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線路に沿うように進む鑑賞。若山満大評「会社に運動会があった頃〜一企業が捉えた昭和30年代の街・ひと・くらし」展

東武博物館にて企画写真展「会社に運動会があった頃〜一企業が捉えた昭和30年代の街・ひと・くらし」が2020年9月から11月に開催された。東武鉄道の社内報に掲載するために撮影された写真を中心に、東武鉄道沿線の風景や風俗、人々の暮らしをとらえた60点を展示。その展示スタイルからみえた展覧会のそのもののあり方を、インディペンデント・キュレーターの若山満大が考察する。

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コロナ禍の前から変わらないものとは。荒井保洋評「日日の観察者」展

京都精華大学出身である4名のアーティスト、小出麻代、花岡伸宏、藤野裕美子、松元悠が参加した企画展「日日(にちにち)の観察者」は、日々のささやかな出来事や暮らしの観察から、新たな風景を生み出すというテーマのもと、HOTEL ANTEROOM KYOTO l Gallery 9.5で開催された。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を経験したいま、改めて日常とは何かという思索へと誘う本展について、滋賀県立近代美術館学芸員の荒井保洋が論じる。

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「沖縄の問題」にアートはどうアプローチできるか。山本浩貴評「岡本光博展 オキナワ・ステーキ」

東京・神楽坂のeitoeikoにて、ポップ・アイコンをモチーフとした作品や、風刺的な表現で知られる岡本光博が個展を開催。作家自身がかつて滞在していた「沖縄」をタイトルに据え、米軍基地問題などをテーマとした作品が展示された本展を、文化研究者の山本浩貴がレビューする。

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キャラクター性のある場で作品はいかに振る舞うのか。長谷川祐子評 「生命の庭 8人の現代作家が見つけた小宇宙」

2020年10月から2021年1月にかけて東京都庭園美術館で開催された、青木美歌、淺井裕介、加藤泉、康夏奈、小林正人、佐々木愛、志村信裕、山口啓介が参加した展覧会 「生命の庭 8人の現代作家が見つけた小宇宙」。キュレーターの長谷川祐子が、同展における空間と作品、そして観客との関係性が生み出していたものを論じる。

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「日本写真」は何を語るか。清水穣評「ロバート・フランク ブック&フィルム 1947–2019」展

58年に写真集『アメリカ人』を出版し、ロードムービーのように当時のアメリカ社会を悲壮感とともに映し出した作品で評価を得たロバート・フランク。スイスのヴィンタートゥーア美術館で開催されたその回顧展を出発点に、戦後日本写真の展覧会の限界と今後を清水穣が論じる。

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「リボン」の由来と両者の関係をめぐって。椹木野衣評「クルト・セリグマンと岡本太郎」展

岡本太郎と深い親交を結んだスイス生まれの芸術家、クルト・セリグマン。川崎市岡本太郎美術館で開催された「クルト・セリグマンと岡本太郎」は、岡本の「空間」「リボン」シリーズにセリグマンの影響を探り、両者の友情が戦後の日本美術界にもたらした影響や意義を検証する展覧会だ。岡本の作品に登場する「リボン」をきっかけとして、本展を椹木野衣がレビューする。

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展示空間で「私」を存続できるか。 佐原しおり評 関優花「私をばらばらに説明する」

長時間にわたり、ある身体的な行為を繰り返すパフォーマンスを展開してきた関優花。その個展「私をばらばらに説明する」が、約2年ぶりの再始動となるノマドギャラリー「ナオナカムラ」で開催された。展示空間内において、「私」という個人を「女性」「パフォーマー」「アーティスト」といった単純な属性にカテゴライズされず表現することは可能だろうか。本展を埼玉県立近代美術館学芸員の佐原しおりがレビューする。

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科学と芸術の連携から生まれる創造的転回。四方幸子評「村山悟郎 Painting Folding」展

現代の生命科学論的な思索にもとづき、コンピュータ・シミュレーションによって生まれる自己組織的なプロセスやパターンを作品のモチーフとする村山悟郎。本展では代表作の織物絵画を展開させ、たんぱく質のフォールディングにおける、3次元構造が折りたたまれる生成過程を参照した新作を発表した。キュレーターの四方幸子が新たな展開を中心に読み解く。

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その憧れは「正しい」のか? 中川千恵子評 荒木悠《密月旅行》(「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」)

ポーラ美術館の「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」は、日本とフランスという2国間の芸術交流をテーマにした展覧会だ。同館の収蔵作品約80点に国内外からの借用作品約50点を加え、大量のモノや情報、人の往来が可能となった時代に培われてきた双方の芸術を検証する同展。ここでは展覧会の導入部に展示された荒木悠の作品を軸に、展覧会のテーマ全体を考察する。

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「悪い場所」が抱える可能性を見つめ直す。山本浩貴評「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2019」

美術批評家の椹木野衣が企画・監修するグループ展「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2019」が、京都市京セラ美術館で開催されている。平成日本の美術史をアーティストグループの活動から振り返る本展を、文化研究者の山本浩貴がレビューする。

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価値観の過渡期に、世界との新たな関係性をひらく。田村かのこ評「第14回 shiseido art egg:ふとうめい な 繋がり 藤田クレア」

東京・銀座の資生堂ギャラリーにて、同社による公募プログラム「shiseido art egg」の入選者のひとり、藤田クレアによる個展が開催された。様々な素材を組み合わせたインスタレーションにより、世界における差異やコミュニケーションのあり方を想起させる作家による試みを、アート・トランスレーターの田村かのこがレビューする。

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作品は共生のための「メディア」となりうるか。清水穣評 泉太郎「ex」展

2017年以降国内外での発表が相次ぐ泉太郎が、2020年9月にスイス・バーゼルのティンゲリー美術館で個展「ex」を開催。本展は、ネットワーク社会における「クラウド=雲」をテーマとした新作を軸に行われた。タイトルにも冠された「ex」をキーワードに、アーティストのキャリア、そしてその作品を貫く態度について清水穣が論じる。

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芸術祭の「ディスタンス」をめぐる試み。椹木野衣評「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2020」「さどの島銀河芸術祭プロジェクト2020」

コロナ禍のなか、全面的にオンラインで開催された「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2020」と、佐渡島内の複数箇所で行われ来年本開催を予定する「さどの島銀河芸術祭プロジェクト2020」。「現代山形考〜藻が湖伝説〜」といったプロジェクトを含む前者と、PCR検査を導入したライヴなどを開催した後者のあいだの共通点とは何か? 椹木野衣がレビューする。

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「翻訳」に潜む摩擦や欲望をいかにとらえるか。大岩雄典評「トランスレーションズ」展

「翻訳」をコミュニケーションのデザインとしてとらえ、情報学研究の立場からドミニク・チェンが企画した本展。「互いに異なる背景をもつ『わかりあえない』もの同士が意思疎通を図るためのプロセス」としての翻訳の可能性を考えようとする挑戦的な内容を、物語論や言語哲学への関心を軸として制作する、アーティストの大岩雄典がレビューする。

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コレクション展の可能性を開く。小金沢智評「芦屋の時間 大コレクション展」

3月に開館30周年を迎える芦屋市立美術博物館が、2020年9月から11月にコレクション展を開催した。30年の歩みのなかで収集してきたコレクションの全作家126名の作品群から、本展の企画協力者である福永信が選出し、学芸員が展示構成した約190点。同館をかたちづくる膨大な作品群と鑑賞者が対峙する空間において、本展ではどのような工夫がなされたのか? キュレーターの小金沢智がレビューする。

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