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「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」(上野の森美術館)開幕レポート。ゴッホはなぜ「夜」を描いたのか

約20年ぶりに来日したフィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス(フォルム広場)》(1888)を中心に据えた「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」が、上野の森美術館で開幕した。クレラー=ミュラー美術館のコレクションを通して、ゴッホ制作の変遷をたどりながら、その色彩表現と創作思想の形成過程を読み解く本展をレポートする。

文・撮影=王崇橋(編集部)

展示風景より、フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス(フォルム広場)》(1888年9月16日頃) キャンバスに油彩 80.7×65.3cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

 神戸、福島を巡回してきた「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」が、上野の森美術館で開幕した。会期は8月12日まで。

 本展は、オランダ・クレラー=ミュラー美術館の所蔵作品のみで構成される大規模展。ゴッホ研究において重要な位置を占める同館のコレクションを通じて、画家の前半生に焦点が当てられており、なかでも約20年ぶりに来日した《夜のカフェテラス(フォルム広場)》(1888)は、本展の中心を成す存在だ。

 会場は、ゴッホが影響を受けたバルビゾン派とハーグ派に始まり、オランダ時代、パリ時代、そしてアルル時代へと至る5章構成となっている。上野の森美術館学芸員の斎藤菜生子は、本展について「ゴッホの長いオランダ時代をしっかり見てほしい」と語る。わずか10年の画業のうちの、約半分を占めるオランダ時代は、のちの鮮烈な色彩表現の印象からは見えづらいが、ゴッホ芸術の根幹を形成した重要な時期だった。

プレス内覧会で展示解説を行う上野の森美術館学芸員・斎藤菜生子

 第1章では、ゴッホが強い影響を受けたバルビゾン派とハーグ派の作品が紹介される。ジャン=フランソワ・ミレー《グリュシー村のはずれ》や《パンを焼く女》(いずれも1854)など、農民や労働者の日常を誠実に描いた作品群からは、ゴッホが惹かれた宗教的精神性や写実へのまなざしが浮かび上がる。

第1章「バルビゾン派、ハーグ派」の展示風景より、右はジャン=フランソワ・ミレー《パンを焼く女》(1854)

 斎藤によれば、聖職者を志していた経験を持つゴッホは、「貧しい人々の暮らしのなかにこそ誠実なものがある」と考えていたという。その視点は、ニューネンを拠点としていた時期の農民画へと結実し、ゴッホ初期の代表作《じゃがいもを食べる人々》(1885)へと結実していく。会場に展示されている《じゃがいもを食べる人々》はリトグラフ版であり、ゴッホが家族や画家仲間に自身の代表作を紹介するために制作したものだ。

第2章「オランダ時代」の展示風景より、右はフィンセント・ファン・ゴッホ《じゃがいもを食べる人々》リトグラフ版

編集部