建築も楽しめる全国の美術館・アートスポットBEST35【4/4ページ】

中国・四国

島根県立石見美術館

 島根県益田市にある島根県立石見美術館は、美術館と劇場が一体となった複合文化施設「島根県芸術文化センター グラントワ」内に位置する。建築家・内藤廣が設計を手がけた建物は、島根県西部の伝統的な建築素材である「石州瓦(せきしゅうがわら)」を外壁と屋根に合計約28万枚も使用。光の角度によって表情を変える独特の赤黒い瓦が、見る者に圧倒的な存在感を与える。

島根県立石見美術館 撮影:編集部

 中庭を囲む回廊型の構造が特徴で、水盤が配された広場は地域の人々の憩いの場としても機能している。コレクションは、浜田市出身のファッションデザイナー・森英恵の作品や、島根ゆかりの美術、さらには国内外の優れた絵画や工芸など多岐にわたる。「美と表現」の多様性を地域から発信する拠点として、五感に響く美しい建築とともに独自の存在感を放っている。

下瀬美術館

 広島県大竹市の沿岸部に2023年に開館した下瀬美術館は、世界的な建築家・坂茂の設計による革新的な美術館だ。瀬戸内海の多島美にインスピレーションを得てデザインされた最大の特徴は、水盤に浮かぶ8つの「可動展示室」。

下瀬美術館 撮影:編集部

 大竹市の地場産業である造船技術を応用したこの展示室は、色の異なるキューブが水面に並び、夜にはライトアップされて幻想的な景観をつくり出す。エントランスや管理棟を支える伝統的な木造のトラス構造、瀬戸内の植物が植えられた「エミール・ガレの庭」、そして展望テラスから望む宮島の景色など、建築とアート、そして瀬戸内の自然が一体となった、これまでにない鑑賞体験を提示している。

奈義町現代美術館

 また、建築作品として必見なのが、磯崎新が手がけた岡山県の奈義町現代美術館だ。同館は荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子に巨大作品をあらかじめ制作依頼し、それぞれの作品空間を建築化するという発想でつくられた。

奈義町現代美術館 展示室「大地」 写真提供:奈義町現代美術館

 展示室は「太陽」「月」「大地」と名づけられ、 作品が建築化したような空間を楽しむことができる。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は、谷口吉生設計による美術館。丸亀市ゆかりの画家・猪熊弦一郎の全面的な協力のもと1991年に開館。

丸亀市猪熊弦一郎美術館 撮影:編集部

 猪熊本人から寄贈された約2万点の作品を所蔵している。自然光を取り込んだ明るく広々とした空間は、猪熊が美術館に求めた理念と谷口の建築が結びついたものだ。 

広島市現代美術館

 1989年5月、日本初の公立現代美術館として開館した広島市現代美術館は、黒川紀章による設計。

広島市現代美術館 撮影=編集部

 2023年、開館以来初となる大規模改修工事を終えた同館は、比治山公園の自然環境と調和しながら、古代ヨーロッパの広場を思わせるアプローチプラザや、日本の蔵を想起させる三角屋根を備える。円形屋根の切れ目が爆心地の方角を指すなど、広島という土地の記憶とも深く結びついた建築だ。 

大塚国際美術館

 徳島県の大塚国際美術館は、2018年の紅白歌合戦で米津玄師が中継出演する際の舞台にもなった美術館だ。

スクロヴェーニ礼拝堂(大塚国際美術館の展示作品を撮影) 写真提供=大塚国際美術館

 同館は、世界中の名画を陶器の板に原寸で焼き付けて展示する「陶板名画美術館」。修復前の《最後の晩餐》(1495〜1498)の再現のほか、システィーナ礼拝堂、スクロヴェーニ礼拝堂などの壁画空間を環境ごと再現する展示により、通常は現地でしか体験できない作品空間を立体的に味わうことができる。日本最大級の常設展示スペースを有する点も特徴で、その質・量から、1日で回ることは難しいと言われるほどだ。

 瀬戸内エリアからは、アートの聖地「直島」より、李禹煥美術館とヴァレーギャラリーをピックアップしたい。

李禹煥美術館

 李禹煥美術館は、2010年に開館。「もの派」を代表するアーティストとして現代美術の中核を担ってきた李禹煥(リ・ウファン)と建築家・安藤忠雄のコラボレーションによる美術館だ。

李禹煥美術館 撮影:編集部

 半地下構造の館内には1970年代から現在に到るまでの絵画・彫刻を、広場では、自然石と鉄板を組み合わせ、極力つくることを抑制した彫刻作品を展示。海と山に囲まれた谷間の環境のなかで、自然、建築、作品が響き合う静謐な空間を味わうことができる。

ヴァレーギャラリー

 いっぽう、この李禹煥美術館の向かいの山間に整備されたヴァレーギャラリーは、22年3月にオープンしたばかりの施設。祠をイメージした建築は安藤忠雄による設計で、半屋外に開かれたデザインが特徴だ。

ヴァレーギャラリーの展示風景より、草間彌生《ナルシスの庭》(1966/2022) Copyright of Yayoi Kusama

 建築の屋外には小沢剛の《スラグブッダ88―豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏》(2006)が、また屋内外には草間彌生のインスタレーション《ナルシスの庭》(1966/2022)が設置されている。

九州

福岡市美術館

 福岡市美術館は、ル・コルビュジエに学んだ日本近代建築の巨匠、前川國男(1905〜1986)の設計だ。「エスプラナード」と呼ばれる広場とロビーを中心とした展示室等の配置が特徴で、前川の思想が反映された建築となっている。

福岡市美術館 撮影:編集部

 2019年にはリニューアルオープンし、前川が遺した建築意匠を尊重しつつ、西側に新しいアプローチを設け、大濠公園でくつろぐ人々を館内に誘う機能を強化している。

長崎県美術館

 長崎県美術館は隈研吾の設計。運河を挟み西側と東側のふたつの棟によって構成されるユニークな建築で、日本建築家協会賞を受賞している。「ギャラリー棟」と呼ばれる西側の棟にはエントランスロビーや県民ギャラリーなどが、「橋の廊下」でつながった「美術館棟」と呼ばれる東側の棟には企画展示室や常設展示室などを設置。

長崎県美術館 撮影:編集部

 2つの棟で「開く」機能と「守る」機能を建築的に分節している。運河を望むカフェや屋上庭園など、水辺の環境と一体化した鑑賞体験を楽しむことができる。 主な収蔵作品は、長崎ゆかりの美術とスペイン美術。ピカソ、ダリなどスペイン美術のコレクションは東洋有数の規模を誇る。

大分県立美術館

 大分県立美術館は、2015年に大分市の中心部に誕生した美術館だ。大分が誇る伝統工芸の竹工芸をイメージさせる外観とガラス張りの開放感あふれる建物は、坂茂の設計によるもの。

大分県立美術館 (c)Hiroyuki Hirai 写真提供:大分県立美術館

 入館無料でミュージアムショップやカフェに立ち寄ることができる館内1階には街に開かれた大きなアトリウム空間が広がる。アトリウムでは、マルセル・ワンダースによる巨大な卵形バルーン《ユーラシアン・ガーデン・スピリット》(2015)など、展示室外でもアートに触れられる作品が展開されている。 

鹿児島県霧島アートの森

 鹿児島県霧島アートの森は、霧島連山の自然に囲まれた野外美術館。野外展示では、草間彌生《赤い靴》(2002)をはじめ、ジョナサン・ボロフスキー《男と女》(1999)、ジェニー・ホルツァー《ブルー》(1998)など、国内外の作家による作品が自然の地形や景観と呼応するように設置されている。

鹿児島県霧島アートの森 写真提供:鹿児島県霧島アートの森

 四季や天候によって作品の見え方が変わり、美術館建築の内部だけでは得られない、自然のなかでの現代美術体験ができる。