ゲルハルト・リヒター×スティーヴ・ライヒの映像・音楽作品が日本初演。新プロジェクト「No Centre」が始動

ゲルハルト・リヒターとスティーヴ・ライヒによる映像・音楽作品《Moving Picture (946-3) Reich/Richter》が日本初演される。11月6日、7日に東京・草月ホールで開催。分野横断型の移動型アートプロジェクト「No Centre」のローンチ・プログラムとなる。

Moving Picture (946-3) Film by Gerhard Richter & Corinna Belz, Music: Steve Reich, Montage: Rudi Heinen © Gerhard Richter and Corinna Belz Curated by Hans Ulrich Obrist and Alex Poots

 現代美術家ゲルハルト・リヒターと、ミニマル・ミュージックを代表する作曲家スティーヴ・ライヒによる映像・音楽作品《Moving Picture (946-3) Reich/Richter》が日本初演される。会場は東京・赤坂の草月ホールで、会期は11月6日、7日。

移動型アートプロジェクトの幕開け

 本公演は、新たに始動する一般社団法人「No Centre」による最初のプログラム。No Centreは、特定の拠点を持たず、展覧会や公演などを展開していく分野横断型の移動型アートプロジェクト。2026年冬には公式サイトを本格的に立ち上げ、活動ビジョンや今後の展覧会、公演、プログラムなどを発表していくという。

 今回日本初演される《Moving Picture (946-3) Reich/Richter》は、リヒターと映画監督のコリーナ・ベルツによる映像作品《Moving Picture (946-3)》と、ライヒの音楽《Reich/Richter》を組み合わせたもの。映像は、リヒターが2016年に制作したスキージによる絵画《Abstraktes Bild (CR 946-3)》を素材としている。

Moving Picture (946-3) Film by Gerhard Richter & Corinna Belz, Music: Steve Reich, Montage: Rudi Heinen © Gerhard Richter and Corinna Belz Curated by Hans Ulrich Obrist and Alex Poots

 リヒターとベルツは、一枚の絵画を写真によって細かく分解し、それを分割、鏡像化、再構成することで、絶えず変化を続ける抽象的な映像を制作。この構造は、反復とわずかな変化を積み重ねながら音楽を展開させるライヒの作曲法や、フェイジング(位相変移)の手法とも呼応する。音楽と映像がそれぞれ独立して進みながら、「反復」と「漸進的な変容」という共通する原理によって結びつく作品となっている。

 ふたりのコラボレーションの端緒となったのは2009年。ケルンのルートヴィヒ美術館で開催されていたリヒターの展覧会会場でライヒが《Drumming Part 1》を演奏し、さらに近隣のケルン・フィルハーモニーで《Music for 18 Musicians》を上演したことをきっかけに、共同制作の構想が生まれたという。

 《Moving Picture (946-3) Reich/Richter》は2019年4月、ニューヨークの「The Shed」で世界初演。The Shedをはじめ、ロサンゼルス・フィルハーモニック、Cal Performances、ブリテン・シンフォニア、フィルハーモニー・ド・パリ、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団による共同委嘱として制作された。世界初演ではアンサンブル・シグナルがライヒの音楽をライブ演奏し、その背後でベルツによる映像が上映された。

 今回の日本初演では、アンサンブル・ノマドが演奏を担当。また、2006年生まれの韓国の作曲家イ・ハヌリによる《stuff #3》(2025)と、武満徹の打楽器作品《雨の樹》(1981)が組み込まれていることにも注目したい。会場となる草月会館は、1960年代に武満が草月アートセンターと深くかかわり、同時代の芸術家たちに影響を与える活動を展開した場所でもある。

 今年90歳を迎えるライヒと、20世紀後半以降の絵画を代表してきたリヒター。その両者の作品が、映像とライブ演奏によって東京で交差する機会となる。