女性の多様な姿を映し出すコレクション展
いっぽうの「コレクション1 彼女の肖像」展は、同館のコレクション展として初めて「女性像」に注目した企画。担当学芸員は武本彩子(国立国際美術館任期付研究員)。
同館に所蔵する約8200点の作品のうち、女性が描かれた作品は約700点に及ぶが、本展では美人画や伝統的な肖像画などの定番的なカテゴリーを除き、現代ならではの主題や多様な表現方法を通じて女性像を再発見する機会として企画された。作品に登場する女性たちに焦点を当てることで、作家や女性たちの個人の歴史のみならず、女性を取り巻く社会的背景や困難も浮かび上がらせる。
第1章では、「女性像の逸脱と解体」というテーマで、旧来の女性像に付与されてきた従来の役割や受動的なモデルという関係性を逸脱するような作品を紹介。例えば、福田美蘭の実験的な絵画作品《Woman with a Letter》(1991)では、女性像が12の断片に分解され、再び組み合わされる。そのアプローチは、女性の身体やアイデンティティを固定された存在から解放し、流動的で多面的な存在として提示している。
第2章「増殖する女優たち」では、20世紀半ばに国際的なセックスシンボルとして一世を風靡したマリリン・モンローとブリジット・バルドーに焦点を当てる。彼女たちはメディアに頻繁に登場し、芸術作品においてもモチーフとされる。とくにアンディ・ウォーホルによるモンローの作品は、モンローのアイコン化されたイメージを繰り返し表現し、消費社会の象徴と化した彼女の存在を皮肉にも反映している。
第3章「家族の肖像」では、家族の一員としての女性像を描く作品が揃う。母親や娘、妻といった立場から、家族の多様なあり方や人間関係の複雑さを浮かび上がらせる。サニー・キムによる制服姿の女子学生たちの絵画は、母の古い写真をもとに「あり得たかもしれない」物語を構築している。また、木下晋の鉛筆画は、年老いた母親を緻密に描写し、親子の葛藤を乗り越えた先にある親密さを感じさせる。