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川口市立美術館が開館。蜷川実花の「はじまり」をたどる特別展で幕開け【8/8ページ】

「蜷川実花」以前の蜷川実花を見る

 近年の蜷川実花といえば、色彩豊かな写真を拡張した巨大なインスタレーションの印象が強い。いっぽう本展では、そのイメージからいったん離れ、写真家・蜷川実花とじっくり対峙することができる。

 ここで前面に出てくるのは、「蜷川実花」という広く知られた作家像を成立させてきた代表的なイメージではない。その手前にある感情や家族、記憶、日常だ。

 海中で生と死の近さをとらえた「Dancing with Shadows in the Light」。自分自身を撮り続ける「Self-image」。父の死と息子の誕生のあいだで撮影された「うつくしい日々」。過去の家族と時空を越えて出会い直す「First Light」。そして、10年間手をつけられなかった父の書斎。それらをたどることは、現在の蜷川の表現を構成する源流へと遡ることでもある。そしてその源流には、幼少期に歩いた川口の路地や祭りの記憶、父の舞台、家族が生活し、ものをつくっていた空間がある。

「いろんな展覧会をやってきたが、この展覧会は私にとってとても重要。川口だからこそのきっかけをもらって、新しい表現の広場になったと思う」と蜷川は語る。

 川口という蜷川自身の「はじまり」の土地で、新たな美術館の「はじまり」に、自らの創作の原点へと立ち返る。その二重の「はじまり」が、本展をほかの蜷川実花展とは異なるものにしている。

編集部