獣花木図屏風(右隻) 六曲一双 紙本着色 江戸時代 18世紀

・府中市美術館館長、多摩美術大学美術館館長などを務めた美術史家・本江邦夫が、6月3日に逝去した。享年70。「VOCA展」をはじめ様々な審査に携わったほか、著書に『オディロン・ルドン-光を孕んだ種子』(みすず書房、2003)などがある。
>>本江邦夫が70歳で逝去。美術界に大きな足跡を残す

・「逃亡犯条例」改正に反対する大規模なデモが起こる香港で6月12日、100以上の美術館やギャラリーがクローズし、同条例の改正に抗議。アイ・ウェイウェイはデモの様子を記録するため研究者チームを香港へ派遣し、記録した素材を作品の制作に用いる予定だと語った。
>>100以上の美術機関が閉館。香港の美術界が「逃亡犯条例」改正案デモに反応
>>アイ・ウェイウェイが研究チームを香港に派遣。デモの映像を作品化

東京国立近代美術館が、近代日本画の巨匠・鏑木清方の幻とされてきた3作品を新たに収蔵。《築地明石町》(1927)は44年ぶりに発見されたもので、あわせて三部作となる《新富町》《浜町河岸》(ともに1930)も長らく所在不明となっていた。なお清方の没後50年となる2022年には、同館と京都国立近代美術館で「没後50年 鏑木清方展」(仮称)を開催予定。
>>44年ぶりに発見。鏑木清方の名作《築地明石町》など3作品を東京国立近代美術館が新収蔵、公開へ

・東京・丸の内の出光美術館が、アメリカのビッグコレクターとして知られるエツコ&ジョー・プライス夫妻(プライス財団)のコレクションから190点におよぶ日本美術を購入。伊藤若冲の代表作《鳥獣花木図屏風》(18世紀)をはじめ、円山応挙酒井抱一による名品の数々は、2020年9月からの特別展「凱旋帰国!江戸絵画の華」(仮)で公開予定となっている。
>>出光美術館が若冲《鳥獣花木図屏風》など190点をプライスコレクションから購入。2020年に展覧会開催へ

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