建築も楽しめる全国の美術館・アートスポットBEST35【2/4ページ】

北陸・甲信越

金沢21世紀美術館

 2004年にヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を、2010年にはプリツカー賞を受賞した建築家ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)の建築として知られる金沢21世紀美術館は、街と一体化するような、正面や裏口の区別がない円形のデザインと、ガラス張りの外壁が特徴。

金沢21世紀美術館 撮影:渡邉修 写真提供:金沢21世紀美術館

 明るく開放感あふれる建築は、様々な出会いや体験を可能とし、公園のような美術館として多くの人々に愛されている。恒久展示作品としては、レアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》(2004)、オラファー・エリアソン《カラー・アクティヴィティ・ハウス》(2010)、アニッシュ・カプーア《L'Origine du monde》(2004)、ヤン・ファーブル《雲を測る男》(1998)などで広く知られる。

富山市ガラス美術館

 美しいガラスアートを紹介する富山市ガラス美術館は、隈研吾が設計を手がけた複合施設「TOYAMAキラリ」内にある美術館。御影石、ガラス、アルミを組み合わせた外観は立山連峰を想起させ、建物自体が光り輝いているようなファサードを持ち、内部では県産材のルーバーが柔らかな光をつくり出している。 

富山市ガラス美術館 写真提供:富山市ガラス美術館

 常設展では、富山市ガラス美術館所蔵の現代ガラス作品を展示するコレクション展をはじめ、展示室の壁面や図書館内に富山ゆかりの作家の作品を展示。また、6階「グラス・アート・ガーデン」では、現代ガラス美術の巨匠、デイル・チフーリの工房が制作したインスタレーション作品を鑑賞することができる。

清春芸術村・光の美術館

 山梨県からは、谷口吉生から安藤忠雄、藤森照信、杉本博司まで多数の名建築が集まる清春芸術村を紹介したい。谷口が設計したルオー礼拝堂は、打ちっ放しのコンクリートでできたモダンな空間となっており、ここではルオーが制作したステンドグラスやキリスト像などが展示されている。

光の美術館 (c)清春芸術村

 芸術村の中心部には、安藤が設計した箱型の美術館、光の美術館がある。同館は自然光のみで作品を鑑賞する美術館であり、その建築には、ガラスで切り取られた天井の一角や壁のスリットなど、人々の心に響く意匠が凝らされている。季節や時間によって変化する光そのものが鑑賞体験の一部となるだろう。また藤森設計の「茶室 徹」は樹齢八十年の檜に支えられており、赤瀬川源平、南伸坊、林丈二らの協力のもと建設されている。

関東

東京都庭園美術館

 東京からは、東京都庭園美術館をおすすめしたい。同館は、1933年に建設されたアール・デコ様式の旧朝香宮邸を活かした美術館として多くのファンを持つ美術館だ。

東京都庭園美術館 撮影:編集部

 主要な部屋の内装にはアンリ・ラパン(1873〜1979)やルネ・ラリック(1860〜1945)らが関わり、建築・室内装飾そのものが大きな見どころとなっている。当時の様子をそのままに伝える本館と、2018年に新たに誕生した新館のコントラストも同館の特徴だ。また、緑豊かな庭園もゆったりと楽しむことができる。

21_21 DESIGN SIGHT

 六本木の東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHTは、安藤忠雄が設計したリサーチセンター。三宅一生の服づくりのコンセプト「一枚の布」に着想を得て、一枚の鉄板を折り曲げたような屋根を持つ低層建築として構想された。

21_21 DESIGN SIGHT館内(「The Original」展) 撮影:編集部

 安藤のシグニチャーであるコンクリート打ちっぱなしによるデザインで大部分が地下に埋め込まれており、外観のシャープさと、内部に広がるギャラリー空間の対比も印象的だ。2007年の開館以来、訪問者がデザインの楽しさに触れ、新鮮な驚きに満ちた体験ができるような展覧会が数々開催されてきた。

国立新美術館

 同じく六本木の国立新美術館は、黒川紀章(1934〜2007)が設計した「森の中の美術館」。南側には波のようにうねるガラスのカーテンウォールが広がり、館内の吹き抜け空間に柔らかな光を取り込んでいる。

国立新美術館 撮影:編集部

 国立の美術館でありながらコレクションを持たず、展覧会開催のための場として機能する点も特徴だ。

大倉集古館

 東京・虎ノ門のホテルオークラに隣接する大倉集古館は、明治から大正時代にかけて活躍した実業家・大倉喜八郎(1837〜1928)が1917年に設立した日本で最初の財団法人の私立美術館。

大倉集古館 撮影:編集部

 設立当初の建物は1923年の関東大震災で焼失しており、現在の建物は東京帝国大学教授・伊東忠太(1867〜1954)の建築設計によって1927年に竣工したもので、中国古典様式を取り入れた意匠が特徴となっている。建物自体が国の登録有形文化財であり、日本・東洋の古美術を中心とするコレクションとともに、重要な鑑賞対象となっている。 

小田原文化財団 江之浦測候所

 関東圏では、神奈川県・小田原市にある「小田原文化財団 江之浦測候所」も必見。ここは、現代美術家・杉本博司が構想から竣工まで20年以上の歳月をかけた巨大施設であり、杉本の「作品」だ。ギャラリー棟、石舞台、光学硝子舞台、茶室、庭園、門などで構成され、「光学硝子舞台と古代ローマ円形劇場写し観客席」をはじめ、杉本のこだわりが至る所に見られる。

光学硝子舞台 撮影:編集部

 日本の建築様式や伝統工法を通観する場としても設計されており、相模湾を望む立地と、太陽の運行を意識した建築群によって、自然・時間・建築・美術が重なり合う体験が生まれている。

東海

クレマチスの丘(ベルナール・ビュフェ美術館・井上靖文学館)

 静岡・長泉町の愛鷹山中腹にあるクレマチスの丘は、美術館や文学館、レストラン、自然公園などによって構成される複合文化施設。

ベルナール・ビュフェ美術館 撮影:山本糾 写真提供:ベルナール・ビュフェ美術館

 敷地内には、フランスの巨匠ベルナール・ビュフェ(1928〜1999)の世界最大のコレクションを誇るベルナール・ビュフェ美術館や、幼少期を伊豆で過ごした井上靖(1907〜1991)を記念して設立された井上靖文学館などが点在する。自然のなかで作品鑑賞と散策をあわせて楽しめる。 

MOA美術館

 熱海のMOA美術館は、国宝3点を含む約3500点の作品を所蔵する施設。2017年、現代美術作家・杉本博司と建築家・榊田倫之が主宰する「新素材研究所」によってリニューアル。

MOA美術館 写真提供:MOA美術館

 黒漆喰の壁や無反射ガラスを配するなど、日本の伝統的な素材を用いることで、作品鑑賞のための静謐な空間がつくられている。国宝を含む東洋美術・日本美術のコレクションと、相模灘を望む立地も大きな魅力だ。 

豊田市美術館

 1995年に愛知県豊田市に開館した豊田市美術館。その建築は、美術館建築で名高い谷口吉生が設計した、乳白色のガラスと緑のスレートが特徴的なもの。庭園はランドスケープ・アーキテクトのピーター・ウォーカーが手がけた。

豊田市美術館 撮影:編集部

 建築と庭園を含めた全体が、作品との出会いへと鑑賞者を導く装置として構成されている。街中にありながら自然豊かな庭園では彫刻作品を鑑賞できるほか、見晴らしの良い高台から豊田市街地を一望でき、館内外で現代美術と建築、ランドスケープが連続する体験を楽しめる。 また、隣接する坂茂設計の豊田市博物館も24年に開館し、互いに共鳴し合う空間をつくり出している。

岐阜現代美術館

 墨象作家・篠田桃紅(1913〜2021)の作品を中心とした美術品を展示するために、2007年に開館した岐阜現代美術館。同館では、桃紅の初期から新作まで800点あまりの作品と資料を所蔵し、桃紅作品の調査研究を行う。

岐阜現代美術館 写真提供:岐阜現代美術館

 円筒形ドームの美術館建築は、1993年度「日経ニューオフィス推進賞<通商産業大臣賞>」を受賞。カスケードとプールが配され、周囲の自然と造形が調和した空間を堪能してほしい。また、2024年には新たに桃紅館が開館し、篠田作品の特徴である墨と銀を建物の意匠に取り入れた外観が採用されている。 

岐阜県現代陶芸美術館

 岐阜県多治見市の広大な自然公園「セラミックパークMINO」内にある岐阜県現代陶芸美術館。建築家・磯崎新が設計を手がけた建物は、周囲の山並みや地形の起伏に寄り添うように建てられており、自然環境と建築が見事に調和している。

岐阜県現代陶芸美術館 撮影:編集部

 アプローチに配された陶板の壁やカスケード、そして茶室など、美濃の地が育んできた陶磁器文化を随所に感じさせる意匠が特徴だ。19世紀後半以降の近現代の陶芸作品を中心に、国内外の優れたコレクションを独自の切り口で展示。現代の多様な陶芸表現と、磯崎建築が織りなす静謐な空間をあわせて堪能できる。