2023.7.7

ソール・ライターから民藝展、野又穫の個展まで。今週末に見たい展覧会ベスト10

今週末から来週にかけて開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

ソール・ライター 無題 撮影年不詳 © Saul Leiter Foundation
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スペインはいかに描かれ、いかに受容されてきたのか。「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」(国立西洋美術館)

展示風景より、右がラモン・カザス《「アニス・デル・モノ」のポスター》(1898)

 17世紀初頭から20世紀後半までのスペインに関わる版画作品を展観し、版画というメディアがスペインの文化・美術のイメージ形成に果たした役割を探る展覧会「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」が、東京・上野の国立西洋美術館で開幕した。会期は9月3日まで。

 印刷物である版画は、19世紀においてはイメージを遠方に伝達するために重要な役割を果たしたメディアだった。日本における浮世絵のように、スペインの文化や美術も、版画を通じて各地に知られていった。本展は版画というメディアを企画の中心に据えることで、スペインという土地のイメージの変遷を伝えるものだ。また、国立西洋美術館の展覧会としては珍しく、国内美術館の収蔵品のみで構成されている。レポートはこちら

会期:2023年7月4日~9月3日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30~17:30(金土~20:00) 
休館日:月(7月17日、8月14日は開館)、7月18日
料金:一般 1700円 / 大学生 1300円 / 高校生以下無料

第25回亀倉雄策賞受賞の記念展。三澤遥 個展「Just by | だけ しか たった」(クリエイションギャラリーG8)

三澤遥 個展「Just by | だけ しか たった」展示風景より

 第25回亀倉雄策賞の受賞を記念した展覧会が東京・銀座のクリエイションギャラリーG8で開催中だ。今回の亀倉賞では、デザイナー・岡崎智弘と三澤遥が歴代初の同時受賞となり、現在は三澤遥 個展「Just by | だけ しか たった」が7月27日まで開催中だ。

 本展では「だけ しか たった」と表されるように、ささいな行為を加えただけでものの見方が変化するといった、完成された作品の手前にある「思考の立体エスキース」を会場内に点在させている。レポートはこちら

会期:2023年7月4日〜27日
会場:クリエイションギャラリーG8
住所:東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル 1F
電話番号:03-6835-2260 
開館時間:11:00〜19:00
休館日:日祝 
料金:無料

野又穫の描く未来はなぜこんなにも懐かしいのか。個展「野又 穫 Continuum 想像の語彙」(東京オペラシティ アートギャラリー)

展示風景より、手前は野又穫《Alternative Sights-1》(2010)

 現実と非現実のあわいを描きつつも、どこか懐かしさを感じさせる世界観を生み出す画家・野又穫(1955〜)。その東京オペラシティ アートギャラリーの企画展示室では初となる個展「野又 穫 Continuum 想像の語彙」が9月24日まで開催中だ。

 本展では、同館コレクションをはじめとする野又作品の初期から最新作までを展示。会場には、未来感がありつつもどこかノスタルジックな建造物が登場する作品が展示されているとともに、野又によるスケッチの数々も見ることができる。レポートはこちら

会期:2023年7月6日〜9月24日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は18:30まで
休館日:月(ただし祝日の場合は翌火)、8月6日(全館休館日) 
料金:一般 1400円 / 高校・大学生 800円 / 中学生以下無料

東京に新たな国際アートフェア。「TOKYO GENDAI」(パシフィコ横浜)

展示風景より、大平龍一《The Circuit》

 「TOKYO GENDAI」は、「台北當代(タイペイダンダイ)」など、様々なアートフェアを手がけてきた「The Art Assembly」が主催するもの。The Art Assemblyのマグナス・レンフリューとのパートナシップのもと、フェアディレクターはGoogle Arts & Cultureで日本担当を4年間担ったEri Takaneが務める。

 同フェアは、40以上の海外ギャラリーが出展する、これまでにない国際的なアートフェアだ。会場は、国内外の主要ギャラリーが集結する「Galleries」のほか、テーマに沿った作品を展示する「Hana(花)」「Eda(枝)」「Tane(種)」などのセクションや、国内の女性作家にフォーカスしたエリア「TSUBOMI」で構成されている。レポートはこちら

会期:2023年7月7日~7月9日 ※7月6日はVIPプレビュー
会場:パシフィコ横浜
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1

現代の暮らしのなかの「民藝」に迫る。「民藝 MINGEI─美は暮らしのなかにある」(大阪中之島美術館)

緑黒釉掛分皿(1931頃) 因幡牛ノ戸 日本民藝館蔵 Photo:Yuki Ogawa

 大阪中之島美術館で「民藝」をテーマとした企画展「民藝 MINGEI─美は暮らしのなかにある」が7月8日より開催される。

 同展では、民藝における「私たちの生活に身近なもの」という側面に光を当てる。日本民藝館の所蔵作品を中心に、民藝の品々約150件を展示するとともに、いまに続く民藝の産地を訪ね、そこで働くつくり手、受け継がれている手仕事の品々も紹介される。

 また、昨年までセレクトショップ「BEAMS」のディレクターとして、現在の民藝ブームの隆盛に大きな役割を果たしてきたテリー・エリスと北村恵子( MOGI Folk Art・ディレクター)による、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーションも見どころとなる。

会期:2023年7月8日〜9月18日
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
住所:大阪市北区中之島4-3-1
電話番号:06-4301-7285
開館時間:10:00 〜 17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日、9月18日は開館)、7月18日
料金:一般 1700円 / 大学・高校生 1300円 / 中学生以下無料

新たに発掘された作品を含む400点以上が集結。「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」(ヒカリエホール)

ソール・ライター 無題 撮影年不詳 © Saul Leiter Foundation

 今年4月から休館(オーチャードホールを除く)している「Bunkamura」。その美術館である「Bunkamura ザ・ミュージアム」が、渋谷ヒカリエ9F・ヒカリエホールにて展覧会「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」を開催する。会期は7月8日〜8月23日。

 本展では、新たに発掘された作品による大規模なカラースライド・プロジェクションや未公開のモノクロ写真、絵画など最新作品群を含む400点以上の作品を紹介。これまで紹介していなかったライターの知られざる素顔と、「カラー写真のパイオニア」と称され世界中を驚かせ続ける色彩感覚の源泉に迫る。

会期:2023年7月8日〜8月23日
会場:ヒカリエホール ホールA
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00〜20:00 ※最終入場は19:30まで
料金:一般 1800円 / 大学・高校生 1000円 / 中学・小学生 700円

2体の大型彫刻を発表。森靖 個展「TWISTER」(PARCEL)

森靖 3MMM - rivalry 2022

 東京・馬喰町のギャラリー・PARCELで、彫刻家・森靖の2回目の個展「Twister」が7月11日まで開催されている。

 森の作品モチーフは、アメリカのポップアイコンから中世古典彫刻まで、⾮常に⻑い時系列の上に成立しており、その要素を縦横無尽に⾏き来しながら我々に「美」などの根源的な要素や、記号論的な思い込みや意識に対して問いかけている。

 本展のメインを成すのは2体の⼤型彫刻作品だ。⾼さは、医学的な記録上現存する人間の最⻑身長である272センチメートル。また、⼈間の最⾼齢の記録である120年に近い樹齢の⽊を使用することで、このサイズが可能となったのだという。

会期:2023年5月27日〜7月11日
会場:PARCEL
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F
開館時間:14:00〜19:00 
休館日:月火祝(7月10日・11日は開廊)
料金:無料

東京の住宅の不透明な窓のみをとらえる。奥山由之「windows」(amanaTIGP)

奥山由之「windows ♯1」、2022年 © Yoshiyuki Okuyama / Courtesy of amanaTIGP

 amanaTIGPで開催中の、写真家・奥山由之による個展「windows」が7月8日で閉幕する。

 奥山は1991年東京生まれ。2011年のデビュー以降自身の作品制作を継続的に行っており、20年発表のシリーズ作品「flowers」では祖母と自身、2つの視点にカメラを憑依させ、花を媒介として亡き祖母との対話を試みた。

 本展で展示される3部作で構成された「wiindows」は、「flowers」に続く「人以外の被写体を通して人を描く」作品の2作目。あらゆる事象に付随する矛盾や多面性に創作のテーマを据え、切り取られた瞬間の前後に揺らめく数多の可能性に写真の本質をみた奥山。その独自の視覚表現は、撮影目的に拘わらずどの作品群にも通底している。会場では、東京の住宅の不透明な窓のみをとらえた写真群から約25点を展示している。

会期:2023年6月10日〜7月8日
会場:amanaTIGP
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
電話番号:03-5575-5004
開館時間:12:00~19:00 
休館日:日月祝 
料金:無料

ありふれた日常の何気ない一瞬を切り取る。「TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」(東京都写真美術館)

奈良美智《NY Drawing (left); Yogyakarta Cat (right)》〈days 2003-2012〉より 2003–2012年 東京都写真美術館蔵 ©Yoshitomo Nara

 東京都写真美術館で「TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」展が7月9日まで開催されている。

 本展は、約3万7000点に及ぶ同館の収蔵作品のなかから「セレンディピティ」をキーワードに構成。ありふれた日常の何気ない一瞬を撮影した作品に写真家たちのささやかな心の機微を探る展示となる。

会期:2023年4月7日~7月9日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話番号:03-3280-0099 
開館時間:10:00~18:00(木金〜20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月 
料金:一般 700円 / 大学・専門学校生 560円 / 中学生・高校生・65歳以上 350円

巨大な絵巻や書き下ろしのインスタレーション作品も。「谷川俊太郎 絵本★百貨展」(PLAY! MUSEUM)

「谷川俊太郎 絵本★百貨展」メインビジュアル

 PLAY! MUSEUMにて開催中の「谷川俊太郎 絵本★百貨展」が7月9日で幕を閉じる。

 谷川は1931年東京生まれ。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行し詩人として注目される。その仕事は詩作に限らず翻訳、脚本など、言葉による様々な領域に及ぶ。また60年代から現在に至るまで、多くの絵描きや写真家と200冊もの絵本を制作してきた。

 本展では約20冊の絵本を取り上げ、多彩なクリエイターとともに、絵本の原画、絵や言葉が動き出す映像、朗読や音で会場が構成される。さらに、巨大な絵巻や書き下ろしのインスタレーション作品なども展示されている。

会期:2023年4月12日~7月9日
会場:PLAY! MUSEUM
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 PLAY! MUSEUM
電話番号:042-518-9625 
開館時間:10:00~18:00 ※入場は17:30まで
休館日:無休 
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 1000円 / 中学生・小学生 600円 / 未就学児 無料