JR川口駅西口からほど近い場所に9月12日、川口市立美術館(館長:建畠晢)がグランドオープンする。
新たな美術館、その幕開けに蜷川実花
同館は川口総合文化センター・リリアと接続する位置にあり、既存の丘の地形を生かして計画された新築の美術館だ。1階・M2階・2階の3フロアで構成され、エントランスのある2階には2つの展示室とレストラン、ショップを、M2階には展示ホールやライブラリーを備える。内装には川口市の伝統産業である鋳物が一部用いられるなど、地域の文化や歴史を感じさせる意匠も随所に見られる。
現在のコレクションは約220点。地域の美術愛好家や川口市ゆかりの作家らによる寄贈を中心に形成されており、鏑木清方や横山大観など日本美術を代表する作家の作品も所蔵している。

この新たな美術館の幕開けを飾るのが、開館記念特別展「蜷川実花展 はじまりの光」だ。会期は11月29日まで。
写真家、映画監督、現代美術家として活動し、近年はクリエイティブチーム「EiM」とともに大規模なインスタレーションを国内外で展開してきた蜷川実花。本展で軸となるのは、蜷川にとってすべての出発点とも言える「写真」、そして「家族」と「川口」というきわめて個人的な記憶である。
川口は、父で演出家の蜷川幸雄(1935〜2016)が生まれ育った地であり、実花自身も幼少期、父方の実家があった本町周辺で多くの時間を過ごした。
とりわけ強く記憶に残っているというのが、川口の「おかめ市」だ。見世物小屋やおもちゃの叩き売り、鯉を扱う露店、神社の周囲に集う様々な人々──。明るく華やかなだけではないものが入り混じる祭りの光景と、当時、父が手がけていた心中物や悲劇の舞台。それらの記憶が幼い蜷川のなかで重なり、「どこまでが創作で、どこまでがリアリティなのかわからない」ような世界をつくり出していたという。
路地裏にともるオレンジ色の街灯や、迷路のような道、角を曲がれば現れる映画館など、川口で目にした風景について蜷川は、「ものをつくるときの原風景になっている」と振り返る。

本展の依頼を受けた際にも、「川口は自分にとってとても大切な場所で、思い返してみれば創作の原点のようなところがある」と改めて気づいたという。そして、「これまであまり触れてこなかった家族に関する、プライベートなことをテーマにした展示ができたら」と考えた。
つまり本展は、ただ新しい美術館のオープニングを飾る個展にとどまることなく、蜷川自身が自らの表現がどこから生まれたのかを、故郷とも言える土地で見つめ直す展覧会と言える。

































