「VOCA展2026 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」展(上野の森美術館)が開幕

東京・上野の森美術館で「VOCA展2026 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」が始まった。会期は3月29日まで。

3月13日に行われた授賞式の様子。前列右から加藤千晶、ソー・ソウエン、戸田沙也加、寺田健人、倉敷安耶

 東京・上野の森美術館で「VOCA展2026 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」が開幕した。会期は3月29日まで。

 「VOCA展」は、現代美術における平面作品の領域で将来性のある若い作家を支援することを目的に1994年から毎年開催されている展覧会だ。全国の美術館学芸員や研究者らが推薦委員として40歳以下の作家を推薦し、その作家が出品する形式が特徴となっている。2026年は新進気鋭の作家24名が出品する。

 今回VOCA賞を受賞した戸田沙也加の《語られざる者の残響》は、ある彫刻家のアトリエに残されていた裸婦像をモチーフとした作品。写真と絵画を対照的に組み合わせながら、イメージの象徴性や時間の層を浮かび上がらせる構成となっている。

展示風景より、右は戸田沙也加《語られざる者の残響》

 本作について戸田は「美術手帖」のインタビューで、「この作品のモチーフとなった裸婦像は、母校である女子美術大学の彫刻専攻の教授から誘われ、そのお父様(故人)のアトリエを訪ねたことがきっかけで出会ったものだ」としたうえで、次のように語った。

 「本来、これらの裸婦像は「男性の眼差し」によってつくられたものです。私は同じ女性として、彼女たちが置かれた状況を「女性の眼差し」から捉え直し、可視化したいと考えました。裸婦像という『美の象徴』が区画整理による『解体』とともに崩れていく様を見つめながら、慈しみと批判的な視点の両方を持って構成することをつねに心がけています。(中略)今回の作品でも、写真では朽ちゆく裸婦像の美しさを写し、絵画ではその慈しむような裸婦像の表情を描いています」。

 推薦者である埼玉県立近代美術館学芸員の鴫原悠は、「写真と絵画を対照的に並置する本作のモチーフは、ある彫刻家のアトリエの庭に作家の没後も残されていた裸婦像である。役割を終えた彫像が持つ美しさを衒(てら)いなく捉えようとする戸田の視線は、公共空間において裸婦像がたどった歴史と、アトリエにおける作家の私的な時間とが交錯する、複層的な記憶や時間を呼び起こすだろう」(会場キャプションより、以下同じ)と評価している。

展示風景より、ソー・ソウエン《Pain things - ペイン ティングス》

 このほか、VOCA奨励賞にはソー・ソウエンの《Pain things - ペイン ティングス》、寺田健人の《The Gunshot Still Echoes》が選ばれた。ソーの作品について推薦者の熊本市現代美術館主任学芸員・里村真理は、「本作は、分断を解きほぐすためのエクササイズだ。黒く染めた布に漂白剤を含ませた筆で点描を施して抜染し、自身のシルエットを描いたパネル作品は、一度染め上げたアイデンティティを消去することを暗示する」と述べている。

展示風景より、寺田健人《The Gunshot Still Echoes》

 また寺田の作品について、沖縄県立博物館・美術館学芸員の大城さゆりは、「戦跡にある穴や欠けを金色で埋めることで、風化する傷痕を可視化する。その行為は、忘れられかねない過去の残響を拾い上げながら、地域史と個人史とをつなぐ試みでもある」とコメントした。

展示風景より、右は加藤千晶《ゆらぐ輪郭、声の断片を拾う》

 さらにVOCA佳作賞には、加藤千晶の《ゆらぐ輪郭、声の断片を拾う》と倉敷安耶の《手を添える》が選出された。加藤について推薦者の八戸市美術館学芸員・大澤苑美は、「加藤は、かぎ針で『写真を編む』手法で、個人と社会の関係を可視化する。近年まで美術の文脈では評価されにくかった“手芸”や“家庭の出来事”を主題として捉え直す試みである」と語る。

展示風景より、倉敷安耶《手を添える》

 いっぽう、倉敷の作品について国立国際美術館任期付研究員の武本彩子は、「膨大な芸術作品の題材となったマグダラのマリアと小野小町という2人の女性像に着目し、彼女らの手の図像を結集して救いと連帯の意志を見出そうとする」と評している。