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伊藤若冲

Jakuchu Ito

 伊藤若冲は江戸中期の画家。1716年、京都の青物問屋「枡屋」の長男として生まれる。裕福な環境のもと、独学で作品を制作。細部まで描き込まれ、極彩色で彩られた絹本着色の作品や、即興的な筆遣いとユーモラスな表現が特徴の水彩画は、日本美術史上でも異彩を放つ。代表作に《動植綵絵》《鳥獣花木図屏風》など。18世紀の京都画壇では円山応挙に次ぐ有名な存在であった。1800年没。その評価は明治時代になっても高く、相国寺に所蔵されていた《動植綵絵》が1889年に宮内庁に献納される。御物として一般から隔離されたことにより、若冲の存在はしばらく忘れられることになる。再評価に至ったのは第二次世界大戦後、アメリカのコレクターであるジョー・プライスが若冲の作品を熱心に買い取り、一大コレクションを築いたことに起因する。プライス夫妻と美術史家の辻惟雄・小林忠が協力して1971年、東京国立博物館などで若冲展を開催。辻は著書『奇想の系譜』([初版1970]筑摩書房、2004)や『若冲』([初版1974]講談社、2015)などによってその価値を提示した。以後、2000年に京都国立博物館で開催された「-没後200年- 若冲」をきっかけとして一般にも広く知られるようになり、06年の東京国立博物館、16年の東京都美術館の展覧会では長蛇の列ができるほどの人気となった。