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「あえて」を必要としない世界。中村史子評「鷹野隆大 毎日写真1999-2021」

1998年から毎日欠かさず写真を撮ることを自分に課して、様々な実験的撮影を試み、制度化された眼差しや、写真という媒体の特性とその限界について、考察を重ねてきた写真家・鷹野隆大。その思索の変遷を顧みながら鷹野の実像に迫る展覧会「鷹野隆大 毎日写真1999-2021」を、愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。

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壁に触れたとき橋になるもの。佐藤真実子評「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」展

東京都美術館で開催された「Walls & Bridges」展は、東勝吉、増山たづ子、シルヴィア・ミニオ=パルウエルロ・保田、ズビニェク・セカル、ジョナス・メカスという異なる背景をもつ5人の想像と創造の軌跡を、「記憶」をキーワードにたどるものだった。既存の枠組みにとらわれず、つくられたものに真摯に向き合うことで何が見えてくるのか。アール・ブリュットやアウトサイダー・アートを専門にする、東京都渋谷公園通りギャラリー学芸員・佐藤真実子がレビューする。

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異なる位相にある事象のあいだを流れる絵具の重み。蔵屋美香評 佐々木健「合流点」

アーティスト・佐々木健の個展が鎌倉で開催されている。会場となるのは、祖父母がかつて住んだ家を作家の手によって開いた「五味家(The Kamakura Project)」。本展ではそこに集った人々の痕跡や自身の兄に関連して描いてきた作品が、相模原障害者施設殺傷事件への視点を軸に構成されている。佐々木は絵画、とりわけ油絵具というメディウムによって何を描き出しているのか。横浜美術館館長の蔵屋美香が論じる。

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傍の風景が照射する、複数の時間感覚。黒沢聖覇評 磯谷博史「『さあ、もう行きなさい』鳥は言う『真実も度を越すと人間には耐えられないから』」展

東京・六本木に今年オープンしたSCAI PIRAMIDEにて、日常の素材を組み合わせ、世界をまなざす複数の視点をつくり出す作品で知られる、磯谷博史の個展が開催された。T.S.エリオットの長編詩からタイトルを引用した本展について、キュレーターの黒沢聖覇がレビューする。

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次の10年につながる手がかり。蔵屋美香評「加藤翼 縄張りと島」展

数多くのリサーチやプロジェクトを国内外で展開してきた現代美術作家・加藤翼。その日本初となる美術館個展「縄張りと島」が、初台にある東京オペラシティ アートギャラリーで開催された。加藤の10年にわたるキャリアを概観することとなったこの個展から、横浜美術館館長・蔵屋美香が見出した未来への手がかりとは?

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浮世絵から立ち上がる文化像 若山満大評「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」展

千代田区立日比谷図書文化館の特別展示室にて開催された本展は、江戸時代後期に浮世絵師たちのパトロンとなり、その制作に関与した三谷家コレクションを中心に、当時の様子や制作工程などを紹介した。「うる・つくる・みる」の3つの視点と、豊かな資料や作品群によって構成された浮世絵世界を、東京ステーションギャラリー学芸員の若山がレビューする。

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ポケモンと現実の二重性が再発見させるミュージアムの姿。長谷川新評 「ポケモン化石博物館」

国民的ゲームシリーズ「ポケットモンスター」に登場するポケモンのなかには、カセキから復元されるカセキポケモンがいくつか知られている。そのカセキポケモンと、私たちの世界で発見されてきた実存の化石・古生物を見比べながら、子供から大人まで古生物学について学ぶことができる展覧会が「ポケモン化石博物館」だ。インディペンデントキュレーターの長谷川新は、ポケモンの世界と現実の二重性を示す本展に、ミュージアム固有のポテンシャルを再発見する。

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ローカルなものと普遍的なものの接続。清水穣評 ラファエル・ローゼンダール「Calm」展、玉山拓郎個展「Anything will slip off / If cut diagonally」

Takuro Someya Contemporary Artでラファエル・ローゼンダール「Calm」展、ANOMALYで玉山拓郎個展「Anything will slip off / If cut diagonally」がそれぞれ開催された。NFTを用いた作品の第一人者としても知られるローゼンダールと、美術史を創作に直結させる玉山。ふたりの作品に見る個別性と普遍性の新たな接続や交差を清水穣が論じる。

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図案の歴史と作品の同一性、コレクションが照射する問題を考える。横山由季子評「東京美術学校の図案」展、「再演」展

東京藝術大学大学美術館にて、「藝大コレクション展2021 II期 東京美術学校の図案-大戦前の卒業制作を中心に」展と、「再演─指示とその手順」展が同時開催された。異なる角度からコレクションの営みについて扱った2展を、金沢21世紀美術館学芸員の横山由季子がレビューする。

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パンデミック下の「カッティングされた現実」とは。椹木野衣評 「エキシビション・カッティングス」展

ロンドンを拠点にするキュレーター、マチュウ・コプランによる日本初の展覧会 「エキシビション・カッティングス」が、銀座メゾンエルメス フォーラムで開催された。挿し木・接ぎ木、そして文字通り切り抜きや映画の編集を意味する「カッティング」というテーマで構成された本展は、現在のコロナ禍とどのように響き合うのか。椹木野衣がレビューする。

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「翻訳」の不可能性が導く先に。荒井保洋評 「Lost in Translation」展

ポーランド出身のキュレーター、パヴェウ・パフチャレクによる展覧会「Lost in Translation」が、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで開催された。パンデミック下の世界で、様々な文化的背景を持つ作家たちとの対話から生まれた本展はどのような態度を提示したのか。「翻訳」というキーワードを手がかりに、滋賀県立美術館学芸員の荒井保洋が読み解く。

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描かれた風景写真が追い求める「突然の無意味」とは? 中島水緒評 城戸保「駐車空間 / 絵画建築 / 案山子」展

郊外や住宅地などの身近な風景を対象に、鮮やかな色彩や陰影が形づくる構図が印象的な写真家、城戸保。 その4年ぶりとなる個展がHAGIWARA PROJECTSで開催された。絵画画面を思わせるその表現の背後にあるものとは? 美術批評の中島水緒が論じる。

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されど、降雨は呼吸のように。大下裕司評「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」

45歳の若さで逝去したアーティスト・佐藤雅晴(1973〜2019)の活動の全貌を紹介する展覧会「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」が大分県立美術館で開催された。佐藤の代表作《Calling》《東京尾行》《福島尾行》などの映像作品をはじめ、フォトデジタルペインティングやアクリル画などが展示された本展を、大阪中之島美術館学芸員の大下裕司がレビューする。

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オリンピックとアートを通して見えた東京の現在地。五十嵐太郎評 秋山佑太個展「supervision」

建築作業員という視点から、都市や労働をテーマに表現してきた秋山佑太。その個展が東京オリンピック開催時に、新宿・ホワイトハウスとデカメロンで開催された。同時期に都内各所で行われたオリンピック関連企画展とともに、アートを通して見えた都市の現在を、建築史家の五十嵐太郎が評する。

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詩を通じ、近代北海道を生きた人々の生を受け止める。はがみちこ評 高嶺格《歓迎されざる者〜北海道バージョン》

高嶺格による《歓迎されざる者〜北海道バージョン》の上演が、札幌市民交流プラザにて開催された。緊急事態宣言発令の影響によりわずか3日間で会期終了となった本作を、京都を拠点にアート・メディエーターとして活動するはがみちこがレビューする。

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「描く」ことの根源への投企。深川雅文 評 村田峰紀+盛圭太「庭へ」展

ともに多摩美術大学の彫刻学科を卒業した村田峰紀と盛圭太。原初的な「かく」ことに迫る村田と線の起源を「糸」にみる盛、その2人がいま交差することで生まれる表現とはなにか。東京・青山のvoid+で開かれた二人展「庭へ」をインディペンデント・キュレーターの深川雅文がレビューする。

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「X±3秒の世界」に身を置き感じる生と死。保坂健二朗評「玉山拓郎 Anything will slip off / If cut diagonally」展

日用品や家具などのファウンド・オブジェクトを用い制作したスカルプチャーや、映像作品を空間に配置し、鮮烈な照明灯によって絵画的空間をつくり出すアーティスト・玉山拓郎の初となる大規模個展「Anything will slip off / If cut diagonally」が東京・天王洲のANOMALYで開催された。会期終了後も期間限定で再開されるなど、好評を博した本展を滋賀県立美術館ディレクター(館長)の保坂健二朗がレビュー。そこに生と死を見出す。

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