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女性だけのものではないフェミニズムに向けて。高嶋慈評「ぎこちない会話への対応策─第三波フェミニズムの視点で」「フェミニズムズ/FEMINISMS」

金沢21世紀美術館にて、長島有里枝がゲストキュレーターを務める「ぎこちない会話への対応策─第三波フェミニズムの視点で」展と「フェミニズムズ/FEMINISMS」展が同時開催されている。ともにフェミニズムをテーマとした2展について、美術・舞台芸術批評の高嶋慈がレビューする。

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無数の撮り手たちが見せた日本、招いたもの  若山満大評「国際観光写真にみる1930年代」展

1930年頃より日本の観光政策として外国人観光客の誘致宣伝に本格活用されるようになった写真。本展では、JTB旧蔵ストックフォトから82点(すべてモノクロ)を選出し、ニュープリントで展示した。1930年代において、これらの写真はどのように扱われたのか、そしてどのように撮られたのか。東京ステーションギャラリー学芸員の若山満大が、同ストックフォトの来歴をたどりながらひも解く。

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今現在の「日常」とは何か。小金沢智 評「土祭2021 アラワレル、未知ノ日常。」

2009年に窯業と農業の里・栃木県益子町で始まり、今年で第5回目の開催を迎えた「土祭(ヒジサイ)」。行政と住民が協働でつくりあげる、益子の風土に根ざしたこの芸術祭のなかで、益子在住の作家・藤原彩人が「感性の土壌」をテーマにキュレーションしたアート部門の展示を、東北芸術工科大学で教鞭をとるキュレーター・小金沢智がレビューする。

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音楽が聞こえる。山峰潤也評 高田冬彦「LOVE PHANTOM 2」

エロティックな表現や荒唐無稽な物語を折り込みながら映像作品をつくる高田冬彦。WAITINGROOMで行われた個展「LOVE PHANTOM 2」では思春期の少年の性をテーマにした新作映像『The Princess and the Magic Birds』ほか2点の新作を展示した。宗教や神話、性、ジェンダー等のテーマが入り混じった同展を、ANB Tokyoディレクターでキュレーターの山峰潤也がレビューする。

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ニュー・ペインティングの反復が見せるものとは。清水穣評 オスカー・ムリーリョ「geopolitics(manifestations)」展

コロンビア出身のアーティスト、オスカー・ムリーリョは絵画やドローイングをはじめ、彫刻、映像、共同プロジェクトなど多様な手法を用いて制作を行ってきた。タカ・イシイギャラリーで開催された個展「geopolitics(manifestations)」では、様々な要素のコラージュによる力強い新作ペインティングを発表。1980年代のニュー・ペインティングの反復ともとらえられる作品群は現代において何を示唆するのか、清水穣がレビューする。

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内と外のふたつの視点から解読する。中島水緒評 中島りか「I tower over my dead body.」展

代々木駅前にあるギャラリー「TOH」。そこでタロットカードの「塔」をテーマにした「セラピー」型の作品を中心にした中島りかの個展が開催された。代々木駅という立地やタロットカードというキーワードから、美術批評の中島水緒が、展覧会の内側と外側、両方向から見たレビューを展開する。

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「立候補」という行為に泡沫の美を見出す。椹木野衣評 「秋山祐徳太子と東京都知事選挙」展

グリコのランナー姿で走る《ダリコ》など「ポップ・ハプニング」と称するパフォーマンスや、2度にわたる東京都知事選挙への立候補で知られる美術家の秋山祐徳太子。その東京都知事選に関する資料を集めた展覧会「秋山祐徳太子と東京都知事選挙」が、ギャラリー58で開催された。秋山が政治という形式に何を見出したか、そして何を目指したのか、椹木野衣が論じる。

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アーティストのみでつくりあげる芸術祭の行方とは。山本浩貴評「ストレンジャーによろしく」展

開催地を固定しない移動型の芸術祭「ストレンジャーによろしく」。第3回となる今回は金沢市内13ヶ所の商業、公共施設を使って37作家が展示を行った。キュレーターを設けず、若手アーティストのみで展示から運営までを担う同展について、金沢美術工芸大学で講師を務め、同大学生によって運営されたスペース「芸宿」についての私論を雑誌『美術手帖』2021年10月号に寄稿した、山本浩貴がレビューする。

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「あえて」を必要としない世界。中村史子評「鷹野隆大 毎日写真1999-2021」

1998年から毎日欠かさず写真を撮ることを自分に課して、様々な実験的撮影を試み、制度化された眼差しや、写真という媒体の特性とその限界について、考察を重ねてきた写真家・鷹野隆大。その思索の変遷を顧みながら鷹野の実像に迫る展覧会「鷹野隆大 毎日写真1999-2021」を、愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。

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壁に触れたとき橋になるもの。佐藤真実子評「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」展

東京都美術館で開催された「Walls & Bridges」展は、東勝吉、増山たづ子、シルヴィア・ミニオ=パルウエルロ・保田、ズビニェク・セカル、ジョナス・メカスという異なる背景をもつ5人の想像と創造の軌跡を、「記憶」をキーワードにたどるものだった。既存の枠組みにとらわれず、つくられたものに真摯に向き合うことで何が見えてくるのか。アール・ブリュットやアウトサイダー・アートを専門にする、東京都渋谷公園通りギャラリー学芸員・佐藤真実子がレビューする。

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異なる位相にある事象のあいだを流れる絵具の重み。蔵屋美香評 佐々木健「合流点」

アーティスト・佐々木健の個展が鎌倉で開催されている。会場となるのは、祖父母がかつて住んだ家を作家の手によって開いた「五味家(The Kamakura Project)」。本展ではそこに集った人々の痕跡や自身の兄に関連して描いてきた作品が、相模原障害者施設殺傷事件への視点を軸に構成されている。佐々木は絵画、とりわけ油絵具というメディウムによって何を描き出しているのか。横浜美術館館長の蔵屋美香が論じる。

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傍の風景が照射する、複数の時間感覚。黒沢聖覇評 磯谷博史「『さあ、もう行きなさい』鳥は言う『真実も度を越すと人間には耐えられないから』」展

東京・六本木に今年オープンしたSCAI PIRAMIDEにて、日常の素材を組み合わせ、世界をまなざす複数の視点をつくり出す作品で知られる、磯谷博史の個展が開催された。T.S.エリオットの長編詩からタイトルを引用した本展について、キュレーターの黒沢聖覇がレビューする。

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次の10年につながる手がかり。蔵屋美香評「加藤翼 縄張りと島」展

数多くのリサーチやプロジェクトを国内外で展開してきた現代美術作家・加藤翼。その日本初となる美術館個展「縄張りと島」が、初台にある東京オペラシティ アートギャラリーで開催された。加藤の10年にわたるキャリアを概観することとなったこの個展から、横浜美術館館長・蔵屋美香が見出した未来への手がかりとは?

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浮世絵から立ち上がる文化像 若山満大評「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」展

千代田区立日比谷図書文化館の特別展示室にて開催された本展は、江戸時代後期に浮世絵師たちのパトロンとなり、その制作に関与した三谷家コレクションを中心に、当時の様子や制作工程などを紹介した。「うる・つくる・みる」の3つの視点と、豊かな資料や作品群によって構成された浮世絵世界を、東京ステーションギャラリー学芸員の若山がレビューする。

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ポケモンと現実の二重性が再発見させるミュージアムの姿。長谷川新評 「ポケモン化石博物館」

国民的ゲームシリーズ「ポケットモンスター」に登場するポケモンのなかには、カセキから復元されるカセキポケモンがいくつか知られている。そのカセキポケモンと、私たちの世界で発見されてきた実存の化石・古生物を見比べながら、子供から大人まで古生物学について学ぶことができる展覧会が「ポケモン化石博物館」だ。インディペンデントキュレーターの長谷川新は、ポケモンの世界と現実の二重性を示す本展に、ミュージアム固有のポテンシャルを再発見する。

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