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特別展「線表現の可能性」と「コレクション1 彼女の肖像」(国立国際美術館)開幕レポート。芸術における表現の幅広さ

大阪の国立国際美術館で、特別展「線表現の可能性」と「コレクション1 彼女の肖像」のふたつの展覧会が開幕した。前者では、線という基本的な要素を通じて、芸術における新たな表現の可能性を探る。後者は女性の姿をテーマに、多様な女性像を浮き彫りにする。ふたつの展覧会をレポートする。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術美術」編集部)

特別展「線表現の可能性」の展示風景より、右はヴォルフガング・ティルマンス《フライシュヴィマー(自由な泳ぎ手)79》(2004)

 大阪の国立国際美術館で、11月2日から特別展「線表現の可能性」と「コレクション1 彼女の肖像」というふたつの展覧会が開幕した。

 前者は、線の表現に焦点を当てた作品を通して、線描画の持つ豊かな可能性と表現の多様性を探求するもの。担当学芸員は安来正博(国立国際美術館研究員)。

 過去には下絵やデッサンといった補助的な役割を果たしていた線描画が、20世紀以降、抽象絵画の発展と共に独自の価値を認められるようになり、今日に至るまで新たな表現領域を広げ続けている。本展では、版画や素描を中心に、現代美術における「線」という概念の多様な役割が紹介されている。

 展覧会は4章構成。第1章「線の動き、またはその痕跡」では、画家の手が描く線の痕跡に注目し、多彩な線の表情を紹介している。太く力強い線や細く繊細な線がそれぞれ異なる感情や動きを伝え、作品制作のプロセスに対する興味深い視点を提供している。サイ・トゥオンブリー李禹煥などの作品からは、線がたんなるアウトラインに留まらず、作品全体のダイナミズムや画家の表現意図を巧みに伝える要素であることがうかがえる。

展示風景より、左はサイ・トゥオンブリー《マグダでの10日の待機》(1963)
展示風景より、李禹煥の作品群

 第2章「物語る線たち」では、線が物語を語る道具としての役割を持つことに焦点を当てている。デッサンや下絵としての線が、対象の形態や意味を分節化し、作品に内在する物語を視覚的に伝える力があることを示している。池田龍雄や浜口陽三らの作品を通じて、現実には存在しない輪郭線が観る者に一種の幻想を抱かせ、鑑賞者の心の中で新たな物語が立ち上がる様子が印象深く描かれている。

展示風景より、池田龍雄の作品群

 第3章「直線による構成」では、幾何学的な構成としての直線がテーマである。近代以降の抽象絵画や立体主義などで頻繁に用いられる直線が、線の持つ数学的・構造的な特性を強調し、新たな視覚体験を提供していることがわかる。山田正亮やゲルハルト・リヒターの作品における直線の力強さや精緻さが、鑑賞者に空間や構造の新たな解釈を促す要素として際立っている。

展示風景より、左からは山田正亮《WORK C.96》(1961)、ゲルハルト・リヒター《STRIP (926-6)》(2012)

編集部

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