「逃亡犯条例」改正に反対する大規模なデモが起きている香港。6月12日には、香港の美術館やギャラリーなど100以上の美術機関がクローズし、同条例の改正に抗議した。
発端は6月9日、香港で拘束した容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案撤回を求めるため、100万人以上がデモに参加したこと。香港のアーティスト連合「the Hong Kong Artists Union」は、「改正案が可決されれば、あらゆる分野のアーティストや文化人の仕事に欠かすことのできない表現の自由を深刻に侵害する危険性があります」という公開状を発表。「それはまた、アイデアが自由に流れる国際的なアートハブとしての都市の評判と信頼性を損なうものです」。
「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」の報道によると、ギャラリーが集結するぺダー・ビルディング内の、ベン・ブラウン・ファイン・アーツ、リーマン・モーピン、サイモン・リーを含む約半分のギャラリーが閉廊。また、デモに自由に参加することをスタッフに許可するメガギャラリーもあったという。
村上隆の個展が開催されている「大館(タイクン)」では、同展の前売券のみで入館でき、当日券は販売されなかった。「香港アートセンター」は、スタッフにストライキの許可を与え、近くの立法会ビルの周辺に集まる抗議者に給水器や携帯の充電器も提供したという。
現在ベルリンを拠点に活動している中国人のアーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、香港でのデモについて「BBC」にこう語っている。「この法案が可決されたら、あらゆる香港の住民は危険にさらされます。中国当局は容疑者への逮捕を決めたら、それを簡単に行えるでしょう。(この法案は)中国と香港との境界をつぶしてしまい、『一国二制度』の崩壊につながる可能性があります」。
元イギリス植民地だった香港は、1997年に「一国二制度」のもとに中国に返還され、2047年までに独自の法的・経済的基盤を維持することができる特別行政区になった。近年、一党独裁の中国政府による影響が強くなり、高度な自治が損なわれるようになっていることへの抗議が多発。今回の条例改正案も香港の自由自治に大きな打撃を与えるに違いない。アジアのもっとも活力のあるアートハブのひとつ、香港の民主主義の行き先が広く懸念される。