
抜け殻となった物たちに見る戦後日本の姿。清水穣評 桑原正彦「heavenly peach」展
1990年代後半から一貫して人間の欲望による環境の変化に着目し、動物やおもちゃ、風景、少女などをモチーフとする絵画作品を制作してきた桑原正彦。小山登美夫ギャラリーでは1997年以来12回目となる個展「heavenly peach」を、清水穣がレビューする。

1990年代後半から一貫して人間の欲望による環境の変化に着目し、動物やおもちゃ、風景、少女などをモチーフとする絵画作品を制作してきた桑原正彦。小山登美夫ギャラリーでは1997年以来12回目となる個展「heavenly peach」を、清水穣がレビューする。

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、10月に公開された全10本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

今夏開催された、「芸術競技」「Body is not Antibody」というふたつの展覧会の共通項として「作業員の死」を見出した美術家の布施琳太郎。林道郎による、ボードリヤール『象徴交換と死』を論じた書物から、「アナグラム」「供養」といったキーワードを抽出し、それぞれの作品について、原発や東京オリンピックの背後に浮き上がる「死」の存在を結びつけながら論じる。

社会と密接につながり、時代の精神や思想を映し出す「イラストレーション」。中世の彩飾写本や16世紀の世界地図、現代のポスターまでが一堂に会した「イラストレーションがあれば、」は、イラストレーションを多角的に考察した展覧会であった。「イラスト」という略語が社会に浸透した日本において、イラストレーションの原理とは何か? その豊かさをキュレーターの小金沢智が論じる。

新型コロナウイルスによる開幕延期を乗り越え、10月17日から開催されている「さいたま国際芸術祭2020」。「花」をテーマに、オンラインとオンサイトで展開されているこの芸術祭を、橋本麻里がレビューする。

8月に開催された本展は東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト2020の一環として、11人の女性アーティストが参加。荒木夏実によるキュレーションのもと、性や種、場所や時代を超越した新たな関係性を探求し、表現によって浮かび上がらせることを試みた。本展について、高嶋慈がレビューする。

日本民藝館(東京)にて、アイヌ民族の工芸品を紹介する展覧会が開催されている。文化や民族の多様性とその重要性が再考されるなかで、周縁化されてきた少数民族の営みをどう見るべきか。文化研究者の山本浩貴がレビューする。

現在、広島は「ヒロシマ」が掲げた平和を探り直すように街全体が生まれ変わろうとしている。広島県立美術館では、「夏の所蔵作品展 サマーミュージアム 戦後75周年特集」と「日常の光−写し出された広島」を同時開催。前者では1945年8月6日をめぐる表象を紹介し、後者では戦後から現代へ移り変わるなかでの同県出身の写真家たちの視線をたどった。両展を、キュレーターの檜山真有がレビューする。

アート界でもジェンダーバランスや性の多様性に注目が高まるなか、東京藝術大学大学美術館 陳列館では、女性アーティストのみ11名による展覧会「彼女たちは歌う Listen to Her Song」が開催された。会期終了後もウェブマガジンというかたちで続いている本展は、何を訴えるのか? 小田原のどかが論じる。

練馬区立美術館の開館35周年を記念し、近代洋画や日本画などの所蔵作品と、現代美術作家がそれらから着想して制作した新作のコラボレーション展が開催された。本展について、金沢21世紀美術館学芸員の横山由季子がレビューする。

グラフィティやストリートアートに精通した独自の視点で表現を仕掛け続けるDIEGO。東京・外苑前のワタリウム美術館地下にあるミュージアムショップ、オン・サンデーズで開催された個展「ALways Secret OK」は、店舗の至るところに作品が仕掛けられた。同展でDIEGOはいかなる「遊び場」をつくり上げたのか、アーティストでインディペンデントキュレーターの石毛健太が論じる。

水戸芸術館 現代美術ギャラリーにて、人と環境のつながりを考える 「道草展:未知とともに歩む」開催されている。植物や自然をテーマとする6組が参加する本展について、文化研究者の山本浩貴がレビューする。

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、9月に公開された全11本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

2020年のリニューアルオープンにあわせ、京都市京セラ美術館にて開催された開館記念展「京都の美術 250年の夢 最初の一歩:コレクションの原点」と題した本展では、同館の歩みを振り返るとともに、コレクションの原点となる所蔵作品47点を一挙に展示した。「最初の一歩」はいかに踏み出されたのか? インディペンデント・キュレーター若山満大がレビューする。

メキシコ・ティファナとデュッセルドルフを拠点に、長く核の問題をテーマとして活動してきたアーティスト竹田信平が、今夏長崎にて被爆者の「声」を使ったプロジェクト「声紋源場」の公開制作とパフォーマンスを行った。プロジェクトの過程を見てきた長崎県美術館学芸員の松久保修平がレビューする。

風景や自然物をモチーフに、生命の循環をとらえてきた写真家・川内倫子。新作『as it is』は、自身の出産から約3年間におよび、子供の成長していく姿や身近な風景を写した写真集だ。本書の出版を記念した個展について、環境人文学を専門とする哲学者・篠原雅武が論じる。

明治から平成にかけての版画の名作約300点により、日本の近現代を振り返る展覧会が福島県立美術館にて開催された。これまで日本の美術の歴史を語るうえであまり光が当てられることのなかった「版画」を文脈として、地方から見えるもうひとつの近現代日本美術史を編み直す。版画表現の歴史を振り返りながら、キュレーターの小金沢智が本展をレビューする。

イタリア・ミラノを拠点に活動する廣瀬智央の個展がアーツ前橋にて開催された。1997年に発表した、約3万個のレモンを用いる《レモンプロジェクト 03》のほか、イタリア渡航以後に発表した初期作品や国内未発表作品、そして新作を含めた約100点でこれまでの廣瀬の活動を展覧。本展を、アーティストのAKI INOMATAがレビューする。

建築、デザイン、写真など様々な分野を横断する造形学校としてドイツに誕生し、その後ナチスの迫害を受けてわずか14年で閉校したバウハウス。その創設100年を記念して、2019年から全国で「バウハウス100年映画祭」が開催されている。ラースロー・モホイ=ナジの生涯を追った上映作品『ニュー・バウハウス』を中心に、バウハウスにおける芸術教育のあり方から見えるものを画家・永瀬恭一が論じる。

現実世界を舞台に見立て、空虚に感じるその理由に迫ろうとした「Big Brother is Watching you」で「1_WALL」のグランプリを獲得したRyu Ika(劉怡嘉)の受賞展がガーディアン・ガーデンにて開催された。内モンゴルで生まれ育ったRyuの作品世界で表される、イメージのなかで生きる私たちについて、キュレーターの飯岡陸がレビューする。