東博がレストランのリニューアルを必要とする理由
東博はなぜこれほど思い切った食空間の刷新を必要としたのか。その構想の裏側と今後の展望について、今回の3店舗のリニューアルを主導した、同館総務部付部長兼総務課長の尾野浩康に話を聞いた。
──「東京国立博物館2038ビジョン」(本館竣工100周年を迎える2038年を見据え、「日本と世界をつなげる博物館」「みんなが来たくなる博物館」などの将来像を掲げるこの構想)の一環として今回のリニューアルが行われたと伺いました。背景にはどのような課題があったのでしょうか。
尾野 以前のレストランも長くお客様には受け入れられていましたが、内装や雰囲気に古さもありました。多様化する来館者のニーズや博物館に期待される役割の変化を踏まえると、これからは世界の人々にも喜んでもらい、認知・評価される博物館を目指す必要があります。ひいては、ビジョンを実現させるために思い切った刷新を行いました。
──法隆寺宝物館の「鮨会席 おく乃」はこれまでの国立博物館のレストランのイメージを覆す高級路線です。この狙いはどこにあるのでしょうか。
尾野 非常にチャレンジングな取り組みですが、日本の歴史や文化を「五感」を使って体験していただける場にしたいという思いがあります。海外からのお客様を含め、ただ「文化財を見る場所」というだけでなく、日本の食文化を通じて日本を知る一端を味わっていただき、優雅な時間を過ごせるラグジュアリーな空間を提供したいとも考えました。食事をしに行く場所にとどまらず、博物館全体を味わっていただくための施設にしたいと思っています。
──レストランが「付属物」ではなく、鑑賞体験と強く結びついているのですね。
尾野 そうですね。例えば、江戸時代の展示に合わせて江戸時代風の食べ物を特別に出してみて、昔のイメージを膨らませてもらうなど、何かしらの「驚き」をこの場で体験していただきたいですね。
──ミュージアムをこれから先も持続させていくための、重要な接点になりそうです。
尾野 小さなお子様から若い世代の方々に、どのようにミュージアムに親しんでいただけるかが重要です。若い世代に気軽に来ていただかないと、結果的に博物館は廃れてしまい、文化財を守れなくなってしまいます。「カフェの雰囲気が良さそうだから」と、散歩やデートの目的で寄っていただくだけでもいいので、まずは東博を認識し、少しでも我々に触れていただきたいですね。館内に入ったときに「外とは何か違うぞ」という空気感を演出し、展示室だけでなく館全体の環境整備を行うことで、皆さんがより来やすい場所になっていくと考えています。



















