
劇場化する東京に息づく、新たなアートの生態系とは。仲山ひふみ評 小宮麻吏奈展「−ATCG」/鈴木操展「open the door, 」/「孤独の地図」展
昨年末、ともに東京で、小宮麻吏奈と鈴木操による個展、そして布施琳太郎のキュレーションによるグループ展が開催された。同世代に属し、ともにコレクティブシーンのなかで活動する彼らの問題意識とその背景をいかに読み解くか。若手批評家の仲山ひふみが横断的にレビューする。

昨年末、ともに東京で、小宮麻吏奈と鈴木操による個展、そして布施琳太郎のキュレーションによるグループ展が開催された。同世代に属し、ともにコレクティブシーンのなかで活動する彼らの問題意識とその背景をいかに読み解くか。若手批評家の仲山ひふみが横断的にレビューする。

平成最後の年に兵庫県立美術館で始まった「Oh!マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」。本展では、昭和から平成にかけて生み出された、社会的関心が色濃く反映された作品の数々を展示。「特別な存在(ヒーロー、カリスマ、正義の味方)」と「無名の人々(公衆、民衆、群集)」という対照的な人間のあり方に焦点を当てた本展を、美術批評家の菅原伸也がレビューする。

ヴィデオ・ゲームの芸術性に注目した展覧会「イン・ア・ゲームスケープ:ヴィデオ・ゲームの風景、リアリティ、物語、自我」 (NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] )と、1991年から2001年までのデジタルゲームに焦点を当てた「あそぶ!ゲーム展 ステージ3:デジタルゲーム ミレニアム」(SKIPシティ映像ミュージアム)を、評論家のgnckがレビュー。ゲームの展示に含まれる「没入」と「反省」という鑑賞体験を手がかりに、2つの展覧会を読み解いていく。

1930年代から名古屋を拠点として活躍した写真家・坂田稔は、当時の前衛写真運動を牽引し、独自の写真論を展開した。30年代末からは民俗学へと至り、「常民」の生活を取材。常設企画展として開催された本展は、これまで知られることのなかった前衛のその後の活動を、遺されたプリントとネガからたどるもの。愛知県美術館学芸員の副田一穂が論じる。

美術手帖では批評家や学芸員などよる展覧会レビューを毎月掲載している。そのなかから、1月に公開された9本をピックアップしてお届け。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

彫刻、写真、ドローイングや、それらの複合的なインスタレーションによって、物事への認識を再考する作品を発表してきた磯谷博史。動かない彫刻や写真を、固定された物体としてではなく、出来事や時間の流れとしてとらえた個展「流れを原型として」が青山|目黒で行われた。磯谷が取り組んだインスタレーションを読み解く手掛かりとは。美術評論家の中尾拓哉が探る。

美術史家・文化資源学研究者の木下直之の「個展」が、東京・東陽町のギャラリーエークワッドで開催されている。美術館学芸員を経て、祭礼や記念碑など社会のあり方と結びつく対象を研究してきた木下。その活動を著書をもとに振り返るユニークな企画を、広島市現代美術館学芸員の松岡剛がレビューする。

写真、映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘するために2002年から毎年開催されている東京都写真美術館の「日本の新進作家」展。第15回展では「小さいながらもたしかなこと」をテーマに、森栄喜、ミヤギフトシ、細倉真弓、石野郁和、河合智子の5名を紹介した。本展のなかでも、とくに印象的な2名の作品に焦点を当て、愛知県美術館学芸員の中村史子が展覧会を読み解く。

昨年で10回目を迎えた「ワルシャワ・アンダー・コンストラクション」展。ワルシャワとキエフの2会場で開催された本展は、移民問題や共産主義の歴史に揺れ動くポーランドの美術と社会のあり様をとらえるものであった。本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

身近な共同体を社会形態の縮図として、映像やパフォーマンス、文章、詩、など多彩なメディアを横断するような作品を発表してきた森栄喜。東京・新宿のKEN NAKAHASHIでの個展では、森が初めて撮影・編集のすべてを手がけた映像作品《Letter to My Son》と、便箋や封筒と写真を組み合わせた7つの作品「Letter to My Son(#1~#7)」を発表した。本展を、美術家の原田裕規がレビューする。

ビビッドな色の壁や照明、椅子やキャビネットなどの日用品を用いて、構成的かつ夢想的な色調のコンポジションをつくり出してきた玉山拓郎。そうしたインスタレーションとリンクするような映像を含め、空間全体をひとつの作品として展示する個展「Dirty Palace」が東京・西麻布のCALM & PUNK GALLERYで行われた。非日常的な空間が展開される本展を美術評論家の中尾拓哉が論じる。

チーフ・キュレーターにクワウテモク・メディナ、共同キュレーターにマリア・ベレン・サエズ・デ・イバッラ、神谷幸江、王慰慰(ワン・ウェイウェイ)を迎え、3月10日まで開催中の「第12回上海ビエンナーレ」。近年の現代美術イベントの多くを「退屈」と評する清水穣が見た、「第12回上海ビエンナーレ」とは。

ものや土地の記憶をもとに、現実と非現実の境界上のイメージを映像により紡ぎだし、幻想的な世界をつくるさわひらき。これまでの映像作品を緩やかに組み合わせ、劇場空間と美術作品をつなぎ、新たな時空間を生み出した。さわの試みを、北出智恵子がレビューする。

歌舞伎町で2週間限定でオープンしたChim↑Pom「にんげんレストラン」と、相模原で行われたパープルームの展覧会「パープルタウンでパープリスム」を椹木野衣がレビュー。2つのイベントとエリアを対比的に読み解く。

訪れた土地や日本で出会う移民たちの故郷の文化や宗教美術、物理学、SNS上の美学などを参照したインスタレーションや絵画を制作しているアーティスト・磯村暖。東京・外苑前のEUKARYOTEでの個展「LOVE NOW」では、同性婚の禁止など「LOVE」が制約される現代における社会通念・パラダイムをアップデートすることを試みた。本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

美術手帖では批評家や学芸員などよる展覧会レビューを毎月掲載している。そのなかから、12月に公開された10本をピックアップしてお届け。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

ストーリーテリングを表現の主軸に置きつつ、彫刻や写真、映像やパフォーマンスなど多様なかたちで活動を行ってきた長坂有希。その最新作を発表する個展「カムイワッカへ、そして私たちの始まりへ」が北海道・札幌のCAI02で開催された。知床半島にあるカムイワッカの滝の存在を知った長坂がこの滝を目指すところから始まる本作を、インディペンデント・キュレーターの服部浩之が読み解く。

独自のモチーフである「クイックターン・ストラクチャー」を軸に作品を展開する大山エンリコイサム。その最新作を発表する個展「Black」が東京・天王洲のTakuro Someya Contemporary Artで開催された。本展では、アメリカ・カンザスのマリアンナ・キストラー・ビーチ美術館で行われた個展「ユビキタス―大山エンリコイサム」(2017)で初披露された新作などを日本初公開。これら新作群について、東京国立近代美術館主任研究員・保坂健二朗が読み解く。

1980年代後半、日本におけるニュー・ペインティングの台頭とともに活動をスタートさせた石川順惠 。その30年にわたる実践を紹介する個展がBlum&Poeで開催された。旧作に加筆することを通じて、画面に新しい絵画的な意味づけを行う「Impermanence(非永続性)」シリーズを中心に構成された本展が問う、新しい絵画構造とは。埼玉県立近代美術館学芸員の梅津元が考察する。

「オナホール」と呼ばれる男性用性玩具の内側の空洞部分を、石膏により採型した立体物を撮影することで、欲望の可視化を試みてきた山本渉。それらのモノクロ等身大プリントと、性玩具のパッケージに描かれるキャラクターを石膏像にプロジェクションした様子を収めたカラープリントを展示した個展が、東京・新宿のユミコチバアソシエイツで12月22日まで開催された。「オナホールの穴から覗くこの10年間の停滞と進展のイメージを目の当たりにしてほしい」と作家が語る本展を、美術批評家の沢山遼がレビューする。