2019.6.1

THE COPY TRAVELERSから高橋臨太郎まで、5月のレビューをプレイバック

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。その中から、5月に公開された10本をピックアップしてお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

「THE COPY TRAVELERSのA室」展示風景より
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中村史子評 THE COPY TRAVELERS 「雲型定規がヤマをはる」「THE COPY TRAVELERSのA室」展

 加納俊輔、迫鉄平、上田良の3作家からなる THE COPY TRAVELERS(コピー・トラベラーズ)は、写真などのイメージを複製やコラージュの手法で再構成するコレクティブである。愛知県美術館学芸員の中村史子が、この2月と4月に連続して催された2つの個展を通して、それらに共通する「女性たちのイメージ」に着目し、彼らの意図を探る。

Sprout Curation(東京)での「雲型定規がヤマをはる」展示風景より、「THE COPY TRAVELERSの組C切り」(2019)

小田原のどか評「自然国家」展

 韓国出身のアーティスト・崔在銀(チェ・ジェウン)による「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」の構想を可視化する展覧会「The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project」が、東京・品川の原美術館で開催されている。朝鮮半島を二つに分断する北緯38度線地帯を舞台としたDreaming of Earth Projectが日本で紹介される意義とは何か? 彫刻家で彫刻研究者の小田原のどかがレビューする。​

展示風景より、中央は崔在銀《To Cal by Name》(2019) 撮影=武藤滋生

​小金沢智評「百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-」

 約3年にわたる休館を経て、今年3月29日にリニューアル・オープンを迎えた東京都現代美術館。そのリニューアル第1弾として6月16日まで開催中の企画展が「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術-」だ。1910年代から現在まで、100年にわたる日本の美術について、編集的な視点で新旧の表現をとらえるとともに、独自の創作を展開した「編み手」である作家たちの実践として、同館コレクションを核に再考するという本展を太田市美術館・図書館学芸員の小金沢智が論じる。

展示風景より、有島生馬《鬼》(1914)

砂山太一評 「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」展

 約40人の建築家・美術家による、20世紀以降のアンビルト(未完)建築に焦点を当てた建築展が国内を巡回中だ。建築の不可能性に着目することで、その潜在力を考察する本展を、建築家・美術家の砂山太一がレビューする。

マーク・フォスター・ゲージ グッゲンハイム・ヘルシンキ美術館(コンピューター・グラフィックス) 2014 Courtesy of Mark Foster Gage Architects

越智雄磨評「荒木悠展:LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ」

 世界各地での滞在制作を通して、文化の伝播や誤訳、その過程で生じる差異や類似などに着目し、社会・歴史を背景にした映像作品を制作してきた荒木悠。そんな荒木の新作展となる個展が、東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催されている。明治期に日本を訪れ、紀行文を残したフランス人作家ピエール・ロティの『秋の日本』と、芥川龍之介の『舞踏会』に着想を得た本展で荒木が見せるものとは? 演劇/ダンス研究者の越智雄磨が読み解く。

展示風景より、《The Last Ball》(2019) 撮影=加藤健

冨山由紀子評「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」展

 宮城県を拠点に、フィールドワークに基づいた写真作品を発表してきた志賀理江子による個展「ヒューマン・スプリング」が東京都写真美術館で開催された。いまを生きる人々の心身の衝動や反動などに焦点をあてた新作写真インスタレーションが提示する問いとは何か。写真研究者の冨山由紀子がレビューする。

会場風景より

中村史子評「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ 日本館『Cosmo-Eggs│宇宙の卵』」

 第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館のタイトルは「Cosmo-Eggs│宇宙の卵」。秋田公立美術大学大学院准教授の服部浩之がキュレーションを行い、美術家の下道基行、作曲家の安野太郎、人類学者の石倉敏明、建築家の能作文徳という異なる領域の専門家のコレクティブが体験の場をつくることを試みる。下道が数年間リサーチと撮影を続けている「津波石」を起点とする本展を、愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。

展示風景 Photo by ArchiBIMIng

大森俊克評「アペルト09 西村有 paragraph」展

山道を走る自動車や郊外の家並み、森のなかを歩く人物など、日常の一断面を描く画家、西村有。どこでもないどこかのような、異世界感をはらむ西村の絵画について、度々論じてきた大森俊克が、金沢21世紀美術館で開催された「アペルト09 西村有 paragraph」を中心に、「地域性」という視点を取り入れ、新たな風景論を展開する。

scenery passing(out of town) 2018 キャンバスに油彩 194×259cm Photo by Keizo Kioku

佐原しおり評 「ミニマリズム-空間、光、そしてオブジェ」展

 ミニマリズムの名を冠した東南アジア初の展覧会として「ミニマリズム - 空間、光、そしてオブジェ」が、シンガポールを代表する2つの美術館、ナショナル・ギャラリー・シンガポールとアートサイエンス・ミュージアムで開催された。ミニマル・アートを代表する作家から再評価されつつある女性作家、そして現代の表現までを取り上げ、ミニマリズムの解釈を拡大させた本展を、埼玉県立近代美術館学芸員の佐原しおりがレビューする。

ヘギュ・ヤン Sol LeWitt Upside Down – Double Modular Cube, Scaled Down 29 Times 2017 © Haegue Yang

大岩雄典評 高橋臨太郎個展「スケールヒア」

 1991年生まれのアーティスト・高橋臨太郎の個展が東京のBLOCK HOUSEで開催された。自身の身体によって空間に働きかけるパフォーマンスや、映像やインスタレーションなどのメディアに物質や身体の限界までエネルギーを加え、「変化する意識」について思考する作品を発表してきた高橋。渋谷と原宿のあいだにあるギャラリーを会場に、東京という土地を自身の身体感覚で「測っていく」ことをテーマにした本展について、気鋭のアーティスト・大岩雄典がレビューする。

《スケールヒア#1》の映像より