「国からの500万円とは全然違う」
──刀研機構からの資金は、もともと「刀剣乱舞ONLINE」を楽しむユーザーの会費の一部です。こうした民間から継続的に資金が入る仕組みについて、高妻さんはどう受け止めていますか。
高妻 ものすごく重要だと思っています。
「文化財を守りましょう」「文化財は大切です」というのは、どちらかというと行政主導で発信されてきた言葉です。でも刀研機構の場合は違います。ゲームユーザーの皆さんのなかに、「こういうことに自分たちのお金を使ってほしい」という思いがある。
お金に色はないと言いますけど、僕は「ある」と思うのです。本丸刀剣保存会の皆さんから刀研機構を通じて500万円をいただくのと、国から500万円をいただくのでは、受け止め方が全然違う。それを使うことによって、国の代わりに文化財を守っているのではなく、「本当にみんなと一緒にやっているんだ」という気持ちになります。文化財を守っている側からすると、それはものすごく背中を押してもらえることなんです。
──1000万円の寄付を発表した際、ユーザーからもかなり反響があったそうですね。
橋本 驚くくらいポジティブな反応でした。「いいお金の使い方をしてくれた」という声だけではなく、「それで足りるのか」というコメントまで、SNSを通じて数百件単位で確認しています。「まさにこういうことのためにお金を使っていたんだ」と感じてくださった方が非常に多かったようです。
──支援するユーザーと、実際に文化財を救う現場がつながっている感覚があるのでしょうか。
高妻 本当にそうだと思います。「国が守る」「県が守る」ということではなく、「みんなで守っている」。
そういう思いを持っていただいていることは、実際に文化財防災に携わる側からすると、ものすごく背中を押してもらえます。

刀剣から、文化財全体を支える仕組みへ
──刀研機構としては、こうした文化財防災への支援を「刀剣乱舞ONLINE」や刀剣というジャンルだけにとどめず、さらに広げていきたいのでしょうか。
橋本 そうですね。災害が起きれば、もちろん人命や生活を支えるための活動が最優先です。ただ、カルチャーに関わるコンテンツ企業には、「文化財レスキューを支援する」ルートがあることも知ってほしい。
刀剣だけの話ではありません。ゲーム、アニメーション、映画、漫画など、コンテンツ企業はこれまで蓄積されてきた学術資源や文化資源を糧に、新しい作品をつくってきたわけです。
であれば、その利益の一部をアーカイブや文化財を守る側へ還元する。その取り組みのなかに、文化財レスキューも入れていきたいと思っています。

──ほかのコンテンツ企業にも、同様の取り組みが広がる可能性はあると思いますか。
橋本 文化財レスキューをする側にとっても、コンテンツをつくる企業やクリエイターは、寄付を呼びかける相手としてまだまだ未開拓なのではないでしょうか。
「こういう支援の方法がある」と知ってもらえば、「では自分たちも」と考える企業は決して少なくないと思います。
ただ寄付をするだけではなく、文化を大事にする企業としてユーザーや社会から評価されることにもつながる。企業自身にとっても意義のある取り組みになりえます。
──高妻さんも、民間企業やクリエイターが文化財防災に参加していくことには期待していますか。
高妻 大きく期待しています。文化財を守りたいという思いを持っている人や企業は、きっとたくさんいると思うんです。ただ、「どうやったら参加できるのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
今回のような取り組みを知ってもらうことで、「こういうかたちで参加できるんだ」と気づく人が増えていけばいいと思います。



















