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「櫃田伸也-通り過ぎた風景」(豊田市美術館)開幕レポート。風景を描くとはどういうことなのか

愛知県豊田市の豊田市美術館で、画家・櫃田伸也(ひつだ・のぶや)の個展「櫃田伸也-通り過ぎた風景」が開幕した。会期は6月21日まで。会場をレポートする。

文・撮影=安原真広(編集部)

作品と対峙するとき、かならずほかの作品も目に入るような立体的に展示が試みられている

 愛知県豊田市の豊田市美術館で、画家・櫃田伸也(ひつだ・のぶや)の個展「櫃田伸也-通り過ぎた風景」が開幕した。会期は6月21日まで。担当は同館学芸員の鈴木俊晴。

 櫃田伸也は1941年東京都生まれ。東京藝術大学大学院を修了後、愛知県立芸術大学や東京藝術大学で長年教鞭を執り、奈良美智杉戸洋をはじめとする後進の作家たちに影響を与えた。2009年には愛知県美術館と名古屋市美術館の2館で「放課後のはらっぱ櫃田伸也とその教え子たち」を開催。その画業は、1960年代の初期作から今日に至るまで、一貫して「風景」と「絵画」のあり方を問い直すものとなっている。

《タイトル不明》(2019-)。自然光が入る展示室3に展示されており、原色の色彩がより際立つ

 本展は櫃田の美術館個展としては約15年ぶりとなり、2008年に開催された東京都現代美術館および国立国際美術館の巡回展以来となる。会場では1960年代の初期作品から2026年の最新作まで、約120点の作品を一堂に展観。さらに初公開となる資料を交え、櫃田の歩みを網羅的に振り返る。

作品も展示も立体的に

 展覧会は高い天井を持つ2階の第1展示室から始まる。ここでは櫃田が3歳のときに描いた線画から2020年代の作品までを展示し、その画業の全体を見通そうという試みが行われている。壁面のみならず、展示室の中央には格子で組まれた棚が円状にしつらえらえ、そこに立て掛けるような什器を使い作品が配置されている。会場デザインはSTUDIO大 / おどり場が手がけた。

展示室に対して斜めに配された格子が平面作品を立体的に体感できる空間を創出している
右が初期作品《花模様のある部屋》(1965)。風景に傾倒する以前の人物と思わしきモチーフが見て取れる作品

 櫃田は一貫して「風景画」を描いてきたとされている。高い写実の技術による風景は、次第に抽象度を増し、やがて「山水」を志向した観念的な要素が加わるようになる。本展示室では櫃田が志向してきた「風景」がどのように変遷したのか、そのなかで何が受け継がれてきたのかを、時系列に依らない横断的な鑑賞体験によって捉える場となっている。

櫃田によるNHK美術部の撮影セットの設計図
のちに櫃田にとって重要なキーワードとなる「山水」と関連するであろう櫃田所蔵の資料

 こうした鑑賞を下支えするように、棚には櫃田の制作を知るうえでの手がかりになり得るドローイングや写真をはじめとした資料が展示されている。母子手帳に描かれた幼少期の線画、アカデミックな絵画の素養を身につけた東京藝術大学時代、NHKに就職し美術部撮影のセットを制作していた頃の設計図、愛知県立芸術大学で教鞭をとっていた頃の写真など。そして櫃田が作品制作の土台としていた、雑誌や図録のスクラップは、櫃田の絵画の構成がいかにつくられたのかを知る一助になるだろう。

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