東京・上野の東京国立博物館。その広大な敷地には、本館や表慶館、東洋館、平成館、法隆寺宝物館など、それぞれ異なる時代の建築が点在している。ここに、新たな「食」の場が加わる。東京国立博物館では、館内にあった3つの飲食施設を刷新。8月28日には東洋館別棟1階の「THE RESTAURANT 東京国立博物館」と、その向かいに位置する「ガーデンカフェ」が営業を開始する。さらに9月30日には、法隆寺宝物館1階に「鮨会席 おく乃」が開業する予定だ。3店舗はいずれもオークス株式会社が運営し、空間デザイナー・料理研究家で東京国立博物館アンバサダーの行正り香が監修に携わった。
今回のリニューアルで興味深いのは、飲食施設がただ休憩や食事のための付帯施設ではなく、展示鑑賞を含めた博物館体験そのものの一部として位置づけられている点だ。
「鑑賞の余韻」を受け止めるレストラン
今回、報道陣に公開されたのが、東洋館別棟1階に位置する「THE RESTAURANT 東京国立博物館」だ。東洋館は、1968年に開館した谷口吉郎設計の建築。中国、朝鮮半島、東南アジア、インド、エジプトなどアジア各地の美術・工芸・考古遺物を展示するこの建物に隣接するかたちで、レストランが設けられている。

新しいレストランが掲げるコンセプトは、「観覧の余韻を感じる場所」。空間はグレーを基調とし、過度に装飾するのではなく、抑制の効いたミニマルな雰囲気でまとめられている。展示室から出たあと、次の予定へとすぐ移動するのではなく、いったん腰を落ち着け、見てきたものを思い返す。そんな時間を受け止める場として設計されていることがうかがえる。

座席は店内94席、テラス44席。東京国立博物館という場所柄、ひとりで展覧会を見に来た来館者から、家族連れ、海外からの観光客まで幅広い利用者を想定した規模だ。金曜・土曜などの夜間開館日には20時まで営業する。
メニューにも、「東京国立博物館で食べる」という体験を意識したものが並ぶ。代表的なのが「東博御膳」(3800円)。このほか「東博カツサンド」(1500円)や「薬味冷やしうどん」(1500円)など、しっかりとした食事から比較的軽めのメニューまで用意されているのが嬉しい。


重要なのは、料理の豪華さだけではないだろう。美術館や博物館では、作品を見る行為そのものに注目が集まりがちだ。しかし実際の鑑賞体験には、展示室に入るまでの移動や、鑑賞後に誰かと感想を話す時間、あるいはひとりで作品について考える時間までが含まれている。「観覧の余韻」という言葉は、そうした展示室の「外側」にある時間にも、博物館が意識的に目を向けようとしていることを示しているように思える。



























