12万人の「楽しむ」が、文化財を守る力になる
2015年にサービスを開始した「刀剣乱舞ONLINE」。名だたる刀剣をモチーフとした「刀剣男士」を育成・編成する同作は、ゲームという枠を超え、舞台、ミュージカル、アニメ、映画などへと展開するとともに、日本刀やその歴史、刀剣を収蔵する全国の博物館・美術館をはじめとするアーカイブ機関へと人々の関心を広げてきた。

そうした「刀剣乱舞ONLINE」を起点に2025年3月に設立されたのが、一般社団法人刀剣文化研究保全機構(以下、刀研機構)だ。
その大きな特徴は、ゲームと文化財支援、博物館・美術館支援を直接結びつける仕組みにある。「刀剣乱舞ONLINE」の定額サービス「本丸刀剣保存会」では、月額880円または年額8800円の会費のうち10パーセントが刀研機構への寄付となる。会員数は現在12万人を超えており、そこで集まった資金を原資として、刀剣に関する調査研究をはじめ、各地の刀剣展示の普及を目的とした刀剣展示のオンライン配信、刀剣所蔵館でのレクチャー開催を通じた支援が進められてきた。つまり、ユーザーが日々ゲームを楽しむことが、現実世界の文化財を未来へ残すための活動につながっていく仕組みだ。


そしていま、その支援の領域は「文化財防災」にも広がろうとしている。
刀研機構では設立当初から、国立文化財機構 文化財防災センターが設ける「文化財防災救援基金」に対し、2026年秋以降、毎年500万円を積み立てる計画を進めてきた。
文化財防災センターは2020年、国立文化財機構の本部施設として設置された組織だ。地震や豪雨、台風などの災害から文化財を守るため、平時の減災から、被災した文化財の救援体制づくりと技術開発、そして被災した文化財の救援活動に対する支援までを担っている。
こうしたなか、2026年7月28日に令和8年熊本地震が発生。刀研機構は当初の計画を前倒しし、文化財防災救援基金への1000万円の寄付を決定した。災害が発生してから資金を集めるのではなく、災害が起きる「前」から使える資金を準備しておく。そこには、文化財レスキューの現場ならではの切実な理由がある。文化財防災センター長の高妻洋成と、刀研機構業務執行理事の橋本麻里に話を聞いた。
































