2025年3月下旬から、世界遺産・二条城での大規模個展が予定されているアンゼルム・キーファー。そのドキュメンタリー映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』(配給:アンプラグド)が、6月21日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国順次公開される。これを前に、ヴィム・ヴェンダース監督のオンラインインタビューが複数メディア合同(*1)で行われた。ここでは、公式インタビューの内容を交え、ヴェンダースの言葉をお届けする。
本作は、戦後ドイツを代表する芸術家であり、ドイツの暗黒の歴史を主題とした作品群で知られるアンゼルム・キーファーの生涯と現在を追ったドキュメンタリー。キーファーはヴェンダースと同じ1945年生まれであり、初期には戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄する作品を制作するなど、“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。71年からはフランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作しており、その作品では一貫して、戦後ドイツ、や「死」に向き合っている。まさに“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けるアーティストだ。
2年半におよぶ撮影
ヴェンダースとキーファーの出会いは1991年に遡る。
「アンゼルムとは、1991年にドイツでの大きな展覧会(Anselm Kiefer : Nationalgalerie Berlin 1991)の準備をしているときに初めて会いました。2週間、毎晩会ってディナーを共にしまし、いろいろな話をし、お互いをよく知るようになりました。2週間経った辺りで、実は私は画家になりたかったと話したんです。一方、アンゼルムは、実は映画監督になりたかったという話になり、じゃあ一緒に何かやりましょうということになりました。結局、その時には何もしなかったのですが、今となっては、それでよかったと思っています。というのは、もし当時、撮影していたら今回作ったような映画にはならなかったでしょうから。