「ザ・ワールド・オブ・ティム・バートン」は2014年以来、世界11ヶ国14都市を巡回した展覧会であり、そのラストを飾るのがバートン自身が現在暮らしているロンドンにあるデザイン・ミュージアムにおける展示だ。スタートから10年におよぶ月日の間に新たに製作された映画『ダンボ』(2019)やNetflixのドラマシリーズ「ウェンズデー」(2022)らの作品も加え、展示総数はおよそ600点。開催前に既に3万2000枚を超えるチケットが売られ、デザイン・ミュージアムの35年の歴史で先行販売数の最高記録を樹立した。
孤独を抱えた少年期から独自の世界の確立まで
エキシビションは5つのスペースから構成されている。一つ目の「サバーバン・ビギニング」ではカリフォルニアの郊外バーバンクで過ごした少年時代とカリフォルニア芸術大学在学時、ウォルト・ディズニー・プロダクション勤務時代の初期の作品を伝える。
ここで最初に目に留まるのは、バートンが18歳のときにディズニー・パブリッシングに売り込んだ絵本の原画だ。添付したバートンの手紙とともに、出版は叶えられなかったものの描き続けることを奨励する担当者からの返事も展示されている。また芸術大学時代のドローイングの片隅には不思議なモンスターの姿もあり、独自の世界が育まれていたのがわかる。
カリフォルニア郊外の穏やかで平凡な環境に馴染めずに孤独を感じていた彼が、イラストレーションや8ミリ映画の製作に夢中になり自分だけのクリエーティブ・ヴィジョンを養っていく様子が伝わってくる。
続く「クラフティング・イマジネーション」では、絵本作家のエドワード・ゴーリーやハリウッドのクラシック・ホラー映画、ゴジラなどの日本の怪獣映画などのインスピレーション源となった品々とともに、バートンが独自のダークワールドを確固たるものにしていくさまを見せている。
初のコミッション作品で憧れのハリウッド俳優ヴィンセント・プライスへのトリビュートとも言える短編アニメーション映画『ヴィンセント』(1982)のプロットやストーリーボード、さらには彼が1982年に書いた詩が原案のストップモーション・アニメーション映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)に使われた人形などから、その様子がはっきりと伝わってくる。
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