REVIEW

「家族アルバム」というフォーマット、それを超える強いつながり。原田裕規評 森栄喜展「Letter to My Son」

身近な共同体を社会形態の縮図として、映像やパフォーマンス、文章、詩、など多彩なメディアを横断するような作品を発表してきた森栄喜。東京・新宿のKEN NAKAHASHIでの個展では、森が初めて撮影・編集のすべてを手がけた映像作品《Letter to My Son》と、便箋や封筒と写真を組み合わせた7つの作品「Letter to My Son(#1~#7)」を発表した。本展を、美術家の原田裕規がレビューする。

2019.1.18

“Dirty”と“Clean”、2つの要素が近接する空間へ。中尾拓哉評 玉山拓郎個展「Dirty Palace」

ビビッドな色の壁や照明、椅子やキャビネットなどの日用品を用いて、構成的かつ夢想的な色調のコンポジションをつくり出してきた玉山拓郎。そうしたインスタレーションとリンクするような映像を含め、空間全体をひとつの作品として展示する個展「Dirty Palace」が東京・西麻布のCALM & PUNK GALLERYで2018年11月27日まで行われた。非日常的な空間が展開される本展を美術評論家の中尾拓哉が論じる。

2019.1.16

我々は夜明け前の酔っ払いにすぎない。清水穣評「第12回上海ビエンナーレ」

チーフ・キュレーターにクワウテモク・メディナ、共同キュレーターにマリア・ベレン・サエズ・デ・イバッラ、神谷幸江、王慰慰(ワン・ウェイウェイ)を迎え、3月10日まで開催中の「第12回上海ビエンナーレ」。近年の現代美術イベントの多くを「退屈」と評する清水穣が見た、「第12回上海ビエンナーレ」とは。

2019.1.15

相容れず遅れあう人々へ、作家が表現する愛。長谷川新評 磯村暖「LOVE NOW」展

訪れた土地や日本で出会う移民たちの故郷の文化や宗教美術、物理学、SNS上の美学などを参照したインスタレーションや絵画を制作しているアーティスト・磯村暖。東京・外苑前のEUKARYOTEでの個展「LOVE NOW」では、同性婚の禁止など「LOVE」が制約される現代における社会通念・パラダイムをアップデートすることを試みた。本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

2019.1.9

人間の根源的欲求を問う物語。服部浩之評 長坂有希個展「カムイワッカへ、そして私たちの始まりへ」

ストーリーテリングを表現の主軸に置きつつ、彫刻や写真、映像やパフォーマンスなど多様なかたちで活動を行ってきた長坂有希。その最新作を発表する個展「カムイワッカへ、そして私たちの始まりへ」が北海道・札幌のCAI02で開催された。知床半島にあるカムイワッカの滝の存在を知った長坂がこの滝を目指すところから始まる本作を、インディペンデント・キュレーターの服部浩之が読み解く。

2018.12.29

新しい書としての絵画。保坂健二朗評 大山エンリコイサム個展「Black」

独自のモチーフである「クイックターン・ストラクチャー」を軸に作品を展開する大山エンリコイサム。その最新作を発表する個展「Black」が東京・天王洲のTakuro Someya Contemporary Artで開催された。本展では、アメリカ・カンザスのマリアンナ・キストラー・ビーチ美術館で行われた個展「ユビキタス―大山エンリコイサム」(2017)で初披露された新作などを日本初公開。これら新作群について、東京国立近代美術館主任研究員・保坂健二朗が読み解く。

2018.12.29

線の群れが織りなす重層的な絵画。 梅津元評「石川順惠
」展

1980年代後半、日本におけるニュー・ペインティングの台頭とともに活動をスタートさせた石川順惠
。その30年にわたる実践を紹介する個展がBlum&Poeで開催された。旧作に加筆することを通じて、画面に新しい絵画的な意味づけを行う「Impermanence(非永続性)」シリーズを中心に構成された本展が問う、新しい絵画構造とは。埼玉県立近代美術館学芸員の梅津元が考察する。

2018.12.28

性玩具が横断する肉体、自然、キャラクター、歴史。沢山遼評 山本渉「欲望の形 /Desired Forms(2012-2017)」展

「オナホール」と呼ばれる男性用性玩具の内側の空洞部分を、石膏により採型した立体物を撮影することで、欲望の可視化を試みてきた山本渉。それらのモノクロ等身大プリントと、性玩具のパッケージに描かれるキャラクターを石膏像にプロジェクションした様子を収めたカラープリントを展示した個展が、東京・新宿のユミコチバアソシエイツで12月22日まで開催された。「オナホールの穴から覗くこの10年間の停滞と進展のイメージを目の当たりにしてほしい」と作家が語る本展を、美術批評家の沢山遼がレビューする。

2018.12.27

美と知の「還元」空間。森岡書店・森岡督行が見た「それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio」

東京・銀座の資生堂ギャラリーでは2018年10月19日から2019年3月17日にかけて、2期にわたる開廊100周年記念展「それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio」が開催されている。銀座という場所で100年続いてきた同ギャラリーのエッセンスが凝縮された本展を、同じく銀座で森岡書店を営む森岡督行が振り返る。

2018.12.27

仮想現実がつくり出す芸術の可能性と逆説 相馬千秋評 小泉明郎 VR作品《サクリファイス》

ソウルにある韓国国立近現代美術館(MMCA)が主催している「パフォーミング・アーツ・フォーカス」は、アジアのアーティストを招いて作品を委嘱し、紹介するプロジェクトだ。この秋、本プロジェクトにて、韓国、中国、シンガポールのアーティストらとともに、日本人アーティストの小泉明郎が参加。VRを使った映像作品《サクリファイス》を制作・発表した。「シアターコモンズ」ディレクターなど演劇の領域で活動するアートプロデューサーの相馬千秋がレビューする。

2018.12.21

辰野登恵子の絵画はいかに展開したか? 沢山遼が「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」展を読み解く

規則的なパターンを用いた版画や、有機的な形象が特徴的な独自の抽象表現で知られる辰野登恵子の個展「辰野登恵子 オン・ペーパーズ」が埼玉県立近代美術館で開催中だ。とりわけ大型の油彩が高く評価されてきた辰野だが、版画やドローイングなど紙の上の表現に光を当て、その画業の再検証を試みる本展から見えてくるものとは何か。美術批評家の沢山遼が論じる。

2018.12.9

図書館で石を切り出し、採石場で古書をめくるように。長谷川新評 吉田志穂展「Quarry / ある石の話」

インターネット上に存在する様々な画像と自身が撮影した写真を重ね、新たなイメージを構築してきた写真家の吉田志穂。東京・新宿のユミコチバアソシエイツで行われた個展「Quarry / ある石の話」では、これまで様々な人物によってスケッチ、小説、採掘場の石の欠片、ネット上の画像や考察などで表されてきたにもかかわらず、いまだ事実や史実が明確にされていないある「石」を、写真という手段で表現することを試みた。本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

2018.12.7

すさまじく変化する東京と、その先の石棺。椹木野衣評 花代展「何じょう物じゃ-あんにゃもんにゃ-」展

オリンピックに向けての再開発が急ピッチで進められる東京。アーティストであり、芸妓、ミュージシャン、モデルとしても活動する花代が、新国立競技場の建設現場を望む会場「STUDIO STAFF ONLY」の環境に興味を持ち、その場を反映した作品を制作した。そして、代替わりをしながら神宮外苑に存在してきたという「なんじゃもんじゃの木」がタイトルの着想元となった、花代の個展「何じょう物じゃ-あんにゃもんにゃ-」展を椹木野衣がレビューする。

2018.12.3

消滅した村落を照らす小さな光。副田一穂評 蜜ノ木「くずれる家」展

三重県伊賀市島ヶ原に暮らす若者たちによるグループ「蜜ノ木」による展覧会が、この秋開催された。本展は、伊賀の美術史、1920年代の地元青年団の活動、伊賀ゆかりの現代美術作家による展示の3つを軸に構成。三重、愛知の学芸員らと協働でリサーチを行うなど、土地の持つ記憶へ独自のアプローチを行う「蜜ノ木」が実施した本展について、愛知県美術館学芸員の副田一穂が論じる。

2018.12.3

未来に向けた履歴現象。奥脇嵩大評「ヒスロム 仮設するヒト」展

人々との交流を通して風景や土地を知る「フィールドプレイ」という手法を用いて、10年にわたって活動を続けるヒスロム。他者との関係性のなかから生まれたプロジェクトの数々を、せんだいメディアテークの空間全体を使ったインスタレーションのかたちで表した。同展を通して、即座には理解しがたい彼らの活動の本質を、ヒスロムのプロジェクトを企画したことのある青森県立美術館学芸員の奥脇嵩大が読みとく。

2018.11.30

空間を撹拌する、とめどない線描とムニュムニュ。 松永真太郎評 石田尚志展「絵と窓の間」

1コマずつ線を描いて撮影する「ドローイング・アニメーション」という独自の手法を用いたインスタレーションを手がける映像作家の石田尚志。六本木のタカ・イシイギャラリー東京で行われた個展「絵と窓の間」では、1枚のタブローへの長期にわたる描画行為が、やがて展示空間全体へと波及していく様子を収めた新作を発表した。本展を、横浜美術館主任学芸員の松永真太郎がレビューする。

2018.11.28