画家・櫃田伸也の個展「罪なき理性 -blame not on reasons」と、櫃田に影響を受けた作家たちによるグループ展「その先へ -beyond the reasons」が、東京・駒込のKAYOKOYUKIおよび駒込倉庫で同時開催される。
櫃田伸也(ひつだ・のぶや)は1941年東京都生まれ、66年に東京藝術大学美術学部大学院を修了。NHK美術部でデザイナーとしての勤務を経て、75年から愛知県立芸術大学で、2001年から09年まで東京藝術大学で教鞭を執った。
櫃田が制作の出発点とするのは、空き地、水路、フェンス、コンクリートの壁など、ありふれた身の回りの風景だ。幼少期を多摩川土手の斜面や広場で過ごし、その後も街を歩き回って見ることを積み重ねた経験は、その絵画の原点と言えるもの。櫃田は風景を「通り過ぎる」あるいは「通り過ぎた」ものとしてとらえ、様々な場所や時間のブリコラージュによって描こうとしている。
画家としてだけでなく、教育者としても高い評価を得る櫃田。09年には「放課後のはらっぱ―櫃田伸也とその教え子たち―」展(愛知県美術館、名古屋市美術館)が開催され、奈良美智、杉戸洋、村瀬恭子、長谷川繁など、国内外のアートシーンで目覚ましい活躍を見せる愛知県立芸術大学の教え子たちとの影響関係が取り上げられた。
今回、櫃田の個展「罪なき理性」にあわせて開催される「その先へ」では、愛知ではなく主に東京で櫃田に出会い、その一言やふるまいに影響を受けた作家たちによる新作と初期作品を織り交ぜて紹介する。参加作家は稲田翔平、岩永忠すけ、O JUN、大田黒衣美、大庭大介、奥村雄樹、川角岳大、國宗浩之、KOURYOU、杉戸洋、田幡浩一、西村有、長谷川繁、櫃田珠実、松田修、村瀬恭子。
櫃田の作品とともに、孤独と向き合いながら表現するその姿から「その先へ」向かう作家たちの、様々な実践を見ることができる今回の2つの展覧会。異なるフィールドから立ち上がる軌跡が交差する会場は、櫃田の描く線や色面と共鳴してひとつの風景をつくり出すことだろう。