2020.3.14

一度は泊まってみたい日本のアートホテル・旅館

ただ宿泊するだけではなく、客室や施設内で美術作品を楽しめるアートホテル。新規オープンが目立つこれらのホテルから注目のホテル・旅館をピックアップして紹介する(本稿は2019年8月12日の記事を改訂したものです)。

「BnA Alter Museum」より、EY∃が手がけた部屋「D/R/M」の様子 Photo by Tomooki Kengaku
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菅木志雄の作品を常時約300点展示する「板室温泉 大黒屋」

外観

 リゾート地として有名な栃木県の那須高原にある「那須温泉」。ここには効能・泉質が異なる7つの湯「那須七湯」があることでも知られるが、創業468年の老舗旅館「板室温泉 大黒屋」ではそのうちひとつを楽しめる。

「板室温泉 大黒屋」より、菅木志雄が手がけた庭
倉庫美術館

 「保養とアートの宿」をテーマに掲げる旅館敷地内には美術館とギャラリーが併設され、「倉庫美術館」では現代美術作家、菅木志雄の作品を常時約300点展示。そして旅館内にある「大黒屋 サロン」では、現代美術、陶芸、工芸など毎月異なる作家の展覧展が開催されている。

 

アートホテルの先駆け「ホテル アンテルーム 京都」

ホテル アンテルーム 京都

 2011年、築23年の元・学生寮をコンバージョンしオープンしたのが、「ホテル アンテルーム 京都」だ。

 16年にはリニューアルを行い、新たに67室を加え、50室のアパートメントと全128室の客室を有する施設へと生まれ変わった。

 とくに注目したいのが、日本を代表するアーティストたちとスケルトンの状態から企画したコンセプトルームだ。蜷川実花や名和晃平、金氏徹平、宮永愛子ら9組による9種類の部屋があり、各部屋でまったく異なる趣向が楽しめる。

名和晃平のコンセプトルーム
金氏徹平のコンセプトルーム

 このほか、 1階にはギャラリースペースやバー、レストランを設けており、展覧会などのイベントも開催。また「365日アートフェア」というテーマのもと、70組以上のアーティストによる購入可能なアート作品が客室や共有部に展示されているので、文字通りアートに囲まれた宿泊体験ができる。

 

宿泊型アートスペース「KYOTO ART HOSTEL kumagusuku」

撮影=大西正一

 「KYOTO ART HOSTEL kumagusuku」は、「展覧会の中に宿泊し、美術を“体験”として味わうための宿泊型のアートスペース」をコンセプトに2015年、京都にオープンした。

 展覧会は年1回のペースで開催され、そのつど宿泊空間はまったく異なる姿へと変貌。これまで澁谷征司、小林耕平と髙橋耕平の二人展、藤本由紀夫らの展覧会が行われ、現在は第5弾として、展覧会「ベアトリス・バルクー x 奥村雄樹:心中熊楠城」が開催中。イベントも随時行っている。

撮影=表恒匡

 dot architectsが設計を手がけたこのホステルは、最大定員8名と小規模ながらも通常の宿泊から1棟貸し切りまで、様々な使い方が可能。ここでしかできない宿泊体験を計画してみてはいかがだろうか。

 

アートコレクターの気分を味わえる「node hotel」

ジュニアスイート

 「アートコレクターの住まい」をコンセプトにした宿泊施設「node hotel」が今年7月、京都の中心部である四条烏丸近くにオープンした。同ホテルでは、世界中のギャラリーやアートフェアで購入された作品を、パブリックスペースのみならず客室でも展示している。アーティストのラインナップは、バリー・マッギー、ベルナール・フリズ、五木田智央、大竹伸朗、荒木経惟、井田幸昌など。

1階パブリック・スペース

 アーティストやギャラリーとコラボレーションした展覧会やポップアップストアなどの企画イベントも随時実施されているので、公式サイトでチェックしてほしい。

 

アート・ルームやギャラリーもある「BnA Alter Museum」

「BnA Alter Museum」外観 Photo by Tomooki Kengaku

 東京・高円寺にあるアートホテル「BnA HOTEL」や、大型壁画プロジェクト「Tokyo Mural Project」などを展開するBnAが京都で運営するのが、「BnA Alter Museum」だ。

「BnA Alter Museum」には、ライゾマティクス・真鍋大度や、中野裕介/パラモデル、梅田哲也、EY∃などアーティストたちが手がけたアートルームが31種類もあり、部屋ごとにまったく異なる宿泊体験が得られる。また、アートルームでは宿泊費の一部がアーティストに還元されるシステムが導入されているのも大きな特徴。

梅田哲也が手がけた部屋「だれのものでもない水 / なにもみえない場所」 Photo by Tomooki Kengaku
SCGこけら落としとなった展示「TO SELF BUILD」(2019)より秋山ブクの作品 Photo by Tomooki Kengaku

 またホテルには、施設内階段に沿った計31メートルの縦型ギャラリースペース「SCG(STAIRCASE GALLERY)」があり、エントランスの吹抜け空間に加え、階段を登りながら鑑賞する4つの空間をあわせた、計5つの展示空間では、随時企画展が開催。一般来館者も鑑賞可能となっている。

 

若手アーティストを支える「河岸ホテル(KAGANHOTEL)」

 「河岸ホテル(KAGANHOTEL)」は、京都でもっとも新しいアートホテルだ。「若手アーティストが住みながら制作活動を行う」というコンセプトをもとにする同ホテルは、京都中央卸売市場付近にある元社員寮兼倉庫をリノベーションしたもの。

外観 撮影=木村華子

 アーティストのスタジオやギャラリーと、ホテル、飲食店が併設する滞在型複合施設。地下1階には、24時間利用可能なシェアスタジオ・工房があり、若手アーティストはここで生活を送りながら制作活動を行うことができる。

1階風景 撮影=木村華子
客室風景 撮影=木村華子

 また客室にもそれぞれ特徴があり、4階と5階のホテルでは、一般の人々がアーティストのアトリエ付き住居を体験できるほか、最上階の5つの客室は、入居アーティストの作品を泊まりながら鑑賞できる。

 

「ミュージアムホテル」を掲げる「ホテルロイヤルクラシック大阪」

 大阪・なんばの新歌舞伎座跡地に開業した「ホテルロイヤルクラシック大阪」は、「ミュージアムホテル」を掲げるホテルだ。

ホテルロイヤルクラシック大阪外観

 このホテルの設計を担当したのは、国内外で多数のプロジェクトを手がける隈研吾。外観は、新歌舞伎座の特徴だった唐破風(からはふ)が連なる意匠を引き継ぎ、低層部に復元した。

 館内には、フロントやエレベーターホール、客室廊下といったパブリック・スペースと各客室に、100点以上の美術作品が展示。なかでも「具体美術協会」の作品が多くあり、吉原治良や白髪一雄、田中敦子、上前智祐、嶋本昭三、元永定正といった具体の代表作家たちの作品を随所で見ることができる。

9階エレベーターホールの上前智祐《無題|Untitled》
20階チャペルのジャン=ミシェル・オトニエル《The Knot of The Imaginary》 ©︎Work of Jean Michel Othoniel, copyright belongs to Perrotin

 加えてバーフロアには草間彌生のかぼちゃの立体が、2つのチャペルにはジャン=ミシェル・オトニエルの立体がそれぞれ展示。また、各フロアのエレベーホールには若手作家の作品も飾られている。

 

創業150周年、登録有形文化財の「西村屋 本館」

外観

 城崎温泉でも知られる兵庫県豊岡市で創業150周年を誇るのが「西村屋 本館」だ。

「平田館」より。吊り橋を思わせる通路も珍しい設計のひとつ

 部屋数は34室。庭を囲むように旅館が建てられているため、各部屋からはそれぞれ違う景色を楽しむことができる。また、数寄屋建築の巨匠・平田雅哉が設計し、1960年に増築された別棟「平田館」は、フランク・ロイド・ライトの影響を受けたというモダンな設計。室内の随所に見られる清新で創意に満ちた意匠が特徴的、いまなお新鮮な印象を放つ。

 館内には魯山人らの作品が飾られる展示室があるほか、至るところに調度品が設置されているため、宿泊の際には館内めぐりもお忘れなく。

 

金沢の文化を汲む場所「KUMU金沢」

フロントカウンター

 全国の中心市街地の遊休不動産にリノベーションを施し、宿泊施設、飲食店、シェアスペース、店舗等で構成する「シェア型複合ホテル」へと再生させる「THE SHARE HOTELS」。全国7ヶ所にホテルを展開するこのプロジェクトから、金沢市の「KUMU金沢 THE SHARE HOTELS」を紹介する。

ジュニアスイート

 「KUMU金沢」は、金沢の文化を未来につなぐサロンとして「金沢の文化を汲む場所」をコンセプトに誕生し、アーティストやミュージシャンらととに、金沢の文化にまつわるコンテンツを発信。ホテル内には華雪、木谷洋、高本敦基、ネルホル、橋本雅也、湯川洋康、中安恵一らの作品が並ぶ。

 金沢21世紀美術館からは徒歩15分ほどの立地にあるため、美術館往訪にあわせての宿泊もおすすめだ。