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「三旅人茶会」から「構造と表面」展まで、8月のレビューをプレイバック

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、8月に公開された全17本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

根津美術館庭園内の斑鳩庵・清渓亭にて開催された「三旅人茶会」会場風景 撮影=森本美絵 © Yosuke Bandai, Yu Nishimura and Ryohei Usui Courtesy of artists, TARO NASU, KAYOKOYUKI and MUJIN-TO Production

大森俊克評 Triple traveller「三旅人茶会」

左が万代洋輔「Digitize memory」(仮題、制作中)の要素 、右が西村有《Sleeping face》(2019)。万代作品は2022年完成を目処に進められているプロジェクトの構成要素。作品が完成した際にはこれらの要素が表に出ることはないという。
撮影=森本美絵 © Yosuke Bandai, Yu Nishimura and Ryohei Usui Courtesy of artists, TARO NASU, KAYOKOYUKI and MUJIN-TO Production

 一定の作法と美意識に基づいた茶の湯の文化と現代美術の関連性に着目し、アートコレクティヴ「Triple traveller」が茶会を3日間だけ開催。床の間の設えをインスタレーション、点茶をパフォーマンスと見立てる試みを体験した批評家の大森俊克が、その共通項を分析する。

塚田優評 尾焼津早織「ハイパーフレーミング・コミック」展

尾焼津早織 宇宙人、ひとり。(部分) 2018

 1995年生まれの尾焼津早織は、自らの造語である「ハイパーフレーミング・コミック」という手法を用いた新たな表現を模索している。ページというフレームがない自由なコマ構成による静止画のマンガと、カメラワークを組み合わせた映像作品は、マンガのシステムを問い直し、「読む」という体験の新たな可能性を引き出そうとする。3作品を展示した個展を、視覚文化評論家の塚田優が論じる。

毛利嘉孝評「ティン・リン展」

展示風景より

 反政府活動の容疑で約7年刑務所に収監され、囚われた独房でアート作品を制作し続けたという特異な経験を持つミャンマーの現代美術を代表するアーティスト、ティン・リン。その日本初個展が、銀座メディカルビル1階にあるShinwa ARTEXのギャラリーで開催された。独房内で制作された作品をはじめ、ミャンマーのジェンダー問題をテーマにした作品などが一堂に会した本展を、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授・毛利嘉孝がレビューする。

菅原伸也評「解放され行く人間性 女性アーティストによる作品を中心に」

鷹野隆大 「In My Room」シリーズより《長い髪がピンクの服にかかっている》(2002) ©︎ Ryudai Takano Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 現在、東京国立近代美術館では、洋画家・丸木俊による裸婦像《解放され行く人間性》(1947)に着想を得てセクシャリティを問う展覧会「解放され行く人間性 女性アーティストによる作品を中心に」を開催中だ。時代とともに様々な人間性が徐々に「解放され行く」流れをとらえた本展を、美術批評家の菅原伸也がレビューする。

中尾英恵評「第13回 shiseido art egg:見えない庭 今村文」展

《見えない庭》(2019)の展示風景 撮影=加藤健

「第13回 shiseido art egg」の入選者のひとり、今村文の個展が開催された。今村は、花や植物を主要なモチーフとし、古代エジプトでも使われていた「エンコスティック」という蜜蝋を用いた技法の絵画と、水彩画で描いた植物を切り絵として用いる作品を制作してきた。生命が循環する自然界の一部としての人間を想起させた本展を、小山市立車屋美術館学芸員の中尾英恵が読み解く。

井上幸治評「東京計画2019 vol.2 風間サチコ バベル」展

バベル 2019 和紙、油性インク 130×181cm 撮影=森田兼次 © Sachiko Kazama

 オリンピック開催を来年に控え、画一化・均質化を目指し解体と開発が日々進行される東京。藪前知子がキュレーターを務めるプロジェクト「東京計画2019」では、5組のアーティストがそうした都市のあり方に対する諸問題に言及しつつ、別の可能性の提示を試みる。第2回となる本展は風間サチコ。第15回芸術評論において「風間サチコ論」で入選した井上幸治が、本展のねらいを読みとく。

副田一穂評「黄昏の絵画たち」展

ライオネル・ファイニンガー 夕暮れの海Ⅰ 1927 キャンバスに油彩 愛知県美術館蔵

 黄昏時にうつろう独特の光。17世紀に成立した「風景画」をはじめ、東西の絵画に古来から描かれてきた夕暮れ時の風景の世界をひもとく展覧会「黄昏の絵画たち 近代絵画に描かれた夕日・夕景」が、山梨県立美術館で開催中だ。19世紀から20世紀にかけての西洋と日本の絵画と版画約160点から「黄昏の絵画」をたどる本展を、愛知県美術館学芸員の副田一穂がレビューする。

長谷川新評 「なぜ?ベン・シャーンが見た福竜丸-13点のデッサンと漁師たち」展

展示風景より 撮影=長谷川新

 遠洋マグロ漁船がアメリカ軍による水爆実験で被ばくした「第五福竜丸事件」の資料を保存する第五福竜丸展示館(東京)にて、事件に関するルポルタージュの挿絵などを手がけたアメリカの画家・ベン・シャーンの原画展が開催されている。展覧会を含む館での展示について、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

荒木夏実評 山城大督「パラレル・トラベル」展

Synesthesia Garden 2019 ミクストメディア 上演時間12分30秒 撮影=青地大輔

 宮崎県の高鍋町で、山城大督による展覧会「パラレル・トラベル」が開催中だ。映像と空間における新しい表現を探求してきた山城は、古墳が点在する高鍋町の風景と、そこで過ごした経験や時間にインスピレーションを受け、上演型の新作インスタレーションなどを発表。音楽家の角銅真実をゲストパフォーマーに迎えるなど、様々な試みによって鑑賞者の五感を刺激する本展について、荒木夏実がレビューする。

工藤香澄評「彼女たちは叫ぶ、ささやく─ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」展

会場風景 写真提供=エゴイメ・コレクティヴ

 アーティストの一条美由紀、イトー・ターリ、碓井ゆい、岸かおる、ひらいゆう、松下誠子 、綿引展子、カリン・ピサリコヴァ、キュレーターの小勝禮子からなる「エゴイメ・コレクティヴ」は、ジェンダーやセクシュアリティ、民族間の格差が拡大する社会を、芸術を介して少しずつ変えることを目的に結成。コレクティブとして初の展覧会となった「彼女たちは叫ぶ、ささやく-ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」を横須賀美術館学芸主査の工藤香澄がレビューする。

はがみちこ評 鄭波(ジェン・ボー)「Dao is in Weeds」展

《Pteridophilia 4》(2019)の展示風景 撮影=来田猛 写真提供=京都市立芸術大学

 中国のソーシャリー・エンゲージド・アートの文脈で注目を集める鄭波(ジェン・ボー)の個展が、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)にて開催された。京都市立芸術大学が2023年に移転を予定している崇仁地域のリサーチや、ワークショップをもとにしたインスタレーションを発表した本展について、はがみちこがレビューする。

中村史子評「山沢栄子 私の現代」展

What I Am Doing No. 26 1977 プリント 1986 銀色素漂白方式印画(チバクローム) 57×90cm 大阪中之島美術館蔵

 日本とアメリカを行き来し、1930年代から半世紀以上にわたって日本における女性写真家の草分けとして活躍した山沢栄子。生誕120年を記念した回顧展「山沢栄子 私の現代」が、西宮市大谷記念美術館で開催された。これまで十分な調査、研究が行われてこなかった山沢作品をアメリカ写真史に接続することで読み解こうとする本展を、愛知県美術館学芸員の中村史子が考察する。

藤田直哉評「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」展

会場風景

 2018年4月に惜しまれつつこの世を去った、高畑勲の没後初となる回顧展「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」。「絵を描かない」監督として知られる高畑の半世紀におよぶ仕事を紹介する本展から見える「思想」とはどのようなものなのか? 文芸評論家・藤田直哉が解き明かす。

大岩雄典評 小泉明郎個展「Dreamscapegoatfuck」

Sacrifice 2018 VRインスタレーション © Meiro Koizumi Courtesy of the artist, Annet Gelink Gallery and MUJIN-TO Production

 ドキュメンタリーと演劇的な要素を組み合わせた映像や、鑑賞者の心身に揺さぶりを掛けるような作品をてがける小泉明郎。無人島プロダクションで開催中の個展にて、ヴァーチャル・リアリティ(VR)用ヘッドセットを装着して体験する作品《Sacrifice》が日本初公開されている。同作品に内在する身体を徴集する力について、アーティストの大岩雄典が論じる。

中尾拓哉評 相川勝「Sandy Shores」展

landscape 2019 木製パネルに写真乳剤 49.7✕88.3cm Photo by Akira Matsumoto

 「複製芸術」や「著作権/違法コピ ー」をテーマに、ロックやメタルなどのCDアルバムを肉筆とアカペラにより完全コピーする「CDs」シリーズで知られる相川勝。本展では、ゲーム上の風景やAIが生成した人物といった被写体を、プロジェクターやタブレット端末から発せられる光によって印画した写真作品を発表。現実とシミュレーションのあいだにある「時間」を宿した作品群を、美術評論家の中尾拓哉が読み解く。

gnck評 藤幡正樹展「E.Q.」

展示風景より、藤幡正樹《Eternity of Visions(Edition 3 + AP)》(2019) Photo by Kei Okano

 メディア・アートの先駆者として、つねに視覚をテーマに先鋭的な表現を追求してきた藤幡正樹。その個展「E.Q.」が、銀座の東京画廊+BTAPで開催された。ふたつの新作を通じて、鑑賞者に視ることとイメージの関係について再考を促した本展を、評論家のgnckがレビューする。

きりとりめでる評「齋藤恵汰&堀崎剛志『構造と表面』〜ラテックスと不動産」

会場風景より、堀崎剛志の作品

 都市空間におけるランドアート作品として《渋家》を展開する齋藤恵汰と、コミュニティの中で生まれるアートを地域住民とともにプロジェクトとして実践してきた堀崎剛志による二人展「齋藤恵汰&堀崎剛志『構造と表面』〜ラテックスと不動産」が、東京の駒込倉庫で行われた。本展を批評家のきりとりめでるがレビューする。

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