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「風間サチコ展:方丈ルームの1000里眼」(弘前れんが倉庫美術館)開幕レポート。過去・現在・未来を見通し、人間の本性を描く21世紀のロマン主義作家【2/3ページ】

風間の代表的な木版画が一堂に

 弘前れんが倉庫美術館は、その名の通り赤煉瓦造りの外壁を持つが、展示室はかつての酒造工場時代の名残で、コールタールが塗られた黒い壁面となっている。このほの暗い空間に、黒一色で刷られた作品の数々が並ぶ。近代化する社会のなかで生じる不穏な違和感を出発点とする風間は、綿密なリサーチと、その過程で芽生えた自身の感情を織り交ぜることによって、圧倒的な情報量を持つ画面を生み出している。

黒部ダム建設の歴史がもととなった「クロベゴルド」シリーズ
「ニュー松島」シリーズより、中央は《ニュー松島(千貫島)》(2022)

 ここでは、個展「風間サチコ展 -コンクリート組曲-」(黒部市美術館、2019)に合わせて制作された「クロベゴルド」シリーズや、「Reborn-Art Festival 2021-22」(石巻市、2022)で発表された「ニュー松島」シリーズ、同じく石巻市で展示され、その後に続編が制作された大型木版画「FLOW」シリーズなどがずらりと並ぶ。新作の油彩画と同様、風間が様々な土地に赴き、独自の関心やリサーチを反映させて作品を生み出してきた軌跡が浮かび上がる。

風間にとって最大規模の大きさを誇る《ディスリンピック2680》(2018)
手前は《風雲13号地》(2005)。風間が初めて手がけた巨大な木版画であり、制作の方向性という観点からも転機となった作品でもある

 また、風間の真骨頂とも言えるのが、巨大な木版画作品だ。展示室の突き当たりには 、風間にとって過去最大規模を誇る《ディスリンピック2680》(2018)を展示。制作当時は2020年に開催予定だった「東京オリンピック」と、1940年に開催予定だったものの戦争のために⾒送られた幻のオリンピックを重ね合わせた、皮肉とユーモアあふれる傑作だ。

 ほかにも、お台場の臨海副都心計画と戦艦「大和」のイメージを掛け合わせた初期の作品《風雲13号地》(2005)や、東⽇本⼤震災と福島第⼀原⼦⼒発電所事故をきっかけに制作された《噫(ああ)!怒涛の閉塞艦》(2012)、そして自身の不登校や引きこもり時代の葛藤を出発点とし、「社会が求める正しさ」に対して疑問を呈す《第⼀次幻惑⼤戦》(2017)などが一堂に会しており、その作家活動を通覧できる。

休憩スペースに設置された、風間によるマンガ作品『ディスリンピック2680』(2018)

 さらに、《ディスリンピック2680》の手前に広がる休憩スペースには、同作の背景を描いた風間によるマンガ作品も展示。「ぜひくつろぎながら鑑賞してほしい」という作家の言葉通り、じっくりと読み込める空間になっている。

編集部