新たな試みがもたらす、今後のマーケットへの視座
本フェアの全体像を振り返るうえで、重要な論点となるのが会場の移転とほかイベントとの連携強化である。ART OSAKAのコ・ディレクターを務める櫻岡聡は、今回の試みとこれからの展望について次のように語る。
「Galleriesセクション」会場を従来の「大阪市中央公会堂(中之島)」から「うめきたエリア」へと移したことについて、櫻岡は「より良い展示環境を求めていたことも移動を決定した理由のひとつ」と説明する。これまでの会場に比べ、新会場は天井高などの物理的な利点がある。会場を遮る柱もなく、通路が広くなったことで会場全体の視認性が向上。空間全体が明るくなったことで、「作品の見え方が変わっていると思う」と、展示環境の変化に対する効果を語る。

また、立地がもたらす波及効果への懸念と期待もある。優れたアクセス性に加え、「うめきた」というアート以外の新しいカルチャーが生まれる領域に集まる層へのアプローチは大きな利点になり得る。北加賀屋会場との2拠点間の距離は離れたものの、移動が発生することでむしろ「大阪という都市の多面性を感じてもらえるきっかけになるのではないか」と櫻岡は付言する。会期中は無料のシャトルバスを運行するなど、アクセス面でのサポート体制も敷かれている。
いっぽうで、歴史的な情緒を湛えた国指定重要文化財である大阪市中央公会堂が会場だったことで、フェアに独自性が生まれていたという声もある。ほかのアートフェアとの差別化という観点において、この「うめきた」への移転が今後どのように作用していくかは、これからの検証課題と言える。
さらに、出展ギャラリーの顔ぶれにおける「ローカリティとグローバル」のバランスも今後の焦点となる。国内外からギャラリーが集結しているとはいえ、海外からの参加はフィリピンと韓国の計4軒に留まり、国内勢も関西圏と東京拠点のギャラリーが大半を占めている。櫻岡は本フェアの根幹を「大阪を含めた関西圏を拠点に活動するギャラリーを中心に取り上げることでローカリティを打ち出していきたい」としつつも、「今後は海外を含め、ほかのエリアで興味深い活動を展開しているギャラリーも積極的に紹介していきたい」と語る。フェアとしてのアイデンティティを保ちながら、いかにして国際的な展開を両立させていくかが、次なるステップへの課題となりそうだ。
加えて、今回は同時期に開催されている「Osaka Art & Design 2026」との連携をより強固なものにするという試みもなされた。大阪市内全体を巻き込んだアートイベントを仕掛けることで、地域社会におけるアートのタッチポイントを増やし、新たな関心層の裾野を広げる狙いがある。
新会場での開催、そして地域連携の深化。今回ART OSAKAが試みた新しいアプローチが、今後の関西のアートマーケットやエコシステムにどのような変化や影響を及ぼしていくのか、その動向を注視していきたい。



















