沖縄のアーティストが向き合う「いま」と、それをかたちづくる「過去」。伊藤貴弘評「作家と現在」
沖縄県立博物館・美術館で、沖縄出身のアーティスト4名によるグループ展が開催された。それぞれの問題意識で同地をまなざす作品を通じて、歴史と現代のとらえ方を浮かび上がらせた本展を、東京都写真美術館学芸員の伊藤貴弘が論じる。
沖縄県立博物館・美術館で、沖縄出身のアーティスト4名によるグループ展が開催された。それぞれの問題意識で同地をまなざす作品を通じて、歴史と現代のとらえ方を浮かび上がらせた本展を、東京都写真美術館学芸員の伊藤貴弘が論じる。
大阪府が所蔵する、20世紀後半の国内外の美術作品約7900点からなる「大阪府20世紀美術コレクション」の活用を目的として、若手アーティストに作品の選定と自作の発表を依頼する企画。第2弾となる今回は、写真家の麥生田兵吾(むぎゅうだ・ひょうご)が招聘された。美術批評家の高嶋慈がレビューする。
空間そのものを変容させるサイトスペシフィックなインスタレーションなどを手がける現代アートチーム・目【mé】。昨年末に開催され、大きな話題となった美術館での初個展「目 非常にはっきりとわからない」について、批評家の仲山ひふみが考察する。
造形作家でありながら、教育活動、批評、研究、展覧会企画など、あらゆるジャンルにおいて深淵な洞察力をもって活動を展開してきた、岡﨑乾二郎。その活動の全貌を展覧する個展が、豊田市美術館で開催。初期作品「あかさかみつけ」シリーズから最新の絵画作品までを俯瞰することで浮かび上がる、その本質とは? アーティストの池田剛介が迫る。
写真家として関西を中心に活動する金サジは、在日韓国人3世という自身のルーツを出発点に、宗教や儀式、民族、伝統、故郷といった要素を組み込んだ独自の神話的世界を展開する作品で知られる。多文化共生地域の京都駅東南部エリアに2019年に開館した小劇場「THEATRE E9 KYOTO」で開催された個展について、はがみちこが論じる。
文化庁が主催する「新進芸術家海外研修制度」の成果発表の機会として、1998年から開催されてきた「DOMANI・明日展」。その22回目となる「DOMANI・明日2020」では、「傷ついた風景の向こうに」をテーマに掲げ、日高理恵子、宮永愛子、藤岡亜弥、森淳一、石内都、畠山直哉、米田知子ら11作家が参加している。2020年の東京五輪開催に向け日本全体が盛り上がるなか、「傷ついた風景」を冠する本展がもたらすものとは? 小田原のどかが論じる。
美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、1月に公開された全10本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。
ゲームとアートとの関係について思考し、新たなゲームを生み出す2人のアーティスト、アラン(三浦阿藍)と斉と公平太による展覧会が、副田一穂のキュレーションによって行われた。既存のゲームを組み替える斉と公平太と、新たなゲーム空間を生み出すアランの制作から見えてくるアートとゲームのあわいについて、『マルセル・デュシャンとチェス』の著者である、美術評論家の中尾拓哉がレビューする。
素材の本質から事物をとらえ、見るという行為そのものを問いかけるイズマイル・バリーの日本初個展が銀座メゾンエルメス フォーラムにて開催された。展示会場全体を光学装置とし、映像作品を中心に、ドローイング、インスタレーションなど、さまざまな形態の作品が発表された。最小限の状況設定から生み出された繊細な作品群を通して、視覚への実験的なアプローチを行った本展を、美術批評家の菅原伸也が紐解く。
群馬県のアーツ前橋にて開催された「表現の生態系 世界との関係をつくりかえる」展では、現代美術作品に限らず「現代における生を表現を通じてつなぎ直す」様々な試みが紹介された。人類学や社会学の研究者を企画協力に迎えて構成された本展を、若手キュレーターの檜山真有がレビューする。
1920年代のパリにおいて、第一線で活躍していた前衛画家・坂田一男。同展では、その功績が十分に評価されているとは言えなかった作家の全貌を、著書『抽象の力』で坂田にスポットを当てた造形作家の岡﨑乾二郎を監修に招くことで、みごとに蘇らせた。坂田の同時代性、そして度重なる災害に苛まれる日本の現状をも予見するような現在性について、批評家の沢山遼がレビューする。
ジョーン・ジョナスの第34回京都賞受賞を記念し、国内最大規模となる個展が京都市立芸術大学ギャラリー @KCUAで開催された。パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、複数のメディアを融合させた表現を追求してきたジョナス。本展は、彼女の作品の重要なキーワードとなる、女性、物語、環境問題を5つの展示室を使ってたどる。もっとも大きな部屋では、近年の代表作とも言える《Reanimation》のインスタレーションが展開された。愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。
「アート・プロジェクト KOBE 2019:TRANS-」でグレゴール・シュナイダーが神戸市内各所に展開した「美術館の終焉─12の道行き」、ピエール・ユイグをアーティスティックディレクターに迎え2回目の開催となった岡山芸術交流の「IF THE SNAKE もし蛇が」、ふたつの国際芸術祭を清水譲が評する。
上野の旧博物館動物園駅で開催された「想起の力で未来を:メタル・サイレンス 2019」。クリスティーナ・ルカスとフェルナンド・サンチェス・カスティーリョのスペイン出身の作家2名が、上野公園という地で示した戦争との向き合いかたを椹木野衣がレビューする。
ミン・ウォンはシンガポール出身、ベルリン在住のアーティスト。アサクサで開催された「偽娘恥辱㊙︎部屋」では、成人映画「日活ロマンポルノ」を題材にした新作を発表。中国でいわゆる「男の娘(おとこのこ)」を意味する「偽娘(ウェイニアン)」による現代のデジタル動画の制作方法と、ピンク映画の黎明期に低予算で行われた早撮りの手法を参照することで、日活ロマンポルノに登場する3人の女優を再演した。身体とジェンダーにおけるパフォーマティヴな振る舞いの実験の場である本展を、美術批評家の菅原伸也がレビューする。
2019年11月から12月にかけ、東京・原宿のBLUM & POEで柳幸典の個展が行われた。現代社会が孕む諸問題を、ユーモアを交えて表現する柳が同展でテーマとしたのは、第二次大戦中の大日本帝国海軍の水上機母艦であり、1944年9月に米軍機による爆撃を受け、現在もフィリピンのブスアンガ島に位置するコロン湾深くに沈む「秋津洲」。70年以上前に沈んだこの戦艦は、いかに2020年へと接続するのか? 小田原のどかがレビューする。
美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、12月に公開された全8本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。
「GO FOR FUTURE」をキーワードに、未来美術家として活動を展開する遠藤一郎。彼が美学校で講師を務める「未来美術専門学校アート科」の受講生26人と、ゲスト作家の会田誠、田中偉一郎による合同展「未来美展3」が、鹿児島市内にある天文館ニワビルで開催された。「本当にお前がやりたいことは何なのか」という遠藤からの問いかけに、若きアーティストたちはどのように応答するのか? 美術評論家の福住廉が論じた。
「あいちトリエンナーレ2019」に参加するなど、気鋭の新人作家として注目を集めるトモトシ。現在、埼玉県立近代美術館では、そのトモトシの個展「有酸素ナンパ」が開催中だ。本展でトモトシは、都市と人間、あるいは都市における人間同士の関係性を問い直す実践を「有酸素ナンパ」と定義。新作を含む映像作品の展示を通じて、都市に潜在する様々なシステムの無根拠さと脆弱さを抉り出している。以前よりトモトシの活動を追ってきた批評家の藤田直哉は、本展をどう見ただろうか?
自身のパフォーマンスを収めた映像やインスタレーション、ドローイングなど幅広い方法によって作品を発表している泉太郎。名古屋芸術大学Art&DesignCenterにて「芸術大学」をテーマに据えた個展を開催。自身も学生として過ごし、現在は教鞭を執っている「芸術大学」という空間をとらえなおし、アートと社会システムとのあいだに起こる摩擦について再考。あらゆる要素がからみあった複雑な構成のなかで泉が投げかける問いを、愛知県美術館学芸員の中村史子が読み解きレビューする。