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「ヒスロム 仮設するヒト」展から大山エンリコイサム個展「Black」まで。12月のレビューをプレイバック

美術手帖では批評家や学芸員などよる展覧会レビューを毎月掲載している。そのなかから、12月に公開された10本をピックアップしてお届け。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

「ヒスロム 仮設するヒト」展より

奥脇嵩大評「ヒスロム 仮設するヒト」展

 人々との交流を通して風景や土地を知る「フィールドプレイ」という手法を用いて、10年にわたって活動を続けるヒスロム。他者との関係性のなかから生まれたプロジェクトの数々を、せんだいメディアテークの空間全体を使ったインスタレーションのかたちで表した。同展を通して、即座には理解しがたい彼らの活動の本質を、ヒスロムのプロジェクトを企画したことのある青森県立美術館学芸員の奥脇嵩大が読みとく。

せんだいメディアテークの会場風景 写真提供=内堀義之

副田一穂評 蜜ノ木「くずれる家」展

 三重県伊賀市島ヶ原に暮らす若者たちによるグループ「蜜ノ木」による展覧会が、この秋開催された。本展は、伊賀の美術史、1920年代の地元青年団の活動、伊賀ゆかりの現代美術作家による展示の3つを軸に構成。三重、愛知の学芸員らと協働でリサーチを行うなど、土地の持つ記憶へ独自のアプローチを行う「蜜ノ木」が実施した本展について、愛知県美術館学芸員の副田一穂が論じる。

展示風景より。1950年代に伊賀で開催された公募展「伊賀アンデパンダン展」のフライヤーなど 撮影=林由佳

椹木野衣評 花代展「何じょう物じゃ-あんにゃもんにゃ-」展 

 オリンピックに向けての再開発が急ピッチで進められる東京。アーティストであり、芸妓、ミュージシャン、モデルとしても活動する花代が、新国立競技場の建設現場を望む会場「STUDIO STAFF ONLY」の環境に興味を持ち、その場を反映した作品を制作した。そして、代替わりをしながら神宮外苑に存在してきたという「なんじゃもんじゃの木」がタイトルの着想元となった、花代の個展「何じょう物じゃ-あんにゃもんにゃ-」展を椹木野衣がレビューする。

代展「何じょう物じゃーあんにゃもんにゃー」のための写真。展示会場から新国立競技場を臨む(2018年)

松岡剛評「Shooshie Sulaiman ORGANIZING ABANDON OPEN STUDIO」

 2013年から広島県尾道市で継続的に展開されている、マレーシアのアーティスト、シュシ・スライマンによるアーティスト・イン・レジデンスプログラム「Shooshie Sulaiman ORGANIZING ABANDON OPEN STUDIO」。この地域の廃墟を再生しようとする長期プロジェクトを、広島市現代美術館学芸員の松岡剛がレビューする。

バルコニーが取り付けられたシドラハウス

沢山遼評「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」展

 規則的なパターンを用いた版画や、有機的な形象が特徴的な独自の抽象表現で知られる辰野登恵子の個展「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」展。とりわけ大型の油彩が高く評価されてきた辰野だが、版画やドローイングなど紙の上の表現に光を当て、その画業の再検証を試みる本展から見えてくるものとは何か。美術批評家の沢山遼が論じる。

WORK 80-N-1 1980 紙にシルクスクリーン 撮影=大谷一郎 ©︎辰野剛、平出利恵子

相馬千秋評 小泉明郎 VR作品《サクリファイス》

 ソウルにある韓国国立近現代美術館(MMCA)が主催している「パフォーミング・アーツ・フォーカス」は、アジアのアーティストを招いて作品を委嘱し、紹介するプロジェクトだ。この秋、本プロジェクトにて、韓国、中国、シンガポールのアーティストらとともに、日本人アーティストの小泉明郎が参加。VRを使った映像作品《サクリファイス》を制作・発表した。「シアターコモンズ」ディレクターなど演劇の領域で活動するアートプロデューサーの相馬千秋がレビューする。

会場にて、VR作品《サクリファイス》を体験する参加者の様子 © Meiro Koizumi

沢山遼評 山本渉「欲望の形 /Desired Forms(2012-2017)」展

 「オナホール」と呼ばれる男性用性玩具の内側の空洞部分を、石膏により採型した立体物を撮影することで、欲望の可視化を試みてきた山本渉。それらのモノクロ等身大プリントと、性玩具のパッケージに描かれるキャラクターを石膏像にプロジェクションした様子を収めたカラープリントを展示した個展が、東京・新宿のユミコチバアソシエイツで12月22日まで開催された。「オナホールの穴から覗くこの10年間の停滞と進展のイメージを目の当たりにしてほしい」と作家が語る本展を、美術批評家の沢山遼がレビューする

会場風景 © Wataru Yamamoto Courtesy of Yumiko Chiba Associates

梅津元評「石川順惠
」展

 1980年代後半、日本におけるニュー・ペインティングの台頭とともに活動をスタートさせた石川順惠
。その30年にわたる実践を紹介する個展がBlum&Poeで開催された。旧作に加筆することを通じて、画面に新しい絵画的な意味づけを行う「Impermanence(非永続性)」シリーズを中心に構成された本展が問う、新しい絵画構造とは。埼玉県立近代美術館学芸員の梅津元が考察する。

BLUM & POE(東京)での展示風景 撮影=若林勇人 © Yukie Ishikawa Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/ New York/Tokyo

保坂健二朗評 大山エンリコイサム個展「Black」

独自のモチーフである「クイックターン・ストラクチャー」を軸に作品を展開する大山エンリコイサム。その最新作を発表する個展「Black」が東京・天王洲のTakuro Someya Contemporary Artで開催された。本展では、アメリカ・カンザスのマリアンナ・キストラー・ビーチ美術館で行われた個展「ユビキタス―大山エンリコイサム」(2017)で初披露された新作などを日本初公開された。これら新作群について、東京国立近代美術館主任研究員・保坂健二朗が「書」という観点から読み解いていく。

展示風景より、左から《FFIGURATI #162》(2017)、《FFIGURATI #238》(2018) Photo by Shu Nakagawa © Enrico Isamu Ōyama Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art

服部浩之評 長坂有希個展「カムイワッカへ、そして私たちの始まりへ」

 ストーリーテリングを表現の主軸に置きつつ、彫刻や写真、映像やパフォーマンスなど多様なかたちで活動を行ってきた長坂有希。その最新作を発表する個展「カムイワッカへ、そして私たちの始まりへ」が北海道・札幌のCAI02で開催された。知床半島にあるカムイワッカの滝の存在を知った長坂がこの滝を目指すところから始まる本作を、インディペンデント・キュレーターの服部浩之が読み解く。

CAI02の会場風景

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