20世紀初頭の前衛芸術としての抽象表現と、戦後美術批評に擁護されたアメリカの抽象表現。美術史上の主要な先例であり、代表的動向でもあるこの「抽象芸術」が、近年ヨーロッパとアメリカにおいて再び注目を集めている。
1970年頃のいわゆる絵画の死は、続く時代の端緒となり、80年代以降の美術活動は進歩史的な美術観から解放された。そうした流れのなかで抽象芸術も、80年代以降は過去の美術の様々な概念や手法を活用した、混成的かつ拡張的なものとなった。
新しい抽象芸術が誕生しているいま、80年から今日に至る約40年間のヨーロッパとアメリカの抽象芸術に焦点を当てる展覧会が、大阪の国立国際美術館で開催される。本展は「抽象世界」と題され、80年以前に活動を開始したトマ・アブツやスターリング・ルビー、リチャード・オードリッチをはじめとする歴史的な美術家を含めた13名の抽象作品を、絵画を中心に彫刻も交えて構成される。これまで日本ではあまり紹介されてこなかった美術家の抽象作品も並ぶ本展に期待したい。