2023.7.1

野又穫からテート、ホックニー、エルマーのぼうけんまで。7月に注目したい展覧会ベスト30

2023年6月末から7月にかけて開幕する展覧会のなかから、とくに注目したいものを編集部がピックアップしてお届けする。 *最新情報は各館公式サイトをご確認ください。

スプリンクラー 1967 東京都現代美術館 Ⓒ David Hockney
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蔡國強の原点へ。「蔡國強 宇宙遊 一〈原初火球〉から始まる」(国立新美術館

展示風景より、インスタレーション《原初火球》(部分)

 国立新美術館とサンローランの共催による、蔡國強(ツァイ・グオチャン/さい・こっきょう)の大規模個展「宇宙遊 一〈原初火球〉から始まる」が開催中だ。

 展覧会に先立ち、福島県いわき市で行われた白天花火《満天の桜が咲く日》で大きな注目を集めた蔡。今回の展覧会は、蔡が「自らを省みる展覧会」だと語るものであり、国内の国公立美術館の所蔵作品や、日本初公開のガラスや鏡に焼き付けた新作を含む作家所有の約50件の作品が、知られざる多数の貴重なアーカイヴ資料や記録映像とともに公開されている。壁のない大空間で蔡の多様な作品に没入してもらいたい。展覧会レポートはこちら

会期:2023年6月29日~8月21日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:一般 1500円 / 大学生1000円 / 高校生、18歳未満無料

人形の多様性に着目。「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」(渋谷区立松濤美術館

村上隆 Ko²ちゃん(Project Ko²) 1/5原型制作 BOME(海洋堂) 1997 個人蔵 ©1997 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co, Ltd. All Rights Reserved.

 日本の人形の歴史を振り返り、その一括りにできない様相を「芸術」という枠に押し込めるのではなく、多様性を持つ人形そのものとして紹介する展覧会「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」が、7月1日から東京・渋谷の渋谷区立松濤美術館で始まった。

 本展は全10章で構成され、その複雑な様相を持つ日本の人形を通じて、日本の立体造形の根底に脈々と流れてきた精神を問うもの。考古遺物《人形代 [男・女]》から竹久夢二や中原淳一ら一流のデザイナーが参画した作品、彫刻家・荻島安二と向井良吉がつくり出したマネキン、さらには村上隆とフィギュア原型師・BOMEによる《Ko²ちゃん(Project Ko²)》(1997)まで、幅広い射程を持つものとなる。

会期:2023年7月1日〜8月27日([前期] 7月1日〜30日 / [後期] 8月1日〜27日)※展示替えあり
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
電話番号:03-3465-9421
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00)※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生・60歳以上 500円 / 小中学生 100円

越境性にフォーカス。「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」(東京ステーションギャラリー

展示風景より

 醜さも含めた人間の生々しさを描いた異色の日本画家・甲斐荘楠音(かいのしょう・ただおと)。その美術館で二度目となる回顧展「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」が、京都国立近代美術館から東京ステーションギャラリーに巡回し開幕した。

 楠音は戦前の日本画壇で高い評価を受けながら、1940年代初頭に映画業界に転身するという異例の経歴を持つ人物。過去最大スケールの回顧展となる本展では、その絵画から映画の衣裳までを展覧することで、甲斐荘が持つ「越境性」に着目するものだ。

会期:2023年7月1日〜8月27日[前期7月1日~30日、後期8月1日~27日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月17日、8月14日、8月21日は開館)、7月18日
料金:一般 1400円 / 高校・大学生 1200円 / 中学生以下無料

ミレーを起点に。「ミレーと4人の現代作家たち- 種にはじまる世界のかたち -」(山梨県立美術館

展示風景より

 山梨県立美術館のコレクションを代表するジャン=フランソワ・ミレー(1814~75)の《種をまく人》。同作を起点とする展覧会が、7月1日に開幕した「ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-」だ。

 開館45周年を記念して開催されるこの展覧会では、ミレーの作品とともに、現代を生きる4人の現代作家の作品を展観することで、多様な解釈を開くことを試みるもの。参加作家は淺井裕介、志村伸裕、丸山純子、山縣良和。本展のために制作された新作にも注目してほしい。

会期:2023年7月1日〜8月27日
会場:山梨県立美術館
住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
電話番号:055-228-3322
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:7月3日、10日、18日、24日、31日、8月7日、21日
料金:一般 1000円 / 大学生 500円/ 高校生以下無料

超絶技巧のいまに迫る。「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」(あべのハルカス美術館

 明治工芸のDNAを継承し多様な素材と技法を駆使して、新たな領域に挑む現代作家の新作を中心に紹介する展覧会「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」が、大阪のあべのハルカス美術館で7月1日から始まった。

 2017〜19年に開催された「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」のアップデート版となる本展では、木・金属・陶磁・漆・ガラス・紙など、様々な素材による現代作家の意欲的な表現を一堂に紹介。超絶技巧の現在形を探るものとなる。

会期:2023年7月1日〜9月6日
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
開館時間:10:00〜20:00(月土日祝〜18:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:7月3日
料金:一般 1600円 / 大学・高校生 1200円 / 小・中学生 500円

植物が美術にもたらしたものとは? 「植物と歩く」(練馬区立美術館

須田悦弘 チューリップ 1996 岩絵具・木 38.0×10.0×8.5cm © Yoshihiro Suda / Courtesy of Gallery Koyanagi

 練馬区立美術館で、植物がいかに作家を触発してきたかを同館コレクションを中心に探る展覧会「植物と歩く」が7月2日にスタートする。

 本展の印象的なタイトル「植物と歩く」には、植物の営む時間と空間に感覚をひらき、ともに過ごすという意味を込められているという。会場は、プロローグとエピローグを加えた計5章で構成。植物学者・牧野富太郎による緻密な植物図や須田悦弘の木彫、大小島真木がインドネシアの木にまつわる風習から着想して制作した作品など、洋画、日本画、ガラス絵、版画、彫刻、和本、植物標本といった様々なジャンルの作品が展覧される。

会期:2023年7月2日〜8月25日
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
電話番号:03-5848-3320
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 800円 / 大学・高校生 300円 / 中学生以下無料

スペインのイメージはいかに形成されてきたのか。「スペインのイメージ」(国立西洋美術館

 いまでは観光大国であるものの、歴史的には「ピレネーの向こうはアフリカである」と揶揄されたほど、他のヨーロッパ諸国にとって未知の、馴染みの薄い異国だったスペイン。同国のイメージの形成をたどる展覧会が、国立西洋美術館の「スペインのイメージ」だ。

 本展は、スペインに関わる版画制作の史的展開を17世紀初頭から20世紀後半までの長大な時間軸で概観し、版画がスペインの文化・美術に関するイメージの形成や流布にどのように貢献したかを約240点の作品から探るというもの。ゴヤやフォルトゥーニ、ピカソミロダリら巨匠たちの仕事を含んだスペイン版画の系譜をたどるとともに、ドラクロワマネなど19世紀の英仏で制作されたスペイン趣味の作品も多数紹介される。

会期:2023年7月4日~9月3日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30~17:30(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月17日、8月14日は開館)、7月18日)
料金:一般 1700円 / 大学生 1300円 / 高校生以下無料

野又作品の魅力とは何か? 「野又 穫 Continuum 想像の語彙」(東京オペラシティ アートギャラリー

野又穫 Alternative Sights-2 2010 キャンバスにアクリル絵具 120.3 × 162.1cm 作家蔵 撮影=小暮徹