「観光的な写真ではなく、いままでにないヴェルサイユ宮殿を見せたかった」。そう語る森田恭通による個展「In Praise of Shadows -ヴェルサイユ宮殿 森田恭通写真展」が、東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで始まった。会期は11月5日まで。
ヴェルサイユ宮殿は、言わずと知れた世界でもっとも知られている宮殿のひとつ。1682年に国王ルイ14世によって建設され、ルイ16世の時代にフランス革命が勃発するまで、国王の居城とされ、優雅な宮廷文化の舞台となった。本展は、この宮殿の様々な姿を森田の写真作品によって展覧するものだ。
谷崎潤一郎の同名の随筆にちなんで「In Praise of Shadows(陰翳礼讃)」と題された本展について森田は、「どの時代にも変わらない人間の“光と陰”を写すために、ヴェルサイユ宮殿ほどふさわしい空間は存在しない」とのコメントを寄せている。
![](https://bt.imgix.net/magazine/27853/content/1695714788635_f6a5506efb7f38e765938c22e472bcc0.jpg?auto=format&fm=jpg&w=1920&h=1080&fit=max&v=0)
GLAMOROUS co.,ltd.代表で、インテリアに限らずグラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行っている森田。森田は1年半、14回にもわたりヴェルサイユ宮殿を訪れ、四季によって異なるニュアンスをもたらす陽光にこだわりながら、黄金と光の煌めきに満ちたバロック建築の傑作をモノクロ写真に収めてきた。
なぜそこまでヴェルサイユ宮殿に惹かれるのか? 森田はこう語る。「ヴェルサイユ宮殿は国王が欲望と権力を見せるためにつくった場所だが、結果的にそれが世界中の美を一堂に集めることにもなった。いまのフランスのファッションやアートの礎がそこにあるのではないか」。
![](https://bt.imgix.net/magazine/27853/content/1695715352113_7ed9967fadca37bc6bbaf02b608991a4.jpg?auto=format&fm=jpg&w=1920&h=1080&fit=max&v=0)
![](https://bt.imgix.net/magazine/27853/content/1695715362625_443dedbace53e96c47c18b9dc7220b79.jpg?auto=format&fm=jpg&w=1920&h=1080&fit=max&v=0)
ヴェルサイユ宮殿は、国王が変わるたびにその権力を誇示するように塗り替えられたディテールが絡み合い、層となっている。森田はそうした時代を経るごとにミニマムになっていくデザインを追い続け、噴水の地下に眠る貯水槽やマリーアントワネットが愛した荘厳なオペラ劇場の下に隠された木造構造など、通常は入ることができない舞台裏にも足を踏み入れ、その栄華の痕跡をほぼ自然光で撮影した。
会場に並ぶのは、インテリアデザインも数多く手がける森田ならではの視点で切り取られたヴェルサイユ宮殿のディテール、王室礼拝堂、オペラ劇場、鏡の回廊など、約100点におよぶ作品。会場は「螺旋」を描くような構造になっており、森田にの写真をたどることで迷宮に迷い込むような体験ができるだろう。
![](https://bt.imgix.net/magazine/27853/content/1695715384337_7c4df1b9e049b78ca99f19efd4dca341.jpg?auto=format&fm=jpg&w=1920&h=1080&fit=max&v=0)
![](https://bt.imgix.net/magazine/27853/content/1695715342139_ebb9cd408be365acae0355d4d6095cdb.jpg?auto=format&fm=jpg&w=1920&h=1080&fit=max&v=0)