
「ティーセレモニー」は「茶の湯」にあらず、しかし......。荒木悠評「トム・サックス ティーセレモニー」展
アートの分野のみならず、ファッション界などからも注目を集めるトム・サックス。その日本における美術館初個展「ティーセレモニー」は、大きな評判を呼んでいる。日本の「茶の湯」を換骨奪胎したようなこの展覧会からはユーモアとともにトム・サックスの真剣な眼差しが感じられる。本展とトム・サックスの制作姿勢を、アーティストの荒木悠が解き明かす。

アートの分野のみならず、ファッション界などからも注目を集めるトム・サックス。その日本における美術館初個展「ティーセレモニー」は、大きな評判を呼んでいる。日本の「茶の湯」を換骨奪胎したようなこの展覧会からはユーモアとともにトム・サックスの真剣な眼差しが感じられる。本展とトム・サックスの制作姿勢を、アーティストの荒木悠が解き明かす。

オリンピック開催を来年に控え加速度的に変貌する東京。だがその過程では、都市構造の画一化が進み、人々の行動や生態系にさえ影響を及ぼしている。藪前知子が1年を通してキュレーションする「東京計画2019」は、そうした諸問題にたいして5組の作家が実践を通して、別の可能性を提示する試みだ。その初回となった毒山凡太朗展を、建築家/美術家の秋山佑太が批評する。

自然現象や動植物の姿をモチーフに、木目やひび割れを生かした木彫作品などを制作する若手アーティスト、七搦綾乃(ななからげ・あやの)の個展が、アートギャラリーミヤウチ(広島)で開催された。干からびた野菜や果物、そして布に覆われた人体のような形態を組み合わせた作品群からなる「rainbows edge」シリーズが展開された本展を、広島市現代美術館学芸員の松岡剛がレビューする。

3年に1度、日本のアートシーンの新たな動向を探るシリーズ展として2004年以来開催されてきた「六本木クロッシング」。6回目となる本展は、現代美術の表現に見られる「つながり」に着目。テクノロジーの進化によって生活が便利になるいっぽうで様々な「分断」が顕在化するなか、多様な「つながり」を提示するアーティストの実践から見えてくるものとは。キュレーターの内海潤也が論じる。

近年、ターナー賞にノミネートされるなど国際的な注目を集めるハーヴィン・アンダーソンの日本初個展「They have a mind of their own」が、東京・青山のRAT HOLE GALLERYで開催された。ジャマイカ系イギリス人である自身と、ジャマイカからの移民である両親の世代の記憶を重ね合わせながら絵画を描くアンダーソンの集大成とも言える本展を、20世紀美術史研究を行う南島興がレビューする。

ASSEMBLE(アッセンブル)は、建築、アート、デザインの領域で活躍するアーティストらからなるコレクティブである。今年1月から今年3月にかけて、ASSEMBLEが参加するプロジェクト型の展覧会が東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催された。本展は、資生堂ギャラリー100周年記念展として、同ギャラリーの創設者・福原信三の美学に共鳴する現代の複数のアーティストを招いて企画されたうちの第2弾。ASSEMBLEは、2015年にターナー賞を受賞した「グランビー・ワークショップ」の方法論を銀座で展開した。工房のような展示空間も注目された本展を通じ、建築家の藤村龍至が、アート、建築、社会の関わり方を考察する。

平成から令和へ。その変化の前後に開催された、画家・和田唯奈がキュレーターを務める「しんかぞく」展、ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 第4期の選抜成果展「ホーム・ランド」、写真家・長島有里枝のふたつの展覧会、そして日本在住のマルチメディア・アーティスト、テーム・テムリッツによるパフォーマンス『不産主義』。「家族」をキーワードに、これら5つを椹木野衣が読み解く。

彫刻家ヴィンセント・フェクトーの日本初個展と、加納俊輔、迫鉄平、上田良の3人によるユニット「THE COPY TRAVELERS」による展覧会「雲型定規がヤマをはる」を清水穣がレビュー。オルタナティヴ・モダンの作家としての前者が造形に追い求める自由と、次々とコラージュを生み出す後者の即興、そのあいだに存在する差異とは?

愛知県名古屋市の山下ビルで開催された、中路景暁、髙橋莉子、菊池和晃の3名による超暴力展。「超暴力」という挑発的な造語を冠していながら、本展で展示された3名のパフォーマンスは、それぞれ直接的には暴力と結びつく内容ではなかった。ではいったい何が「超暴力」だったのだろうか? 本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新が論じる。

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。その中から、5月に公開された10本をピックアップしてお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

1991年生まれのアーティスト・高橋臨太郎の個展が東京のBLOCK HOUSEで開催された。自身の身体によって空間に働きかけるパフォーマンスや、映像やインスタレーションなどのメディアに物質や身体の限界までエネルギーを加え、「変化する意識」について思考する作品を発表してきた高橋。渋谷と原宿のあいだにあるギャラリーを会場に、東京という土地を自身の身体感覚で「測っていく」ことをテーマにした本展について、気鋭のアーティスト・大岩雄典がレビューする。

ミニマリズムの名を冠した東南アジア初の展覧会として「ミニマリズム - 空間、光、そしてオブジェ」が、シンガポールを代表する2つの美術館、ナショナル・ギャラリー・シンガポールとアートサイエンス・ミュージアムで開催された。ミニマル・アートを代表する作家から再評価されつつある女性作家、そして現代の表現までを取り上げ、ミニマリズムの解釈を拡大させた本展を、埼玉県立近代美術館学芸員の佐原しおりがレビューする。

山道を走る自動車や郊外の家並み、森のなかを歩く人物など、日常の一断面を描く画家、西村有。どこでもないどこかのような、異世界感をはらむ西村の絵画について、度々論じてきた大森俊克が、金沢21世紀美術館で開催された「アペルト09 西村有 paragraph」を中心に、「地域性」という視点を取り入れ、新たな風景論を展開する。

第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館のタイトルは「Cosmo-Eggs│宇宙の卵」。秋田公立美術大学大学院准教授の服部浩之がキュレーションを行い、美術家の下道基行、作曲家の安野太郎、人類学者の石倉敏明、建築家の能作文徳という異なる領域の専門家のコレクティブが体験の場をつくることを試みる。下道が数年間リサーチと撮影を続けている「津波石」を起点とする本展を、愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。

宮城県を拠点に、フィールドワークに基づいた写真作品を発表してきた志賀理江子による個展「ヒューマン・スプリング」が東京都写真美術館で開催された。いまを生きる人々の心身の衝動や反動などに焦点をあてた新作写真インスタレーションが提示する問いとは何か。写真研究者の冨山由紀子がレビューする。

世界各地での滞在制作を通して、文化の伝播や誤訳、その過程で生じる差異や類似などに着目し、社会・歴史を背景にした映像作品を制作してきた荒木悠。そんな荒木の新作展となる個展が、東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催されている。明治期に日本を訪れ、紀行文を残したフランス人作家ピエール・ロティの『秋の日本』と、芥川龍之介の『舞踏会』に着想を得た本展で荒木が見せるものとは? 演劇/ダンス研究者の越智雄磨が読み解く。

約40人の建築家・美術家による、20世紀以降のアンビルト(未完)建築に焦点を当てた建築展が国内を巡回中だ。建築の不可能性に着目することで、その潜在力を考察する本展を、建築家・美術家の砂山太一がレビューする。

約3年にわたる休館を経て、今年3月29日にリニューアル・オープンを迎えた東京都現代美術館。そのリニューアル第1弾として6月16日まで開催中の企画展が「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術-」だ。1910年代から現在まで、100年にわたる日本の美術について、編集的な視点で新旧の表現をとらえるとともに、独自の創作を展開した「編み手」である作家たちの実践として、同館コレクションを核に再考するという本展を太田市美術館・図書館学芸員の小金沢智が論じる。

韓国出身のアーティスト・崔在銀(チェ・ジェウン)による「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」の構想を可視化する展覧会「The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project」が、東京・品川の原美術館で開催されている。朝鮮半島を二つに分断する北緯38度線地帯を舞台としたDreaming of Earth Projectが日本で紹介される意義とは何か? 彫刻家で彫刻研究者の小田原のどかがレビューする。

加納俊輔、迫鉄平、上田良の3作家からなる THE COPY TRAVELERS(コピー・トラベラーズ)は、写真などのイメージを複製やコラージュの手法で再構成するコレクティブである。愛知県美術館学芸員の中村史子が、この2月と4月に連続して催された2つの個展を通して、それらに共通する「女性たちのイメージ」に着目し、彼らの意図を探る。