NEWS / HEADLINE - 2019.4.3

「ジェンダー平等は美術界の国際的潮流になる」。津田大介が語るあいちトリエンナーレ2019のジェンダー平等

参加作家の男女比が半々になったことで話題を呼んでいる、あいちトリエンナーレ2019。東京で開催された記者会見で、芸術監督・津田大介が語ったこととは?

津田大介

 3月下旬に発表された「あいちトリエンナーレ2019」の参加ラインナップは、参加作家の男女比がほぼ同じになるということで大きな話題を呼んだ。

 4月2日に東京で開催された「あいちトリエンナーレ2019」の記者会見でもこのトピックスは大きなウェイトを占め、芸術監督・津田大介の発言に注目が集まった。

 「国際芸術祭参加作家のジェンダー平等は、今後美術界の国際的潮流になる」。これは記者会見で津田が力強く語った言葉だ。

津田大介

 津田が「あいちトリエンナーレ2019」でジェンダー平等を目指すきっかけとなったのが、東京医科大学が女子受験生や多浪の男子受験生の得点を不正操作して不合格にした事件。日本でこのような露骨な女性差別があるということに対し、向き合う必要があると感じたという。

 またキュレーターのひとりであるペドロ・レイエスがメキシコのフェミニスト・アートで知られるメキシコのモニカ・メイヤーを推薦してきたことも要因のひとつとなった。モニカ・メイヤーを入れるかどうかは議論があったというが、結果的に参加作家として入れることで、女性作家数の増加が後押しされた。

モニカ・メイヤー El Tendedero (The Clothesline) 1978 Photo by Victor Lerma Courtesy of the Pinto mi Raya Archive

 世界のアート業界でもジェンダーの不平等は顕著な問題であり、イギリスの美術誌『ArtReview』が毎年発表する、現代の美術界でもっとも影響力のある人物をランク付けする「Power 100」に#metooが3位に入るなど、世界的にジェンダーに対する注目度は高まりを見せつつある(香港の大館ではジェンダーにおける暴力をテーマにした企画展「パフォーミング社会:ジェンダーの暴力(PERFORMING SOCIETY: THE VIOLENCE OF GENDER)」が開催中。またイギリスのテート・ブリテンは女性作家だけの大規模展「Sixty Years(60年)」を開催予定)。

ノルウェー・オスロでのウーマンズ・マーチの様子 出典=ウィキメディア・コモンズ

 では、日本のアート界の現状はどうなのか? 津田は様々な角度から調査を行い、有名美術館の常設コレクションの作家の男女比や、美術大学教員の男女比、主な国際芸術祭の男女比などを調査。美術館学芸員の男女比を除いたどの項目においても圧倒的に男性が優位に立ち、男女平等が実現していない日本の現状を数字で指摘する。

津田大介

 また身内とも言えるあいちトリエンナーレの実行委員会や参与会議も男性が大半であるとし、「日本では不自然にもジェンダー平等が実現していない。それはガラスの天井があるのではないか。アファーマティブ・アクション(弱者に不利な現状を積極的に是正する動き)をやっていくべきなのです」と強く語った。

 実際、今年のヴェネチア・ビエンナーレでは79作家の男女比がほぼ半々となることが現時点で公表されるなど、国際芸術祭参加作家のジェンダー平等実現がアートワールドにとって達成すべき課題であることは明白だ。

 そんななか、津田のもとにはジェンダー平等についての反対意見が寄せられていることを語りつつ、記者会見では「ジェンダー平等を実現するために女性作家に下駄を履かせたのか?」という問いを自ら設定。「履かせたわけではない」と明言する。「作家よりも数字を優先させたわけではありません。何よりも重視したのはテーマに合致するかということ。テーマに合わない女性作家はそもそも採用していません」。

 「情の時代」というテーマに合うかどうか。これを前提としたうえで、津田は「女性作家であること(50パーセントを目指す)」という指標のほか、「日本人作家であること(20パーセント)」「若手作家であること(20パーセント)、「愛知にゆかりがあること(10パーセント)」などを作家選定の考慮要素としたことを明らかにした。

 あいちトリエンナーレは津田を含めてこれまで4回の芸術監督をすべて男性が務めてきた。この点に関しても、津田は「私が芸術監督の選出会議に入った際は」と前置きしたうえで、「次回の芸術監督は女性、あるいは4回連続女性にすべきだと主張しようと思っています」と話す。

 あいちトリエンナーレという日本中から注目を集める国際展において、これまでの美術界の常識を打ち破る動きができたのは、ジャーナリスト・津田大介だからこそ。これを前例とし、各地の国際展・芸術祭だけでなく、美術界全体がジェンダーバランス是正に動くことが期待される。