奈義町現代美術館周辺エリア
屋内ゲートボール場「すぱーく奈義」
金沢21世紀美術館の《スイミング・プール》で知られるレアンドロ・エルリッヒは、広さ300平米という森のインスタレーション《The Nature Above》を展開する。トラス構造の天井と柱のない巨大内部空間をもつこの場所。今年5月に初めて奈義町を訪れたというレアンドロは、この地域の景観・自然に感銘を受けたと語る。人間は自然から分離されているという感想を受けたレアンドロは、自然の重要性に目を向けるために本作を制作した。作品は森のように木々に囲まれており、象徴的な「吊り橋」を渡る鑑賞者の頭上からは300本以上の木々(レプリカ)が真下に向かって吊るされている。吊り橋の下は鏡となっており、空間が反転することで新たな視界が広がるだろう。
奈義町現代美術館
奈義町現代美術館は磯崎新が設計した美術館てあり、この美術館のために制作されたサイトスペシフィックな作品と建築が一体となった場所。ここではまず、磯崎によるアートと建築に対する取り組みを、ドローイングや模型などによって紹介するアーカイヴ展示によってその功績を振り返る展示を見ておきたい。
2022年に奈義町で滞在したAKI INOMATA。《昨日の空を思い出す》は、グラスの中にオリジナルの3Dプリンターによってつくった雲を浮かべ、「前日の空の様子」をそこに再現したもの。鑑賞者はそれを飲むことができる彫刻作品だ。昨日と同じ日は来ない、という当たり前のことに気付かされる。
奈義町現代美術館の「大地の部屋」では坂本龍一+高谷史郎による大作《TIME-déluge》に向き合いたい。高谷は生前の坂本とともに最後の舞台作品『TIME』を制作し、大きな話題を集めた。本作は『TIME』の1シーンをもとにしたビデオ&サウンド・インスタレーションとなっており、水盤の上に高さ2メートル×幅6メートルの巨大 LEDビデオウォールを設置。水の氾濫をハイスピードカメラでとらえたスローモーション映像が映し出され、坂本と親交があった藤田六郎兵衛による笛が鳴り響く。またこの場所にもとから設置されている宮脇愛子のステンレスワイヤーによる彫刻《大地》と共鳴し、ここでしか見ることができない、非常に静謐かつ内省的な空間が創出されている。
また森山未來はこのエリアで大規模なパフォーマンスイベント《さんぶたろう祭り》を実施。岡山の重要無形文化財である横仙歌舞伎をベースにした舞いを披露した。森山は「奈義町はローカルの持つ強みを最大限に生かしている場所。僕なりに感じた奈義という場所を、祭りというかたちで表現させていただいた。それを芸術祭という場で披露できることに意味がある」と振り返っている。