「森の芸術祭 晴れの国・岡山」見どころレポート

岡山県北部を中心とする地域において、新たな国際芸術祭「森の芸術祭 晴れの国・岡山」が始まった。その主な見どころをレポートでお届けする。会期は11月24日まで。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

展示風景より、レアンドロ・エルリッヒ《The Nature Above》

なぜ岡山県北か?

 岡山県北部の12市町村において、新たな国際芸術祭「森の芸術祭 晴れの国・岡山」が始まった。

アートディレクターの長谷川祐子(手前中心)と参加作家ら

 本芸術祭の主催は岡山県。岡山は県南部に瀬戸内海のアートサイトが広がり、また芸術祭としては「岡山芸術交流」も有する。岡山の代表的な美術館も多くは県の南部に集中している。こうした状況のなか、本芸術祭は県北部の観光をアートによって振興しようとするものだ。岡山県の伊原木隆太知事は、「(開催の)ハードルは高かったが、瀬戸内国際芸術祭は島で開催するというリスクをとった。海でできたのであれば山でもできる。県北だからこそ意味がある。県内外、海外の人たちに県北の良さを実感してもらいたい。また、県北の皆さんには自分たちが住んでいるところの良さを実感してもらえれば」と芸術祭への期待を寄せた。

 アートディレクターを務めるのは金沢21世紀美術館館長・長谷川祐子。長谷川はこれまで海外で様々な国際展(芸術祭)をディレクションしてきたが、国内ではこれが初めてとなる。長谷川は、「ここには健やかなサステナビリティが根付いている。そこにフィーチャーするため、アーティストたちの力を借りた。森林大国・日本の未来を予言させるような発信源になる。これまで海外で多くの国際展をしてきたが、場所を理解し、そのために何をし、何を外に訴えかけるかという点において、今回は120パーセント満足している」と自信を覗かせた。

会場と参加作家

 かつて城下町、宿場町として栄えたこの地域に現存する伝統建築や自然から、エコロジー思考、新しい資本の可能性を探ろうとするこの芸術祭。

 開催エリアは岡山県内の12市町村(津山市、高梁市、新見市、真庭市、美作市、新庄村、鏡野町、勝央町、奈義町、西粟倉村、久米南町、美咲町)。作品は津山(津山城周辺エリア、グリーンヒルズ津山エリア)、奈義(奈義町現代美術館周辺エリア)、新見(満奇洞・井倉洞エリア)、真庭(蒜山エリア)、鏡野(奥津エリア)で見ることができる。

 参加アーティストは以下の通りだ。

国外アーティスト(18名)レアンドロ・エルリッヒアンリ・サラキムスージャ、リクリット・ティラヴァニ、タレク・アトゥイ、ジェンチョン・リョウ、ビアンカ・ボンディ、スミッタ・G・S、オウティ・ピエスキ、アシム・ワキフ、ジャコモ・ザガネッリ、ウメッシュ・P・K 、パオラ・ベザーナ、ムハンナド・ショノ、ルシーラ・グラディン、マイケル・リン、エルネスト・ネト、ソフィア・クレスポ、サンドラ・シント

国内アーティスト(25組)坂本龍一高谷史郎、森山未來、川内倫子蜷川実花 with EiM、妹島和世、立石従寛、片桐功敦AKI INOMATA、上田義彦、磯崎新、東勝吉、東山詩織川島秀明、森夕香、八木夕菜、染谷悠子、加藤萌、甲田千晴、志村信裕、鈴鹿成年 *地元アーティスト:太田三郎、杉浦慶侘、江見正暢、加藤萌、難波香久三

 では次ページからはエリアごとのハイライトをご紹介しよう。

編集部

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