EXHIBITIONS

フリオ・アナジャ・キャバンディング個展「Wunderkammer」

2023.09.02 - 10.01

フリオ・アナジャ・キャバンディング Pablo Picasso. "Guernica" 2023

 NANZUKA UNDERGROUNDで、フリオ・アナジャ・キャバンディング(Julio Anaya Cabanding)の新作個展「Wunderkammer」が開催されている。

 キャバンディングは1987年スペイン、マラガ生まれ。2018年にマラガ大学ファインアート学科を卒業した。地元マラガ市内の廃墟や橋の下、港など人があまり立ち寄らないような場所に、美術史上の著名な絵画を引用した細密な絵画をグラフィティとして制作したことで知られている。昨年には、リヨンビエンナーに参加し、テオドール・シャセリオーの名作《オリーブ畑のキリスト》を引用した大作を発表した。

 キャバンディングは、廃材のダンボールや石膏ボード、板などを拾い集め、誰もが教科書で知っているような美術作品を捨てられたゴミや荒廃した街の壁に描く。それは、アートを神格化させるシステムへの強烈なカウンターであり、同時にエコシステムのなかで生み出される絵画の最終形態ともとらえることができる。キャバンディングの作品は、アプロプリエーションアートの亜種として説明することが可能であり、さらに美術館と公共空間、 耐久性とアートの価値といったテーマを複合的に見ることができる。

 今回の展覧会タイトル「ヴンダーカンマー(Wunderkammer)」はドイツ語で、日本語では「驚異の部屋」と訳される。近世のヨーロッパの諸侯や貴族のあいだで流行した、出自の異なる珍しい文物をひとつの部屋に集めて展示することだ。キャバンディングは、本展のために恐竜の化石、古代エジプトのミイラ、ピカソやマティス、ゴッホや葛飾北斎、ウォーホルやバスキア、スニーカーから鉄腕アトムのおもちゃ、そして空山基やハビア・カジェハの作品まで縦横無尽に模倣を尽くした作品を制作し、それらをキャビネット方式で陳列してみせる。また、1F展示室ではピカソのゲルニカをオリジナル作品とほぼ同じスケールで描いた作品を展示する。