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2021.4.8

「カタルシスの岸辺」からドライブイン展覧会まで、3月のレビューをプレイバック

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、3月に公開された全16本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

「類比の鏡/ The Analogical Mirrors」より、車内からの展示風景 撮影=前谷開
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荒井保洋評「日日の観察者」展(HOTEL ANTEROOM KYOTO l Gallery 9.5)

藤野裕美子 ちぐはぐな接点 2020 麻紙に岩絵具、水干絵具、胡粉、染型、木製枠 撮影=松見拓也 画像提供=京都精華大学

 京都精華大学出身である4名のアーティスト、小出麻代、花岡伸宏、藤野裕美子、松元悠が参加した企画展「日日(にちにち)の観察者」は、日々のささやかな出来事や暮らしの観察から、新たな風景を生み出すというテーマのもと、HOTEL ANTEROOM KYOTO l Gallery 9.5で開催された。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を経験したいま、改めて日常とは何かという思索へと誘う本展について、滋賀県立近代美術館学芸員の荒井保洋が論じる。
 

稲垣貴士評「バシェ音響彫刻 特別企画展」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)

桂フォーン 撮影=来田猛 提供=京都市立芸術大学

 1970年の大阪万博においてフランソワ・バシェが来日して制作した「バシェ音響彫刻」が、2020年11月~12月に京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAにて5基が展示。2010年より開始した修復・復元プロジェクトとあわせて紹介された。映像作家の稲垣貴士がレビューする。
 

若山満大評「会社に運動会があった頃~一企業が捉えた昭和30年代の街・ひと・くらし」展(東武博物館)

展示風景 提供=東武博物館

 東武博物館にて企画写真展「会社に運動会があった頃~一企業が捉えた昭和30年代の街・ひと・くらし」が2020年9月から11月に開催された。東武鉄道の社内報に掲載するために撮影された写真を中心に、東武鉄道沿線の風景や風俗、人々の暮らしをとらえた60点を展示。その展示スタイルからみえた展覧会のそのもののあり方を、インディペンデント・キュレーターの若山満大が考察する。
 

中島水緒評 諏訪未知個展「3つの世界」(KAYOKOYUKI)

展示風景 撮影=岡野圭 Courtesy of the artist and KAYOKOYUKI

 身の回りにある物事や現象を掬い取り、絵画空間に再構築する諏訪未知。KAYOKOYUKIにて開催された個展「3つの世界」で展開された、統一されたフォーマットによる抽象絵画の作品世界を、美術批評家の中島水緒がレビューする。
 

gnck評 山内祥太「第二のテクスチュア(感触)」(TOH)

展示風景より、《カオ1》と《向かい合うトルソ》 撮影=竹村晃一

 アーティストの山内祥太は、VRや3DCGなどの映像技術と自身の身体イメージ、粘土彫刻を組み合わせながら独自の表現を展開してきた。新作個展「第二のテクスチュア(感触)」では、マンガ家・諸星大二郎の「カオカオ様が通る」から影響を受けて書き起こしたという、顔にまつわる短編物語をもとにしたインスタレーションを披露。作家の新展開を予感させた本展を、評論家のgnckがレビューする。
 

小田原のどか評 カタルシスの岸辺「光光DEPO」(EUKARYOTE)

「光光DEPO」に並んだマテリアルの数々

 2017年の結成以来、若手美術家たちによる実験的な活動を展開してきたコレクティブ「カタルシスの岸辺」。「マテリアルショップ」を自称する彼らが昨年、東京・神宮前のEUKARYOTEで行った実店舗プロジェクト「光光DEPO」から見えたその本質とは何か? 小田原のどかがレビューする。
 

飯岡陸評 良知暁「シボレート / schibboleth」展(space dike)

《ráɪt》(2020)の展示風景

 「投票」を軸とする広範なリサーチをもとに、表象や制度をめぐる政治性を考察してきた良知暁。その約10年ぶりとなる個展がspace dikeにて開催された。ある一節を起点とした本展の試みを、キュレーターの飯岡陸がひもとく。
 

布施琳太郎評「サイバーフェミニズム・インデックス」展

サイバーフェミニズム・インデックス」展ウェブページのスクリーンショット。
リストアップした事例がひとつのPDFにまとめられ、ダウンロード可能な状態となる

 本展は、デザイナー/研究者のミンディ・セウとニューミュージアムの共同によって開催されているオンライン展覧会。1990年以降のサイバーフェミニズムのプロジェクト、ソース、参考文献をひとつのサイト上に収集・引用し、展示する。昨今のオンライン展覧会・アーカイヴにおいて、われわれはどのような態度が必要とされるのか。本展を通し、アーティストの布施琳太郎が論じる。
 

中村史子評 ドライブイン展覧会「類比の鏡/ The Analogical Mirrors」(山中suplex)

木村舜 存在 2020 布生地、木材、ペンキ、ラッカースプレー、音声データ(19分56秒) サイズ可変 撮影=前谷開

 本展は、滋賀県・比叡山の中腹に位置するシェアスタジオ「山中suplex」にて2020年11~12月に開催された。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、鑑賞者を車から降ろさず、感染対策を徹底したドライブイン形式を採用。日没後のみに展開される車中からの鑑賞は、どのような目論見を備えているのか? 愛知県美術館学芸員・中村史子が論じる。
 

内海潤也評「MOTアニュアル2020 透明な力たち」展(東京都現代美術館)

Goh Uozumi 《New Economic War》(2020)の展示風景 撮影=木奥惠三

 東京都現代美術館にて1999年より、日本の若手作家によるテーマ展として毎年開催される「MOTアニュアル」。第16回を迎える今回は「透明な力たち」をテーマに、バイオ・アートやソフトウェア・アート、インタラクティブ性や参加型を含むプロジェクトなど、社会や自然のなかの不可視なエネルギーをモチーフとする作品で構成。時代の一側面を切り取ってきた同企画の試みを、キュレーターの内海潤也がレビューする。
 

副田一穂評「Cliff Edge Project」

松岡大 I am her 2021 撮影=都築透

 伊豆市にて、同地の地質的特徴や歴史に向き合うプロジェクト「Cliff Edge Project 躍動する山河」が開催された。遺跡や神社など象徴的な場を舞台に展開されたこの展覧会を、愛知県美術館学芸員の副田一穂がレビューする。
 

山峰潤也評「スクリプカリウ落合安奈 越境する祝福」展(埼玉県立近代美術館)

《Blessing beyond the borders》(2019)の展示風景 Photo by Masanobu Nishino

 同時代に活躍する作家を紹介するプログラムとして、2016年より埼玉県立近代美術館で企画される「アーティスト・プロジェクト」。その5回目の個展に選ばれたスクリプカリウ落合安奈は、リサーチをベースに、土地に遺る記憶や信仰などをテーマに、異なる時空間にあるものを結びつける作品を手がける。近作4点で構成された小展について、ANB Tokyoディレクターでキュレーターの山峰潤也がレビューする。
 

李庸宇評「梁慧圭(ヤン・ヘギュ) O₂ & H₂O」展(韓国国立現代美術館ソウル館)

展示風景より、《DMZ非行》(2020) グラフィック協力=Yena Yoo Photo by Cheolki Hong, MMCA, Korea.

 ヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ13などの大型国際展に招待されてきた韓国のアーティスト、梁慧圭(ヤン・ヘギュ)。その大規模な個展「O₂ & H₂O」が韓国国立現代美術館ソウル館で開催された。無形の経験や感覚をアートの抽象的な言語で置換する本展で、作家はどのような問いを投げているのか? 韓国西江大学トランスナショナル人文研究所研究教授の李庸宇が考察する(このヤン・ヘギュ展のレビューは、ヤン・ヘギュの図録『O₂&H₂O』(2021)に掲載した「メランコリアの還流:ヤン・ヘギュの空気と水(Melancholic Reflux: Air and Water of Haegue Yang)」(ソウル,現実文化研究,2021)から部分的に抜粋および、修正した内容である)。
 

福尾匠評 大和田俊個展「破裂 OK ひろがり」(小山市立車屋美術館)

展示風景より、《小屋》(2020)、《Unearth》(2016) 写真=百頭たけし

 人間の身体や知覚と時間の関係について考察する作品を制作する大和田俊。その個展「破裂 OK ひろがり」が、栃木県の小山市立車屋美術館で開催された。体内の破裂音が響く展示空間や、風景のなかに突如現れる「ポンプ小屋」で展示された作品《Unearth》において、音の「必然性」はどのように提示されたのか。現代フランス哲学、 芸術学、映像論を専門とする福尾匠がレビューする。

太田光海評 上村洋一+黒沢聖覇「冷たき熱帯、熱き流氷」展(トーキョーアーツアンドスペース本郷)

展示風景 撮影=高橋健治 画像提供=Tokyo Arts and Space

北海道オホーツク海など、自然環境のフィールドレコーディングを中心とする作品制作を行う上村洋一。キュラトリアル実践を通して近年の新しいエコロジー観と現代美術の関係性を研究し、作品制作も行う黒沢聖覇。トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の企画公募プログラム「OPEN SITE」では、新たな環境観を志向する2人の共同制作プロジェクトとして「冷たき熱帯、熱き流氷」展を開催した。上村は知床半島、黒沢はアマゾン熱帯雨林と、対照的な極点へ赴いた経験から生み出された本展について、自身もアマゾン熱帯雨林での調査経験を持つ映像作家、文化人類学者の太田光海が論じる。
 

 石川卓磨評「千葉正也個展」(東京オペラシティ アートギャラリー)

展示風景 © 千葉正也 Courtesy of ShugoArts 撮影=武藤滋生

 東京・八王子エリアを拠点に活動し、国内外で活躍する千葉正也の大規模な個展が、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている。千葉は、紙粘土や木片で人型のオブジェを制作し、身の回りの品々とともに周到に配置した仮設の風景をつくったうえでそれを絵画化するという代表的な手法を中心に、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど様々な方法を用いて作品を発表する。自身の絵画作品をダイナミックに配置し、様々なオブジェクトや生きたカメをも共存させる展示空間をつくりあげた本展を機に、その絵画やペインターとしての独自性を、美術家、美術批評の石川卓磨が論じる。