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美と知の「還元」空間。森岡書店・森岡督行が見た「それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio」

東京・銀座の資生堂ギャラリーでは2018年10月19日から2019年3月17日にかけて、2期にわたる開廊100周年記念展「それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio」が開催されている。銀座という場所で100年続いてきた同ギャラリーのエッセンスが凝縮された本展を、同じく銀座で森岡書店を営む森岡督行が振り返る。

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仮想現実がつくり出す芸術の可能性と逆説 相馬千秋評 小泉明郎 VR作品《サクリファイス》

ソウルにある韓国国立近現代美術館(MMCA)が主催している「パフォーミング・アーツ・フォーカス」は、アジアのアーティストを招いて作品を委嘱し、紹介するプロジェクトだ。この秋、本プロジェクトにて、韓国、中国、シンガポールのアーティストらとともに、日本人アーティストの小泉明郎が参加。VRを使った映像作品《サクリファイス》を制作・発表した。「シアターコモンズ」ディレクターなど演劇の領域で活動するアートプロデューサーの相馬千秋がレビューする。

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辰野登恵子の絵画はいかに展開したか? 沢山遼が「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」展を読み解く

規則的なパターンを用いた版画や、有機的な形象が特徴的な独自の抽象表現で知られる辰野登恵子の個展「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」が埼玉県立近代美術館で開催中だ。とりわけ大型の油彩が高く評価されてきた辰野だが、版画やドローイングなど紙の上の表現に光を当て、その画業の再検証を試みる本展から見えてくるものとは何か。美術批評家の沢山遼が論じる。

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図書館で石を切り出し、採石場で古書をめくるように。長谷川新評 吉田志穂展「Quarry / ある石の話」

インターネット上に存在する様々な画像と自身が撮影した写真を重ね、新たなイメージを構築してきた写真家の吉田志穂。東京・新宿のユミコチバアソシエイツで行われた個展「Quarry / ある石の話」では、これまで様々な人物によってスケッチ、小説、採掘場の石の欠片、ネット上の画像や考察などで表されてきたにもかかわらず、いまだ事実や史実が明確にされていないある「石」を、写真という手段で表現することを試みた。本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

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すさまじく変化する東京と、その先の石棺。椹木野衣評 花代展「何じょう物じゃ-あんにゃもんにゃ-」展

オリンピックに向けての再開発が急ピッチで進められる東京。アーティストであり、芸妓、ミュージシャン、モデルとしても活動する花代が、新国立競技場の建設現場を望む会場「STUDIO STAFF ONLY」の環境に興味を持ち、その場を反映した作品を制作した。そして、代替わりをしながら神宮外苑に存在してきたという「なんじゃもんじゃの木」がタイトルの着想元となった、花代の個展「何じょう物じゃ-あんにゃもんにゃ-」展を椹木野衣がレビューする。

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消滅した村落を照らす小さな光。副田一穂評 蜜ノ木「くずれる家」展

三重県伊賀市島ヶ原に暮らす若者たちによるグループ「蜜ノ木」による展覧会が、この秋開催された。本展は、伊賀の美術史、1920年代の地元青年団の活動、伊賀ゆかりの現代美術作家による展示の3つを軸に構成。三重、愛知の学芸員らと協働でリサーチを行うなど、土地の持つ記憶へ独自のアプローチを行う「蜜ノ木」が実施した本展について、愛知県美術館学芸員の副田一穂が論じる。

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未来に向けた履歴現象。奥脇嵩大評「ヒスロム 仮設するヒト」展

人々との交流を通して風景や土地を知る「フィールドプレイ」という手法を用いて、10年にわたって活動を続けるヒスロム。他者との関係性のなかから生まれたプロジェクトの数々を、せんだいメディアテークの空間全体を使ったインスタレーションのかたちで表した。同展を通して、即座には理解しがたい彼らの活動の本質を、ヒスロムのプロジェクトを企画したことのある青森県立美術館学芸員の奥脇嵩大が読みとく。

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空間を撹拌する、とめどない線描とムニュムニュ。 松永真太郎評 石田尚志展「絵と窓の間」

1コマずつ線を描いて撮影する「ドローイング・アニメーション」という独自の手法を用いたインスタレーションを手がける映像作家の石田尚志。六本木のタカ・イシイギャラリー東京で行われた個展「絵と窓の間」では、1枚のタブローへの長期にわたる描画行為が、やがて展示空間全体へと波及していく様子を収めた新作を発表した。本展を、横浜美術館主任学芸員の松永真太郎がレビューする。

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画家が対面した、ある画家のテーブルの記憶。桑久保徹評「ピエール・ボナール展」

19世紀末のフランスで、ナビ派の画家として活躍したピエール・ボナールの大規模な回顧展が国立新美術館(東京・六本木)で開催されている。日常の光と色彩を巧みにとらえ、形象を描くことにこだわりを持ち続けたボナールの絵画は、現代でも世界中の作家から愛されている。アーティストの桑久保徹は、ピカソやフェルメールなど尊敬する画家の生涯をひとつの画面のなかに表現する「カレンダーシリーズ」を今年1月に発表し話題となった。その次回作としてボナールの絵にも取り掛かっている桑久保が、ボナールの表現の本質に迫る。

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ナガサキは彫刻家に何をもたらしたのか。小田原のどか評「森淳一 山影」展

水や泡をモチーフとした流動的な木彫や骸の顔を持つ三位一体像をはじめ、近年では人形(ひとがた)の作品も手がけてきた彫刻家・森淳一が、ミヅマアートギャラリーで4年ぶりとなる個展を開催している。森の出身地である長崎の金比羅山をモチーフにした新作を中心に据えた本展から読み解けるものとは何か。彫刻家であり彫刻研究者の小田原のどかが考察する。

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芸術の諸ジャンルが交わる“山のような”芸術祭。小金沢智評 「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018」

東北芸術工科大学が主宰し、今年3回目を迎えた「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」。この芸術祭では、東北の暮らしと地域文化への深い洞察をベースに、現在の山形のあり様を表した作品を展示するとともに、山形の過去と未来に光を当てる創造的なアイデアや協働を「山のように」生み出す芸術祭を目指してきた。この芸術祭がスタートした2014年から全回を見続けてきたという太田市美術館・図書館学芸員の小金沢智がレビューする。

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なぜ《泉》ばかりが注目されるのか? 平芳幸浩評「マルセル・デュシャンと日本美術」展

20世紀の美術にもっとも影響を与え、その後の現代美術史の礎となった芸術家マルセル・デュシャン。その足跡をフィラデルフィア美術館の所蔵品でたどり、さらには日本美術と並べるという展覧会「マルセル・デュシャンと日本美術」が東京国立博物館で開催されている。展覧会構成に対し、様々な意見が上がる本展について、デュシャン研究を専門とする美術史家で京都工芸繊維大准教授の平芳幸浩がレビューする。

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「偽造」し、真価を「奪う」ことで見えてくるものとは? 中尾拓哉評 TENGAone「盲点-blind spot-」展

ストリート・アーティストとして国内外で活動し、近年ギャラリーやフェアへと発表の場を広げているTENGAone。ダンボールという「使い捨て」の素材を「偽造」し、その上に商品パッケージやキャラクターのイメージを描いたシリーズのほか、キャンバスを用いた大作も発表した。同展について、美術評論家の中尾拓哉がその作品のレイヤーをときほぐす。

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剥き出しの技術(テクノロジー)のアクチュアリティ。松井茂評「空白より感得する」展

1980年代初頭からテクノロジーを通じ、自然現象をとらえる先駆的な活動を行ってきたフェリックス・ヘスを20年ぶりに日本に招聘。その思想に共鳴する、世代を超えた作家たちとともにつくりあげた展覧会「空白より感得する」が京都の瑞雲庵で行われた。本展を、詩人で情報科学芸術大学院大学准教授の松井茂がレビューする。

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言葉と美術の豊かな関係。日比野民蓉評「ことばをながめる、ことばとあるく―詩と歌のある風景」展

群馬県太田市の太田市美術館・図書館で開催された「ことばをながめる、ことばとあるく―詩と歌のある風景」展には、詩人・最果タヒやグラフィックデザイナー・祖父江慎をはじめ、文学やデザイン、絵画、イラストレーションの分野から9名の作家が参加した。ひとつの空間内で言葉と美術が垣根を越えて交わった本展について、横浜美術館学芸員の日比野民蓉がレビューする。

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「美術館」で「美術館」を考える。 松岡剛評「〈正・誤・表〉 美術館とそのコレクションをめぐるプログラム」展

9月に新潟市美術館で開催された「〈正・誤・表〉 美術館とそのコレクションをめぐるプログラム」展は、コレクションを中心に紹介しながら、作品を所蔵し、貸し出し、展示するといった美術館の機能それ自体に批評的に切り込む試みであった。美術と美術館をとりまく状況や、その不安定性を主題とした本展を、広島市現代美術館学芸員の松岡剛がレビューする。

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時間と記憶を浮かび上がらせる、映像インスタレーション展。福尾匠評 リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」

現代アジアを代表する作家のひとり、リー・キットが日本の美術館での初個展を原美術館で開催中だ。40年の歴史を持つ同館の時間や光のうつろいに寄り添いながら、絵画、アクリルケースや扇風機といったものと映像とを組み合わせ、連続性のあるインスタレーション空間を生み出した。同展について、映像論を研究する福尾匠が論じる。

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