4月1日から休館が予定されているDIC川村記念美術館。3月12日、今後の美術館運営に関する記者会見が東京・六本木の国際文化会館で行われた。
記者会見では、DIC株式会社と公益財団法人国際文化会館とのアート・建築分野における協業が発表。DICは、DIC川村記念美術館での「作品」「建築」「自然」が融合する体験の継承と、都心での立地におけるインパクト最大化を目指していた。いっぽう、国際文化会館は、民間外交や国際文化交流のパイオニアとして、アートや建築分野での発言力強化を図るため、世界的なアートコレクションを有する協働パートナーを求めていた。この双方の戦略的目標が一致し、今回の協業が実現した。
具体的な協業内容としては、DIC川村記念美術館が所蔵する戦後アメリカ美術をはじめとする20世紀美術品のコレクションが、国際文化会館に移転されることが決まった。とくに、同館を象徴するコレクションのひとつでもあるマーク・ロスコの「シーグラム壁画」7点は、建築ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)によって設計される国際文化会館の新西館に移設され、DICと国際文化会館が共同で運営する常設展示室「ロスコ・ルーム」が開設される。新館の開館は2030年の予定だ。

DIC株式会社 社長執行役員の池田尚志は記者会見で、「私たちの美術館がいかに多くの方々に愛され、大切な存在であるのかを改めて感じました。皆さんの声に応えるべく、営利企業としての本業を基軸としながらも、社会と企業の新しい共生のあり方を求めて鋭意努力してまいります」と話している。
昨年8月に同館の休館が発表されて以来、存続を願う5万6000の署名が同館に寄せられており、直近までに13万人もの来場者を迎えた。この来館者数は例年の4倍の規模となるという。
また今回の協業にあたり、両者はアートと建築の力を活用し、民間外交や国際文化交流を促進する公益プログラムの充実を図る。さらに、大林剛郎(大林組会長、大林財団理事長)や片岡真実(森美術館館長)など、アートや建築の専門家からなる有識者・アドバイザーの協力を得て、より広範な連携を目指していく。