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世界初の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が20年3月に開催。フェルメール、ゴッホら61作品が初来日

ヨーロッパ絵画を網羅する質の高いコレクションで知られるロンドン・ナショナル・ギャラリー。同館の200年の歴史のなかで初となる、館外での大規模な所蔵作品展が東京の国立西洋美術館(2020年3月3日~6月14日 ※2月28日に3月17日以降への開幕延長を発表)と大阪の国立国際美術館(2020年7月7日~10月18日)で開催される。

記者発表の会場にて

 幅広い地域と時代のヨーロッパ絵画を網羅し、13〜20世紀の名品約2300点を所蔵する1824年創立のロンドン・ナショナル・ギャラリー。年間の入場者は世界の美術館・博物館でもトップ10に入る約600万人超を誇る、美の殿堂だ。そして約200年の歴史のなかで初となる館外での大規模な所蔵作品展が来年、東京の国立西洋美術館(2020年3月3日~6月14日 ※2月28日に3月17日以降への開幕延長を発表)と大阪の国立国際美術館(2020年7月7日~10月18日)で開かれる。

 19年9月9日に都内で行われた記者発表でその内容が明らかになった。

ヨハネス・フェルメール ヴァージナルの前に座る若い女性 1670-72頃 キャンバスに油彩 51.5×45.5cm ©The National Gallery, London. Salting Bequest, 1910
クロード・モネ 睡蓮の池 1899 キャンバスに油彩 88.3×93.1cm ©The National Gallery, London. Bought, 1927

 「イタリア・ルネサンス絵画の収集」「オランダ絵画の黄金時代」「ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」「グランド・ツアー」「スペイン絵画の発見」「風景画とピクチャレスク」「イギリスにおけるフランス近代美術需要」の7章からなる本展。

 その趣旨は、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの幅広い「百科事典」的なコレクションの特徴を反映させること。そしてイギリスにおけるヨーロッパ大陸の絵画の収集およびイギリスと大陸とのあいだの美術交流にフォーカスするというもので、イタリア・ルネサンスからポスト印象派まで約500年の西洋絵画が網羅される。

フィンセント・ヴァン・ゴッホ ひまわり 1888 キャンバスに油彩 92.1x73cm © The National Gallery, London

 本展の共同企画者、国立西洋美術館主任学芸員の川瀬佑介は企画趣旨について次のように話す。「美術館がイギリスにありながら、ヨーロッパの幅広い作品を集めているのが特徴。いまの時代にはきわめて一般的なこの収集スタイルは、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが最初に始めたもの。どうしてこんなにも幅広い作品を集められたのか?という点に注目したいです」。本展では、初期ネーデルランド派以外の作品はすべて網羅しているという。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス 1829 キャンバスに油彩 132.5×203cm ©The National Gallery, London. Turner Bequest, 1856
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 34歳の自画像 1640 キャンバスに油彩 91×75cm  ©The National Gallery, London. Bought, 1861

 会場には、レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン《34歳の自画像》(1640)、ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》(1670-72)、ディエゴ・ベラスケス、《マルタとマリアの家のキリスト》(1618頃)、ピエール=オーギュスト・ルノワール《劇場にて(初めてのお出かけ)》(1876-77)、クロード・モネ《睡蓮の池》(1899)、そしてフィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》(1888)など、すべて初来日の61作品が揃う。

川瀬が「本展の隠し球のひとつ」と語る、フランシスコ・デ・スルバラン《アンティオキアの聖マルガリータ》(1630-34)

 質疑応答では、「ゴッホの《ひまわり》やモネの《睡蓮の池》といった有名作以外におすすめ作品があれば知りたい」といった質問が出た。それに対し、「強いて一点選ぶとするならば」として川瀬が挙げたのは、カルロ・クリヴェッリの《聖エミディウスを伴う受胎告知》(1486)。「際立った個性のあるアーティストであるクリヴェッリの最高傑作。これだけを見るためにだけでも会場に足を運ぶ意味があると思います」と話す。

アンソニー・ヴァン・ダイクの《ティンベビー卿夫人エリザベスとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー》(1635頃)

 そして、ロンドン・ナショナル・ギャラリー副館長のスーザン・フォイスターが「とても選び難いですね(笑)」と前置きしたうえで挙げた作品は、アンソニー・ヴァン・ダイクの《ティンベビー卿夫人エリザベスとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー》(1635頃)。フォイスターは本作について次のように語る。「前を通りかかるたびに嬉しくなる、もっとも美しい絵画だと思います。本作はヴァン・ダイクが画家として脂の乗った時期のもので、結婚を祝った作品。晴れがましい様子が見られながらも、清教徒革命前夜に描かれたことを思うと悲しい気持ちにもなります。また、本作は比較的最近、美術館のコレクションに加わった作品なので、コレクションが生き続けているということを示す作品でもあります」。

 知られざる「隠し球」と言えるような作品もいくつか含まれるという本展は、西洋絵画の歴史を知るうえで絶好の機会となるだろう。

左からスーザン・フォイスター(ロンドン・ナショナル・ギャラリー副館長)、馬渕明子(国立西洋美術館館長)

編集部

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