2023.9.29

シモン・アンタイ展から山種美術館の「聖地巡礼」、蛭子能収の「最後の展覧会」展まで。今週末に見たい展覧会ベスト10

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

Courtesy Fondation Louis Vuitton, Paris
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森田恭通の視点で見るヴェルサイユ宮殿。「In Praise of Shadows -ヴェルサイユ宮殿 森田恭通写真展」(シャネル・ネクサス・ホール

展示風景より

 森田恭通による個展「In Praise of Shadows -ヴェルサイユ宮殿 森田恭通写真展」が、東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催中。会期は11月5日まで。

 ヴェルサイユ宮殿は、世界でもっとも知られている宮殿のひとつ。1682年に国王ルイ14世によって建設され、ルイ16世の時代にフランス革命が勃発するまで、国王の居城とされ、優雅な宮廷文化の舞台となった。本展は、この宮殿の様々な姿を森田の写真作品によって展覧するものとなっている。レポートはこちら

会期:2023年9月27日〜11月5日
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:無休
料金:無料

エスパス ルイ・ヴィトン大阪で見る、シモン・アンタイの絵画実践。「Folding」(エスパス ルイ・ヴィトン大阪

Courtesy Fondation Louis Vuitton, Paris

 エスパス ルイ・ヴィトン大阪で、同スペース4回目の展覧会を飾る抽象画家シモン・アンタイ(1922〜2008)の回顧展「Folding」が9月28日よりスタートした。会期は2024年2月4日まで。

 今回のエスパス ルイ・ヴィトン大阪での個展は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションより、アンタイがフランスで活躍した1960年代初頭から1980年代にかけて制作した9作品が並ぶもの。アンタイはプリアージュによって8つのシリーズを手がけており、会場ではこのうち3つのシリーズ見ることができる。レポートはこちら

会期:2023年9月28日〜2024年2月4日
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所:大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
電話番号:0120-00-1854 
開館時間:12:00〜20:00 
休館日:ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準ずる 
料金:無料

日本画で描かれた「聖地」を巡る旅へ。「日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」(山種美術館

速水御舟 名樹散椿 1929 重要文化財 紙本金地・彩色 山種美術館 [京都府]

 日本画家たちが実際に訪れ、描いた場所を「聖地」とし、美術館での鑑賞体験を通じて「聖地巡礼」を味わう展覧会「日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」が、東京・広尾の山種美術館で開催される。会期は9月30日~11月26日。

 例えば、速水御舟の《名樹散椿》[重要文化財]は、京都の椿寺地蔵院の名木「五色八重散椿」を描いたものだが、実際の椿の姿と見比べると、その見え方をデザイン的に演出していることがわかる。

 このように作品と現地の比較により、旅の追体験に加えて新たな発見を楽しむことが本展の醍醐味だ。ほかにも、鳴門海峡の渦潮を前に写生を繰り返した奥村土牛の《鳴門》や、定宿から見える京都の町家の光景を描いた東山魁夷の《年暮る》、樹齢1000年以上と言われる福島県三春町の「三春滝桜」を画題とした橋本明治《朝陽桜》などを展示。北海道から沖縄まで、日本各地を主題とした日本画の優品が紹介される。

会期:2023年9月30日〜11月26日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで 
休館日:月(ただし、10月9日は開館)、10月10日 
料金:一般 1400円 / 大学生・高校生 1100円 / 中学生以下無料

国内美術館初となる個展。井田幸昌展「Panta Rhei|パンタ・レイ − 世界が存在する限り」(京都市京セラ美術館

 井田幸昌による国内美術館において初となる個展 「Panta Rhei|パンタ・レイ − 世界が存在する限り」が9月30日より開催される。

 井田は、これまで 「一期一会」をテーマとし、絵画作品を中心に制作してきた。移りゆく時のなかで存在する様々なもの・こと・ひとに出会うことのできる奇跡。その一つひとつを拾い集め、自身の感じたリアリティを日々、画面に残している。

 本展では、国内未発表作を含むこれまでの絵画作品、立体作品に加えて、絵日記のように日々綴る 「End of today」シリーズ、そして最新の作品までを一堂に展示する。

会期:2023年9月30日〜12月3日
会場:京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124 
開館時間:10:00〜18:00 ※最終入場は17:30まで
休館日:月(祝日の場合は開館)
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1500円 / 中学生以下 無料

ピカソやル・コルビュジエらの作品を展示。TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展(WHAT MUSEUM

ヴィルヘルム・サスナル Untitled 2022
© Wilhelm Sasnal, courtesy Sadie Coles HQ, London

 東京・天王洲にあるコレクターズミュージアム「WHAT MUSEUM(ワットミュージアム)」で、TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展が9月30日〜2024年2月25日の会期で開催される。

 TAKEUCHI COLLECTIONは、IT分野で活躍している竹内真(ビジョナル株式会社 取締役CTO)が約5年前から収集を始めた現代アートと家具のコレクション。イヴ・クラインゲルハルト・リヒターといった時代を代表する作家から、ヴィルヘルム・サスナル、ジャデ・ファドジュティミ、加藤泉大山エンリコイサムなど、現在注目を集める作家の作品を家具とともに幅広く収集している。

 本展では、そのコレクションより、国内外のアーティストによる現代アートと、ル・コルビュジエなどがデザインした家具を展示。コレクションのきっかけとなったパブロ・ピカソの作品から竹内が近年魅力を感じている抽象画の作品を中心にした約33点と、シャルロット・ペリアンやピエール・ジャンヌレらがデザインした椅子などの家具約34点が出展される。

会期:2023年9月30日〜2024年2月25日
会場:WHAT MUSEUM 2階
住所:東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号
開館時間:11:00〜18:00(最終入館は17:00まで)
休館日:月(祝日の場合、翌火休館)、年末年始
料金:一般 1500円 / 大学生・専門学生 800円 / 高校生以下無料
※同時開催の展覧会の観覧料を含む
※チケットはオンラインにて事前購入可能

テーマは「Yes in my backyard」。「高井戸芸術祭2023」 (高井戸駅周辺5会場)

トモトシ「ビッグオレンジボックス」video Courtesy of the artist.

 “現代美術”を東京都杉並区の高井戸で体験できる新たなプロジェクト「高井戸芸術祭2023」が、10月1日から14日の期間に京王井の頭線高井戸駅周辺で開催される。

 本芸術祭は、高井戸在住のアートコレクターユニット「THE BLACK FENCE」(黒木健一/柵木頼人)が主催し、所有する約250点の現代アートコレクションのなかから厳選し展示するもの。現代アートを中心とした芸術により「高井戸」を楽しむ地域振興イベントとして、2022年秋にプレ展示を実施し、Alocasia 、喫茶マカボイ、STUDIOVISIT、snip、第六天神社の5会場を中心に、今年正式にスタートする。尚本年は、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【ライフウィズアート助成】の助成対象として実施される。

 展示作家は、アピチャッポン・ウィーラセタクン、玉山拓郎、トモトシ、ミヤギフトシ、毛利悠子、山本篤、ライアン・ガンダー。

会期:2023年10月1日〜14日
会場:高井戸駅周辺5会場(Alocasia 、喫茶マカボイ、STUDIOVISIT、snip、第六天神社)※Alocasia 、第六天神社は土日のみ開場 ※雨天決行 
開館時間:水〜金 19:00〜22:00、土日 13:00〜17:00 
料金:無料 ※STUDIO VISITは平日のみワンドリンクオーダー制(500円〜)

光にまつわる多様な芸術表現を見る。「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」(国立新美術館

展示風景より、オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》(2014)

 テートのコレクションから「光」をテーマに厳選された作品を紹介する展覧会「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」が、東京・六本木の国立新美術館で10月2日まで開催中だ。

 本展は、2021年に開館した浦東美術館の開館記念展として上海で初めて開催された後、ソウル、メルボルン、オークランドで巡回開催されてきたもの。日本は最終会場となり、国立新美術館での開催後、10月末には大阪中之島美術館へと巡回する予定だ。

 会場では、18世紀末から現代までの約200年間に制作された約120点の作品が緩やかな時系列に沿って一堂に公開。また、各章(第3章と第4章を除く)で2000年以降につくられた作品が様々な時代の作品とともに展示されているのも特徴のひとつだ。レポートはこちら

会期:2023年7月12日〜10月2日
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22−2 
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:火 
料金:一般 2200円 / 大学生 1400円 / 高校生1000円

エルマーになった気分で冒険に出発しよう。「エルマーのぼうけん」展(PLAY! MUSEUM

「エルマーのぼうけん」展 展示風景より

 ニューヨーク出身の作家であるルース・S・ガネット(1923〜)が文を、義母のルース・C・ガネット(1896〜1979)が挿絵を手がけた、世界的に有名な物語シリーズ「エルマーのぼうけん」。その原画や資料を、物語の世界観を表現した空間とともに紹介する「エルマーのぼうけん」展が東京・立川のPLAY! MUSEUMで10月1日まで開催している。

 本展では、アメリカ・ミネソタ大学図書館のカーラン・コレクションが所蔵する約130点の原画が日本初公開されるとともに、同シリーズが生み出されるまでのプロセスを知ることができる貴重な制作資料や人形も展示。また、実際に絵本に入り込み、エルマーと同じ目線で冒険をしているかのような、光や音、立体造作による空間演出も注目したいポイントだ。レポートはこちら

会期:2023年7月15日〜10月1日
会場:PLAY! MUSEUM
住所:東京都立川市緑町 3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2階
電話番号:042-518-9625
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 1000円 / 中・小学生 600円 / 未就学児無料

蛭子能収にしか描けない絵を。蛭子能収「最後の展覧会」展(AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMA

 Akio Nagasawa Gallery Aoyamaで開催中の蛭子能収個展「最後の展覧会」展が9月30日で閉幕する。

 蛭子は1947年生まれの漫画家。⻑崎商業高校卒業後に看板店やちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て、26歳で『月刊漫画ガロ』誌上にて漫画家としてデビューした。俳優やタレントとしても活躍し、2020年に認知症であることを公表している。

 本展では「特殊漫画家」根本敬監修のもと、全点描き下ろしの新作を発表する。 根本は、偉大な先輩であった蛭子が「レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の合併症」であることを公表し、仕事がみるみる激減している現状について以下のステートメントを発表している。

 「このまま蛭子さんをフェイドアウトさせてはならない。絵を描くことからスタートした蛭子さんを最後は絵=芸術家として飾ってもえたらと考える人達が少なからずいて、この度の展覧会は企画された。[......] とはいえ、この展覧会へ向けてキャンバスに向かう頃には症状は進み、かつて自らの口から出た『小学生みたいな絵』は『幼児みたいな絵』になっていました。 しかし、くだんの湯村さんの言葉に倣えば『幼児みたいな絵に見えても75歳、認知症の蛭子能収にしか描けない絵』なのだ。どの絵も『生きる』ということが本質的に内包する儚さを突きつけてくるが、それでいて幸せな気持ちにもなるのは企画した私達だけだろうか(一部抜粋)」。

会期:2023年9月7日〜30日
会場:AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMA
住所:東京都港区南青山5-12-3 Noirビル2F
電話番号:03-6427-9611 
開館時間:11:00〜19:00(13:00〜14:00休廊) 
休館日:日月祝
料金:無料

ピカソのゲルニカを同スケールで。フリオ・アナジャ・キャバンディング個展「Wunderkammer」(NANZUKA UNDERGROUND

フリオ・アナジャ・キャバンディング Pablo Picasso. "Guernica" 2023

 NANZUKA UNDERGROUNDで、フリオ・アナジャ・キャバンディング(Julio Anaya Cabanding)の新作個展「Wunderkammer」が10月1日まで開催されている。

 キャバンディングは1987年スペイン、マラガ生まれで、2018年にマラガ大学ファインアート学科を卒業。地元マラガ市内の廃墟や橋の下、港など人があまり立ち寄らないような場所に、美術史上の著名な絵画を引用した細密な絵画をグラフィティとして制作したことで知られている。昨年には、リヨンビエンナーに参加し、テオドール・シャセリオーの名作《オリーブ畑のキリスト》を引用した大作を発表した。

 今回の展覧会タイトル「ヴンダーカンマー(Wunderkammer)」はドイツ語で、日本語では「驚異の部屋」と訳される。近世のヨーロッパの諸侯や貴族のあいだで流行した、出自の異なる珍しい文物をひとつの部屋に集めて展示することだ。キャバンディングは、本展のために恐竜の化石、古代エジプトのミイラ、ピカソやマティス、ゴッホや葛飾北斎、ウォーホルやバスキア、スニーカーから鉄腕アトムのおもちゃ、そして空山基やハビア・カジェハの作品まで縦横無尽に模倣を尽くした作品を制作し、それらをキャビネット方式で陳列してみせる。また、1F展示室ではピカソのゲルニカをオリジナル作品とほぼ同じスケールで描いた作品を展示する。

会期:2023年9月2日〜10月1日
会場:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前3-30-10
電話番号:03-5422-3877
開館時間:11:00〜19:00 
休館日:月火
料金:無料