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ぎこちなく痙攣する映像。大岩雄典評「マジック・ランタン 光と影の映像史」

プロジェクション・マッピングやパブリック・ビューイングなど、近年多様な広がりを見せる「映像」に焦点を当てた展覧会「マジック・ランタン 光と影の映像史」が、10月14日まで東京都写真美術館で開催された。映画の誕生以前に生まれた映像装置や資料、小金沢健人の作品などを通して現代の映像表現を考察するこの展覧会を、美術家の大岩雄典がレビューする。

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絵画を問い、絵画が問う「美術」の在りか。鈴木俊晴評 大塚泰子展「カラープール」

リトグラフやクレパスによるカラフルな色面を空間に構成し、展示室内をリズミカルで心地よい場所へと転換するアーティスト・大塚泰子。新作個展が名古屋の港町にある、元手芸用品店のBotão Galleryで開催中だ。大塚が取り組んだインスタレーションを読み解く手掛かりとは。豊田市美術館学芸員の鈴木俊晴がレビューする。

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渦中の美術家が抱えていた現実。 長谷川新評「時代に生き、時代を超える 板橋区立美術館コレクションの日本近代洋画1920s-1950s」展

現在、群馬県立館林美術館では、関東大震災や金融恐慌、戦争を経験した作家に焦点を当てた展覧会「時代に生き、時代を超える 板橋区立美術館コレクションの日本近代洋画1920s-1950s」が開催されている。渦中を生きた作家たちははどのような現実を抱えていたのだろうか。この問いに対峙することを目指した本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

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資料館でアートを発表したらどうなる? ウールズィー・ジェレミ―評「パープルーム大学附属ミュージアムのヘルスケア」展

梅津庸一が主宰する美術の共同体「パープルーム」が現代美術とそれに隣接する領域に携わっている人々の作品を収集し、茨城県常陸太田市の郷土資料とともに展示する展覧会「パープルーム大学附属ミュージアムのヘルスケア」が、茨城県常陸太田市郷土資料館梅津会館で開催された。この展覧会を、90年代以降の美術批評を専門とする東京藝術大学大学院生のウールズィー・ジェレミ―が読み解く。

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京都芸大資料館収蔵品の声に耳をすます。砂山太一評:田村友一郎「叫び声/Hell Scream」

京都市立芸術大学の150年におよぶ歴史を、同大学芸術資料館のコレクションからたどる「京都市立芸術大学芸術資料館収蔵品活用展」として、田村友一郎による展覧会「叫び声/Hell Scream」が開催された。土地や歴史のリサーチを通して、独自にコンテクストを見出し物語を紡ぐ作風で知られる田村が、本展でみせた手腕とは。同大学特任講師を務め、作家、研究者としても活動する砂山太一が読み解く。

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絵画の廃墟への、画家の愛。 沢山遼評「秋吉風人展 We meet only to part : 逢うは別れ」

7年にわたるベルリンでの生活を経て、今年より名古屋を拠点とする秋吉風人。秋吉は自身の制作において、ルールや偶発性の導入、多様な技法の混合、制作過程の可視化、物質性の強調といった手法を用いながら、絵画を絵画たらしめるものとは何かを問い続けてきた。「個人と個人」「個人と社会」がテーマの新シリーズを発表した個展「We meet only to part : 逢うは別れ」を、美術批評家の沢山遼がレビューする。

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夭折の画家、その軌跡を辿る。黒沢聖覇評「中園孔二展 外縁-見てみたかった景色」

2015年、弱冠25歳でこの世を去った画家・中園孔二。その画業をたどる回顧展「中園孔二展 外縁-見てみたかった景色」が横須賀美術館で開催されている。中園にとって初の美術館個展でもある本展を、第7回モスクワ国際現代美術ビエンナーレでアシスタントキュレーターとして中園作品の展示に携わった東京藝術大学の黒沢聖覇がレビューする。

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アジアのアートアワードの現在を探る。 服部浩之評「APB シグネチャー・アート・プライズ 2018」

世界各地で開催されているアートアワード。シンガポールで、アジア圏内の46の国と地域から113作品がノミネートされる大規模なアートアワード「APB Foundation Signature Art Prize 2018」のファイナリスト展が開催された。本アワードにノミネーターとして参加したインディペンデント・キュレーターの服部浩之が、その内容に迫る。

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全シミュラークル的状況の構築。 長谷川新評 武田雄介展「void」

昨年、金沢21世紀美術館で開催された個展「アペルト06」も記憶に新しい武田雄介。京都のMORI YU GALLERYで現在開催中の個展は、「void」(=無効)と題され、ゲームエンジン「Unity」の世界と物理空間を同一化させるようなアプローチを見せている。その背景にはどのような意図が含まれているのだろうか。インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

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「墓」の中に広がる「作品の死」の多様性。 鷲田めるろ評 エキソニモ + YCAM共同企画展「メディアアートの輪廻転生」

10月28日まで山口情報芸術センター[YCAM]で開催されている「メディアアートの輪廻転生」展。本展はYCAMとアートユニット「エキソニモ」の共同キュレーションによるものとして注目を集めている。各作家が様々な視点でメディア・アートにおける作品の「死」について考えた本展を、国内外でインディペンデント・キュレーターとして活躍する鷲田めるろがレビューする。

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なぜこんなにも藤田は好かれるのか? 蔵屋美香評「没後50年 藤田嗣治展」「1940's フジタ・トリビュート」展

没後50年を迎える今年、藤田嗣治の展示が目白押しだ。そんななか、上野で2つの藤田展がこの夏開催された。国内では過去最大規模となる東京都美術館での藤田展と、藤田の出身校である東京藝術大学でのトリビュート展だ。異なる角度から藤田をとらえた2展示を通して、東京国立近代美術館で2度の藤田展を企画した、同館学芸員の蔵屋美香が「新しい藤田の絵画の魅力」に迫る。

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展示方法が提示する音と映像への没入体験。菅俊一評 「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」

音楽を構造物(アーキテクチャ)ととらえ、コーネリアスによるひとつの楽曲と複数の映像作家らによる「音楽的建築空間」の構築を試みた企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」が六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開かれている。全作品が連動している本展の鑑賞体験を、映像作家、研究者の菅俊一が解読する。

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目に見えるものが真実とは限らない? 副田一穂が見た、原田裕規「心霊写真/マツド」展

今年4月、東京・馬喰町での美術家・原田裕規の個展「心霊写真/ニュージャージー」が注目を集めた。その続編である「心霊写真/マツド」が7月から8月上旬にかけて、名古屋にて開催された。誰もが知るモチーフを取り上げ、議論を喚起する作風が特徴の原田による代表的プロジェクトである本展を、愛知県美術館学芸員の副田一穂が考察する。

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渋谷慶一郎が挑んだ アンドロイド「オルタ2」との共演。 佐々木敦が見た、オペラ『Scary Beauty』

杉本博司、複雑系研究者の池上高志、ロボット学者の石黒浩、パリ・オペラ座・エトワールのジェレミー・ベランガールら、あらゆるジャンルのクリエーターと共同してきた渋谷慶一郎。世界で公演された初音ミク主演のボーカロイド・オペラ『THE END』に次いで、新たに挑戦するのはアンドロイドを指揮者とした新しいオペラの創造。前人未踏というべきこのプロジェクトでどんな試みが行われたのか。佐々木敦が解読する。

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「演劇」以外で演劇をつくる実験。国枝かつらが見た「渚・瞼・カーテン チェルフィッチュの〈映像演劇〉」展

4月〜6月にかけて熊本市現代美術館で開催された、「チェルフィッチュの〈映像演劇〉」展。あらかじめ撮影された役者の演技の映像をプロジェクションで投影し、演劇の上演を行う〈映像演劇〉。岡田利規の発案によるこの美術館での「演劇作品」の上演について、キュレーターの国枝かつらがレビューする。

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102歳まで生きた木版画家。沢山遼が見た、「木版画の神様 平塚運一」

1895年島根県に生まれ、自在で高度な技術をもって80年におよぶ版業を貫いた平塚運一。初期の多色摺から代名詞でもある墨摺版画まで、約300点を通して平塚の活動を回顧する展覧会が千葉市美術館で開催中(7月14日〜9月9日)だ。「木版画の神様」とも称される平塚の作品を、美術批評家の沢山遼がレビューする。

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