「ART OSAKA 2026」開幕レポート。新たな試みがもたらすマーケットの展望とは【2/3ページ】

Expandedセクション 空間の特性を生かした大型展示

 大型作品やインスタレーションを展開する「Expandedセクション」には13組のアーティストが参加。北加賀屋にある4階建ての造船所跡地「クリエイティブセンター大阪」の空間特性を生かした展示が行われている。本セクションは、従来のマーケット構造では扱いづらかった規模の作品に出展の道筋を拓くことで、アートフェアにおける発表や販売のあり方を拡張する取り組みである。

アンチテイル《視線と夢》(2026)ネオン管、ミクストメディア

 1階では、アンチテイル(国谷隆志、はしもとともこ)のインスタレーション《視線と夢》(2026)が展開されている。会場中央にネオン管で矩形の空間を構築し、その内部に立体作品を配置した本作は、2階からの鑑賞も可能であり、視点の変化による見え方の違いを体感できる。

YOD Galleryのブース。宮田彩加の作品が紹介されている

 YOD Galleryからは、宮田彩加の作品が出展されている。宮田は、日常のモチーフにバグを加えることで生まれるイメージを、ミシンを用いた糸の表現によって構築する。鮭をモチーフにした《千鮭万来》(2025)は空間に浮遊するように設置され、表面とは異なる印象を持つ裏面も同時に鑑賞できるようになっている。

AIN SOPH DISPATCHのブース。紹介されている鈴木淳夫は、期間中公開制作を行う

 名古屋を拠点とするAIN SOPH DISPATCHでは、鈴木淳夫の作品を展示。鈴木は、木製パネルに重ねた絵具を彫る「彫る絵画(Carved Painting)」を実践しており、平面でありながら立体的な性質をあわせ持つ作品を制作している。彫るプロセスで生じたピースを用いた立体作品も並び、平面作品との連続性を示した。この凹凸から見出される「表と裏」の関係性を空間全体で表現するため、会場には仮設壁が設置され、その両面に作品を展開。裏面のスペースでは、会期中の4日間にわたり鈴木による公開制作が行われ、その場で制作された作品も販売対象となっている。

Wa.galleryのブース

 大阪のWa.galleryは、兵庫県神戸市を拠点に伝統民家から文化財、現代的な内装までを手がける茅葺き職人でもある相良育弥を紹介。相良は職人としての技術を用いて稲藁などによる作品を制作しており、本フェアでは自身の暮らしを結晶化した新作《名付けられる前の風景》(2026)などを出品。会場には稲藁を用いた大型インスタレーションが立ち現れ、素材の香りが空間に広がっている。

 Wa.galleryの竹井良は、本フェアの独自性について次のように指摘する。「Expandedセクションでは、ホワイトキューブではないスケルトンの空間が会場だからこそ、ギャラリーによる空間づくりやプレゼンテーションを見てもらいやすい。作家や作品の紹介だけでなく、ギャラリーごとの特色や姿勢を見てもらえる機会は、ギャラリーにとって非常に意義がある」。

MUGのブース。村本剛毅《いくつかの媒体/視るもの》(2020〜26)ミクストメディア

 MUGからは、独自の「媒体」を発明・彫刻する実践を通じて「媒介」とは何かを探求する「媒体芸術(メディウムアート)」を手がける村本剛毅が紹介されている。《いくつかの媒体/視るもの》(2020〜26)は、天井から吊るされたLEDディスプレイボードから伸びる光ファイバーの束を通じて、目を瞑った瞼に画像を投影する作品だ。鑑賞者は会場に仰向けに寝転ぶことで本作を体験できる。アートフェアにおいては珍しい実験的な試みである。

TEZUKAYAMA GALLERYのブース。西本剛己《ノア:復活の製図室》(2026)帆布に染色、足場材、回転灯、古い製図台のアーム、木に塗装、化粧板ほか

 4階では、TEZUKAYAMA GALLERYから、西本剛己による全長30メートルに及ぶサイトスペシフィックなインスタレーション《ノア:復活の製図室》(2026)が展開されている。本作は、かつて造船所の製図室であった会場の、床に残る製図跡に着想を得たという。巨大な船を思わせる本作は、1200平米もある空間に浮遊している。素材には船の帆に使われる帆布が用いられ、当時使用されていた製図道具を取り入れた作品も配置されている。

 今回、双方のセクションに参加している同ギャラリーのディレクター・岡田慎平は、それぞれの意義について次のように述べる。「Galleriesセクションは作品販売を中心に行う場。いっぽうExpandedセクションは、普段この広さでは作品を展開する機会の少ない作家の力を存分に示す場となっている。ギャラリーが持つ多様な側面を、プレゼンテーションの方法を変えて提示できる機会となっている」。

 そのほか、FUKUGAN GALLERYとの共催による特別企画も実施。関西のストリートカルチャーの拠点である大阪・心斎橋のアメリカ村に位置する立ち飲み屋「ムラタ酒店」を軸に、その変遷を辿る構成となっている。同会場では9人のアーティストが紹介され、関西のアンダーグラウンドなカルチャーシーンを多面的に検証する機会となっている。

編集部

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