第4章「線と立体」では、二次元の線が三次元へと展開し、立体的な構成を形成するプロセスを紹介している。彫刻家がエスキースとして用いる線が、立体作品における構造的基盤を担い、二次元と三次元の相互作用が作品全体の意図を浮かび上がらせる様子が見て取れる。植松奎二や宮﨑豊治らの作品を通して、線が持つ立体的な広がりとその構成美を追体験することができる。
これら4つの章に加え、近年亡くなった作家たちの作品を展示する「2020年代の物故作家」特集展示コーナーが設けられている点は特筆すべきだ。
このコーナーでは、2020年代に他界した国内外の重要な作家たちの作品を通じて、20世紀から21世紀へとかけての現代美術の歩みを追うことができる。クリスト、イリヤ・カバコフ、フランク・ステラなどの作品は、それぞれが独自のアプローチで現代美術に新たな価値を付与し、いまもなおその影響が色濃く残っている。また、日本の岡崎和郎や桑山忠明、三島喜美代らの作品は、独自の美的感覚とともに現代美術の多様性を体現している。