ノルウェーを代表する画家のひとり、ニコライ・アストルップの日本初となる大回顧展が開催

東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで、ノルウェーを代表する画家のひとり、ニコライ・アストルップ(1880〜1928)の日本初となる大回顧展「ニコライ・アストルップ 創造する庭」が開催される。会期は11月21日〜2027年1月31日。

ニコライ・アストルップ《ジギタリス》(1920頃)DNB貯蓄銀行財団/コーデ・ベルゲン美術館 Photo: Dag Fosse / Kode

 東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで、ノルウェーを代表する画家のひとり、ニコライ・アストルップ(1880〜1928)の回顧展「ニコライ・アストルップ 創造する庭」が開催される。会期は11月21日〜2027年1月31日。

 長らく世界的な紹介機会が限られていたアストルップだが、20世紀初頭のノルウェーでもっとも傑出した画家のひとりとして、2010年代半ば以降、国際的な再評価を得ている。日本での初の大規模回顧展となる本展では、油彩画をはじめ、独自の発展を遂げた木版画、さらに母親との協働によるテキスタイルデザインまで、その画業の全貌を紐解く内容となる。

自然と暮らしに根ざした「大地」の画家

 ニコライ・アストルップは1880年、ノルウェー西海岸のブレマンゲル生まれ。幼少期に移り住んだ西ノルウェーの湖畔の村・ヨルステル(現・スンフィヨルド)のオールフースにある牧師館で育ち、生涯の大半をこの地で過ごした。オスロやパリで絵画を学んだのち、故郷へ戻ったアストルップは「自分はおそらくこの国で最も大地に根ざした画家」と語ったように、厳しい山々に囲まれた風土や四季の移ろい、人々の生活風景を描き続けた。

 豊かな色彩感覚と表現豊かなデフォルメによって、現実に根ざした情景を象徴的な世界へと昇華させたアストルップ。その創作の源泉となったのが、自ら植物の栽培と実験を重ねた庭であった。また、日本の浮世絵版画にインスピレーションを受けつつ、木版と油彩をかけ合わせた実験的な技法を開拓した異色の版画家としても知られている。

日本での初の大回顧展

 本展は、北欧美術において圧倒的な名声を誇るエドヴァルド・ムンク(1863〜1944)の17歳年下に生まれたアストルップの真価を日本で初めて提示する機会となる。ノルウェー国内での高い知名度に反し国際的な展開は遅れていたが、近年欧米での巡回展を経て急加速した再評価の波を受け、代表作を一堂に集めた大回顧展が実現する。

 展示空間では、アストルップ作品の核でありメタファーでもあった「庭」を巡るような鑑賞体験を生み出す。幼少期を過ごしたオールフースの庭や、自ら切り開いたサンダルストランの庭を描いた作品群を通じ、ムンクも賞賛したとされる豊かな「緑」の色彩を表現。現地で撮影された四季の映像も交え、臨場感あふれる空間を演出する。

ニコライ・アストルップ《石の上の鳥》(1905〜14) DNB貯蓄銀行財団/コーデ・ベルゲン美術館 Photo: Dag Fosse / Kode
ニコライ・アストルップ《花咲くリンゴの木》(1926〜27) DNB貯蓄銀行財団/コーデ・ベルゲン美術館 Photo: Dag Fosse / Kode
ニコライ・アストルップ《ルバーブ》(1911〜21) DNB貯蓄銀行財団/コーデ・ベルゲン美術館 Photo: Dag Fosse / Kode
ニコライ・アストルップ《大きな青い壺のある室内》(1921〜22) 個人蔵 Photo: Thomas Widerberg

 また、アストルップの独創性を語るうえで欠かせない型破りな版画技法にも焦点を当てる。キャンバス上での版木の摺りと手描きの併用など、1点ごとに表情が異なる唯一無二の表現について、実際の「版木」や油彩画とともに並べることでその創造の源泉をひも解く。さらに、地域の織物作家であった母親との協働によるテキスタイル作品も紹介し、幼少期から手仕事の芸術に囲まれて育った家庭環境が、画業に与えた影響までを多角的に検証していく。

 なお、会期初日には、本展監修者のスサンナ・ペッテルソン(フィンランド文化財団理事長)、トーヴェ・ハウグスボー(コーデ・ベルゲン美術館シニア・キュレーター)、そして日本の巡回館担当学芸員を迎え、日本で初めて本格的に紹介されるアストルップの芸術を多角的な視点から掘り下げる開幕記念シンポジウムも開催される。また同展は、山口、愛知、神奈川に巡回する予定だ。

編集部